人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ドラルーシュ「レディ・ジェーン・グレイの処刑」の思い出~中野京子著「怖い絵」から

2012年08月01日 06時58分58秒 | 日記

1日(水).はやいもので今日から8月です.光陰矢のごとしですね

昨夕は,去る7月4日に皇居前広場で開かれた丸の内消防署主催「自衛消防訓練審査会」に当ビルを代表して出場した防災センターのI隊員,T隊員,K隊員を招いて隣のHKビル地下のS屋で反省会兼慰労会を開きました.当社管理部のK君にも出てもらいました 20代の男子ばかりなので”2時間すき焼き食べ放題”コースにしました 最初に,私が作成した最近4年間の同審査会上位入賞隊一覧表を元に,どうすれば常勝チームになれるかについて私見を述べました.ちなみに当PCビル自衛消防隊は21年度=29チーム中8位,22年度=35チーム中16位,23年度=35チーム中5位,24年度=41チーム中13位という成績でした.これをいかに,毎年ベスト10に入る常勝チームまで持っていくかの方法論です

対策としては①出場メンバーの確定と練習開始を早める,②消防署の指導を早めに受ける,③出場順の抽選会には,くじ運の強い者を派遣する,④常勝チームをビデオなどで研究する,⑤華のある動作を研究するーの5点を挙げ,目標として毎年ベストテンに入賞する常勝チームを目指そう,というものです これを各隊員がどのように受け止め,実行に移してくれるのかにすべてがかかっています なお,”華のある動作”というのは,私の個人的な印象として,この審査会は体育会系の運動の審査というよりは,むしろ,歌舞伎の型のように,”いかに審査員に美しく見せるか”という点に重きを置いていると思われるので,”見栄を切って”演技をした方が印象が良くなるという考えです 〔なお,以上の考えは著作権法および個人情報保護法によって企業秘密に認定されていますので,他のビルの関係者の方は”見なかった”ことにしてください

以上のような話の後,すき焼きパーティーに移りました.最初に生ビールで乾杯して,あとはI君はビール一辺倒,T君は巨峰サワー,K君はウーロン茶,管理部K君はローボール(ハイボールともいう),私はウーロンハイを飲み続けました.今年4月入隊の肉大好きルーキーK君は皆からイジラレながらも根性で大量の肉に挑んでいました 名前は伏せますが某氏が時々犬も食わないつまらないダジャレを発して周りのヒンシュクをかっていました あっ,誤解のないように言っておきますが,私は洗練された”シャレ”は言いますが,”ダジャレを言っているのはダレジャ”的な,おやじギャグのような”ダジャレ”は言いません.念のため 

肉と野菜が大皿で用意されましたが,あっという間に平らげ,お代わりをしました.大抵の店はお代わりをすると,同じ量か少ない量しか出てこないのですが,この店はお代わりするたびに肉の量が多くなっていきました.”これ以上追加するな.空気を読め”という高等なメッセージだったのかもしれません 最終的には牛肉を4皿,野菜を2皿お代わりしたので,牛肉は一人一皿食べた勘定になります 最後は〆のうどんを平らげたので,もうこれ以上はムリという状態まで食べ尽しました 食べ放題とはいえ,よく食べたものだと感心します.個人的には向こう1週間は肉の姿は見たくありません

 

  閑話休題  

 

中野京子著「怖い絵~泣く女篇」(角川文庫)を読み終わりました 著者の中野京子さんは早稲田大学教授.ドイツ文学,西洋文化史が専門で「怖い絵」シリーズで有名です

なぜこの本を買ったのかというと,今から21年前に,この本の表紙となっている絵をロンドン・ナショナルギャラリーで観た時の印象が強かったからです この絵のタイトルは「レディ・ジェーン・グレイの処刑」といい,ドラクロワと同時代に生きたポール・ドラローシュ(1797~1856年)が描いた油彩です

 

          

 

中野さんの解説によるとこの絵の主人公は・・・・・・

「イングランド歴代女王といえば,メアリ一世,エリザベス一世,メアリ二世,アン,ヴィクトリア,エリザベス二世(現女王)の6人とされているが,正確にはもう一人いる メアリ一世より先に即位し,イングランド最初の女王を宣言したジェーン・グレイである.ただし玉座に座ったのはわずか9日間.追われて半年後には処刑されてしまう まだ16歳と4か月だった.シェークスピアの生まれるちょうど10年前,1554年のことだった」

政争に巻き込まれて処刑された一人の女性の死刑の場面を描いた全体像は下のような構図になっています.

          

1991年1月,出張でドイツ,フランス,イギリスの新聞社を回って,日本に帰国する数日前,ロンドンの市内観光をした時,せっかくロンドンに来たのだからナショナルギャラリーを観ない手はないよな,というわけで,普段,絵にはまったく縁もゆかりもない私ですが入館してみたのです たしか,隣の部屋に入って振り返るとこの大きな絵が聳えていて(246センチ×297センチ),そこに描かれている”現実”を突きつけられて呆然としたことを覚えています 「なんでこんなにきれいな女性が処刑されなければならないんだろう?」と疑問に思うと同時に,”消えゆく美しさ”に感動さえ覚えました

音楽は楽譜があればいつどこでも再現することができます モーツアルトのピアノ・ソナタK.310は,同じ楽譜を再現する限りにおいて偽物はありません.演奏すればすべてが本物です.しかし,絵の場合は,本物は世界でたったの一つしかありません どんなにコピー技術が発達しようともコピーはコピーです

よく「絵画は本物を観るべきだ」と言われますが,大きな理由の一つは,その絵画の大きさではないかと思います 画集ばかり観ていても実際の大きさは分かりません.さきのドラローシュの絵を実際に観た時ほどそのことを痛切に感じたことはありません

この本には,ほかにミレーの「晩鐘」(なぜ,この絵が怖いのか,非常に興味深い解説があります),ベラスケス「ラス・メニ―ナス」,ピカソ「泣く女」など22の作品が紹介されています いずれも,なんでもないような絵が,中野京子さんの名文によって”怖い絵”に変貌を遂げて目前に立ち現れます.この人は本当に文章がうまいです.いつの間にか中野ワールドに引き込まれてしまいます

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