人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立オペラ、ツェムリンスキー「フィレンツェの悲劇」 & プッチーニ「ジャン二・スキッキ」 ダブルビル初日公演を観る ~ 砂田愛梨 ⇒ ラウレッタで鮮烈デビュー!

2025年02月03日 00時06分54秒 | 日記

3日(月)。わが家に来てから今日で3674日目を迎え、アメリカのトランプ大統領が1日、カナダからの輸入品に25%の関税を課す大統領令に署名したことに対し、カナダのトルドー首相は対抗して米国からの輸入品に関税をかけると表明した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

     

     次はメキシコと中国が追随するだろ 関税の応酬合戦でいったい誰が得をするんだ?

         

昨日、新国立劇場「オペラパレス」で、ツェムリンスキー「フィレンツェの悲劇」とプッチーニ「ジャン二・スキッキ」のダブルビル(2本立て)初日公演を観ました 新国立オペラのこのダブルビル公演は2019年4月に次いで今回が2回目で、指揮者も演出家も同じです

「フィレンツェの悲劇」と「ジャン二・スキッキ」の共通点は①舞台がともにフィレンツェである、②作曲年代がほぼ同じである(1916年と1918年)、③ともに全1幕オペラである、④上演時間がともに約1時間である、というところです 一方、異なる点は①前者がオーストリアの作曲家による作品であるのに対し、後者がイタリアの作曲家によるものである、②前者が悲劇であるのに対し、後者は喜劇である、③登場人物は前者が3人であるのに対し、後者は15人である、という点です

     

プロプラム前半はツェムリンスキー「フィレンツェの悲劇」です この曲はアレクサンダー・ツェムリンスキー(1871-1942)が1915年から翌16年にかけて作曲、1917年にシュトゥットガルトで初演されました

出演はグイード・バルディ=デヴィッド・ポメロイ、シモーネ=トーマス・ヨハネス・マイヤー、ビアンカ=ナンシー・ヴァイスバッハ。管弦楽=東京交響楽団、指揮=沼尻竜典、演出=粟國淳です

「織物商人シモーネが旅から帰ると、妻ビアンカの許にフィレンツェ公爵の息子グイード・バルディがいた シモーネは彼女の浮気を疑いながらも、グイードにへつらい、商品を売りつけようとする グイードはビアンカを所望する。シモーネは夕食を供するが、2人の様子を見て浮気の疑いを強め、席を立つ 帰ろうとするグイードはビアンカに長いキスをし、ビアンカは愛を誓う。これを見ていたシモーネはグイードに決闘を挑み、最後にシモーネがグイードを絞め殺す ビアンカは夫シモーネの強さに恍惚となり、シモーネは妻の美しさを讃える

シモーネ役のトーマス・ヨハネス・マイヤーはドイツ出身のバリトンです 世界中のオペラハウスで活躍しています 新国立劇場へは2009年「ヴォツェック」タイトルロールでデビューし、「アラベッラ」「さまよえるオランダ人」「ニュルンベルクのマイスタージンガー」にも出演しました 深みのあるバリトンで演技力も申し分なく、存在感がありました

グイード・バルディ役のデヴィッド・ポメロイはカナダ出身のテノールです 米国、ヨーロッパの歌劇場で活躍しています 新国立劇場へは2019年オペラ夏の祭典「トゥーランドット」カラフでデビューしました ちょっと声に癖のあるテノールですが、声が良く通りました

ビアンカ役のナンシー・ヴァイスバッハはベルリン生まれのソプラノです ヨーロッパの歌劇場でワーグナーを中心に歌っています ワーグナーが得意なだけあって、力強くも美しい歌唱が印書的でした

特筆すべきは沼尻竜典 ✕ 東響の演奏です。歌手に寄り添いつつ、サロメ的と言うべきか、退廃的と言うべき世界を見事に歌い上げました

     

プログラム後半はプッチーニ「ジャン二・スキッキ」 です この曲はジャコモ・プッチーニ(1858-1924)が1918年に作曲、同年ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で三部作(他の2作は外套と修道女アンジェリカ)の1曲として初演されました

出演はジャン二・スキッキ=ピエトロ・スパニョーリ、ラウレッタ=砂田愛梨(三宅理恵の代役)、ツィータ=与田朝子、リヌッチョ=村上公太、ゲラルド=高畠伸吾(青地英幸の代役)、ネッラ=角南有紀(針生美智子の代役)、ゲラルディーノ=網永悠里、ベット・ディ・シーニャ=志村文彦、シモーネ=河野鉄平、マルコ=小林啓倫(吉川健一の代役)、チェスカ=中島郁子、スピネッロッチョ先生=畠山茂、アマンティオ・ディ・二コーラオ=清水宏樹、ピネッリーノ=大久保惇史、グッチョ=水野優。管弦楽=東京交響楽団、指揮=沼尻竜典、演出=粟國淳です

