9日(木)。昨日、義弟が胃の手術をするというので、休暇を取って埼玉県S市のS病院に行きました。S市に住む妹と福島県喜多方市から車で駆け付けた義弟の弟夫婦と正午に病室で待ち合わせて、まず手術前の義弟を励ましました 看護師の話では手術は4時間程度かかるということで、脂肪が厚いともっとかかるという説明でした
午後1時ごろ看護師に呼ばれ義弟は手術室に向かいました。その後、残されたわれわれ4人は待合室でひたすら手術が終わるのを待つことになりました
「こちらは温かくていいですね」「今日は雨が降ると天気予報で言っていたので寒くなると思いますよ」「こちらが雨なら福島は雪ですよ」「寒いでしょうね」「福島では1メートル積もることもありますよ」「それは大変ですね」「でも、福島では会社は休みにはならないのですよ。現役の時は早朝に起きて出来るだけ早く家を出ることになりました」「東京では1メートルも積もったら交通機関は全部止まって、出勤どころじゃなくなりますよ」「ここは自衛隊の基地があるから、真上を飛行機が飛ぶのでびっくりします」「子供の頃、近くに自衛隊の飛行機が3機、墜落したんですよ。豆腐屋のそばに落ちて、豆腐が焼き豆腐になってしまいました」「・・・・・・????。騒音がすごいですね」「この辺の学校や家庭は防衛庁の予算で二重サッシにするなど防音工事が施工されるんですよ」「田舎では車がないと何もできないんですよ。しかも1家に2台も3台もあるのが普通です」「会社まで地下鉄1本で40分位ですが、一旦駅に入ると職場の最寄駅では地下通路がつながっているので雨に濡れずに職場に着きます」「退職後は福島の家では畑を借りて野菜を作っています。趣味はなんですか?」「音楽を聴くことです。主にクラシックですが」「田舎では聞く会場がないですね。何がないかと言って、文化の香りがないのが困りものです」・・・・・・等々とりとめのない話が延々と続きました。5時ごろ「手術が終了しました」と知らされ、執刀医のT医師から手術の様子を聞きましたが、順調にいったようです その後、義弟と対面しましたが、意識ははっきりしており、話もできるほど元気だったので安心しました 雨の降る中、病院を出たのは午後6時半近くだったので、病院には6時間以上いたことになります。とにかく座りっぱなしだったので、腰痛持ちには辛い時間でした。約2週間入院するとのことなので、また折を見て見舞いに行こうと思います
閑話休題
中山七里著「贖罪の奏鳴曲(ソナタ)」(講談社文庫)を読み終わりました 中山七里は1961年、岐阜県生まれ。「さよならドビュッシー」で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2010年にデビューしました その後「おやすみラフマニノフ」、「さよならドビュッシー 前奏曲~要介護探偵の事件簿」などの音楽シリーズを発表、どちらかというと軟派なイメージを抱かせていましたが、「魔女は甦る」でそれまでの印象を一新、本格派ミステリー作家の顔を覗かせました この「贖罪の奏鳴曲(ソナタ)」もその路線を行くものです。結論を先に書けば、今まで読んだミステリ―小説の中で最も優れた作品の一つと言っても過言ではありません
主人公の御子柴礼司は、14歳の時に幼女バラバラ殺人の罪で少年院に収監された経験のある現役弁護士です 彼は”金持ち”の被告人には高額な弁護料を請求し、その一方で、まったく資産のない貧しい被告人の国選弁護人を引き受けるという稀有な存在として知られています。本名を御子柴礼司という名前に変えて活躍しています
3億円の保険金殺人事件を担当する御子柴は、少年院時代の過去をユスリ屋のライター・加賀谷竜次に知られます。物語は御子柴が、その加賀谷の死体を埼玉県S市を流れる入間川に投げ捨てるシーンから始まります (入間川というのは、昨日義弟を見舞った、私の生まれ故郷のS市を流れる川なので親近感を覚えます)。
S市の中小企業・東條製作所で荷載限度を超えたトラックのワイヤーが切れて木材が落下、経営者・東條彰一の頭を強打し、意識不明の重体になる その後、彰一は病院で亡くなるが、その際何者かが人口呼吸器を故意に遮断した疑いがでてくる。その時病室にいたのは妻の美津子と先天性脳性麻痺を抱える18歳の息子・幹也だけだった。その後電源スイッチから美津子の指紋が検出される。実は事故の10日前に3億円の保険金契約が交わされていたことが判明する 美津子は逮捕され、裁判の結果無期懲役の判決が下される。当初の担当弁護士は最高裁に上告したが、体調を崩して入院したことから、御子柴がこの案件を引き継ぎ美津子の逆転無罪を勝ち取るために奔走することになった
入間川から発見された変死体を捜査する埼玉県警の渡瀬と小手川は、東条家の弁護をする御子柴の過去を、殺されたライター加賀谷がユスリの種にして迫ったため御子柴が加賀谷を殺したのではないか、という疑念をもって追及していく。しかし、御子柴には鉄壁なアリバイがあった
事件は思わぬ方向に向かい、真犯人がだれかということが明らかになるとともに、少年院を出院後の御子柴礼司という男の生き様が明らかになります 彼の人生観を変えたのは少年院時代に聴いた、収監者の少女が演奏するベートーヴェンの「熱情ソナタ」でした。そこからこの作品のタイトル「贖罪の奏鳴曲(ソナタ)」が付けられたのです さすがは「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」の著者です。CDではなく生で接する音楽が人の心に与える影響力の大きさを優れた筆力で描いています
とにかく読み始めたら止まらない面白さ 自信を持ってお薦めします
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