     

「裕福な商人プォーゾ・ドナーティはまさに死んだばかり 親戚が集まって悲しんでいるが、実は皆が考えていることは遺言のこと 甥のリッチョは遺言状を見つけ、それをカタにジャン二・スキッキの娘ラウレッタとの結婚を認めるように伯母ツイータに迫る ツイータはしぶしぶ認め、いざ遺言状を開くが、『遺産は修道院に寄付する』と書かれている 皆は書き換えてしまおうと企み、それをジャン二・スキッキに依頼する ジャン二・スキッキは断るが、かわいい娘のラウレッタに頼まれ引き受ける しかしブォーゾに成りすまして遺言を口述する段になると、「重要な資産はジャン二・スキッキに遺す」と言い出す 親戚たちは怒り狂うが後の祭り 最後にジャン二・スキッキが口上を述べ幕が下りる

     

沼尻 ✕ 東響の演奏で幕が開くと、ステージ上には、大きなデスクの卓上部分が右手前に傾いて設置されており(傾斜舞台)、卓上には大きな物(本、インク壺、ペンケース、ベル、目覚まし時計、クッキーの載ったお皿、天秤など)が載っています    そして手前の抽斗が開くようになっています    大きな本の上には死んだばかりのブオーゾが横たわっており、その周りで親戚の連中がうわべだけで嘆き悲しんでいます つまり、この舞台は 卓上の物を大きくすることによって、人間を小さく見せる効果を狙っている   言い換えれば、机の上で小人たちがお芝居をしていると見せかけているのです    まるで、これから始まる遺産相続をめぐるドタバタ喜劇が「コップの中の嵐」に過ぎないのだ、と言わんばかりの演出・舞台作りになっているのです    4年前に初めて観た時に面白いと思いましたが、今回もあらためて面白いと感心しました

     

登場人物が15人もいるので、いったい誰がどの役を歌っているのか分からないまま、ストーリーが進んでいきます その中で圧倒的な存在感を示したのがジャン二・スキッキ父娘を歌った2人です

ジャン二・スキッキ役のピエトロ・スパニョーリはイタリア出身のバリトンです 米国、ヨーロッパの主要な歌劇場で活躍しています 新国立劇場へは2017年「フィガロの結婚」アルマヴィーヴァ伯爵に出演しました よく通るバリトンで狡猾な主人公を見事に歌い演じ、存在感を示しました

ラウレッタ役の砂田愛梨は東京音大、同大学院修了。新国立劇場オペラ研修所修了。S.リチ―トラ国際コンクール第2位をはじめ受賞多数 ヨーロッパの歌劇場を中心に活躍しています 日本では2024年11月に日生劇場「連隊の娘」マリー役で本格デビューしました 砂田が「あの人と結婚したい。結婚できなければアルノ川に身を投げる」と、娘には弱い父スキッキの協力を取りつけるアリア「私のお父さん」を歌い出した時、背筋が寒くなるほどの感動を覚え、なぜが涙が込み上げてきました この時私は、次代を担う新しいソプラノ歌手の誕生を確信しました 声に力があり、リリカルな歌唱が印象的です この人には人を感動させる力がある、と直感しました

先月末の朝日に同社・吉田純子編集委員による砂田愛梨のインタビュー記事が載っていました それによると 彼女は上野生まれで、祭りなどの下町文化が大好きとのことで、映画「男はつらいよ」も全部見たといいます   ひとりひとりが特定のキャラクターを徹底して演じ切る技術を「どこかイタリアのオペラに似ている」と感じていたそうです   アリア「私のお父さん」については、「一瞬でも日常と芸術の世界を連ね、国籍も超え、全ての人々が響き合う風景を見せることができたら」と語っています

砂田愛梨は5月の新国立オペラ「セヴィリアの理髪師」でロジーナを歌う脇園彩(メゾ・ソプラノ)以来の逸材だと思います    昨日のチラシの束に彼女のリサイタルのチラシが入っていたので、帰宅後さっそくチケットを予約しました 私が歌手のリサイタルのチケットを取るのは極めて珍しいことで、メゾ・ソプラノのエリーナ・ガランチャ以来です

     

この日のダブルビル初日公演の最大のハイライトは、ラウレッタを歌った砂田愛理の新国立オペラデビューと言っても過言ではありません


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