人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

天吾と青豆の行方は?~村上春樹著「1Q84 BOOK3前編・後編」を読む

2012年06月13日 06時55分25秒 | 日記

13日(水)。昨日の新聞各紙に「ドコモ、タワーレコードを子会社化」の記事が載りました 記事を総合すると、

「NTTドコモは7月中旬にタワーレコード(東京・渋谷)に追加出資して子会社化すると発表した。ドコモはスマートフォン向けの自社サイトで、タワーレコードのDVDやCDを販売する。取得額は数十億円とみられ、これにより50.3%の株を握る筆頭株主となる」

業態を超えた業務提携は今後も増えていくと思います ドコモ生き残りをかけた競争をしているわけですから、それはそれでいいのですが、渋谷と新宿にあるタワーレコードのCDショップは何としても残してほしいと思います 私は現物を見て買う主義なので

 

  閑話休題  

 

村上春樹著「1Q84 BOOK3前編」「同・後編」(新潮文庫)を読み終わりました

BOOK2までは青豆,天吾が交互に主人公になって登場するパターンでしたが,この回から牛河が加わり,牛河,青豆,天吾の順で物語が展開していきます まずは前編の話.

牛河は,宗教団体「さきがけ」のリーダーを殺害した青豆の行方を追求する2人の男から,青豆を探し出すよう依頼されます.そして彼は青豆と天吾が小学校時代に同級生だったことを突き止め,ついに天吾の住むアパートの監視を始めます

青豆は殺人の依頼者である老婦人の計らいで隠れ家に潜んで暮らしています.そしていつしか青豆は小さな命を宿します.一方,天吾は意識不明になっている父親を”猫の町”に見舞いに行き,本を読み聞かせをします.さて,二人の出会いはあるのか・・・・・

いつものように,私が興味があるのは,この小説の中に現われるクラシック音楽です

最初に登場するのは「青豆」の物語,ヤナーチェックの「シンフォニエッタ」です.この曲はBOOK1の物語の冒頭,青豆がタクシーに乗っているときにラジオから流れてきた曲です.このBOOK3前編では63ページから64ページにかけて出てきます

「ヤナーチェックの”シンフォニエッタ”の入ったカセットテープを手に入れなくてはと青豆は思う.運動するときに必要だ.あの音楽は私をどこかにー特定はできないどこかの場所にー結びつけている.何かへの導入の役目を果たしている」

次に登場するのも「青豆」の物語で,老婦人から青豆に届けられた荷物の中に入っていたカセットテープの話です(115ページ).

「音楽も聴いた.老婦人はクラシック音楽のカセットテープを段ボール箱に詰めて届けてくれた.マーラーの交響曲,ハイドンの室内楽,バッハの鍵盤音楽,様々な種類と形式の音楽が入っていた.彼女が頼んだヤナーチェックの”シンフォニエッタ”もあった.一日に一度”シンフォニエッタ”を聴き,それに合わせて激しい無音の運動をした」      

次に出てくるのもヤナーチェックです.「牛河」の物語で,牛河が天吾の通っていた小学校の当時の担任教師から彼の話を聞き出すシーンです(260ページ).

「ヤナーチェックの”シンフォニエッタ”.簡単な曲ではありません.天吾くんはその数週間前までその楽器に手を触れたこともなかったんです.しかし即興のティンパ二奏者として舞台に立ち,見事に役を果たしました.奇跡としか思えません

最後に出てくるのは,やはり「牛河」の物語です(327~328ページ).

「良い考えが浮かばないとき,牛河はいつもぬるめの長風呂に入ることにしていた・・・・・・ラジオでシベリウスのヴァイオリン協奏曲を聴いた・・・・ラモーのコンセールが流れていればそれを文句を言わずに聴いただろうし,シューマンの”謝肉祭”が流れていればそれを文句を言わずに聴いただろう そのときたまたまFM放送局はシベリウスのヴァイオリン協奏曲を流していた.それだけのことだ・・・・・・ダヴィッド・オイストラフの演奏するシベリウスの音楽は,まさにその空っぽの領域を通り過ぎていった・・・・・シベリウスの協奏曲はおよそ30分で終了した ちょうど良い長さだ.次の曲はヤナーチェックの”シンフォニエッタ”ですとアナウンサーは告げた.ヤナーチェックの”シンフォニエッタ”という曲名にはどこかで聞き覚えがあった.しかしどこでだったかは思い出せない

著者が書いているように作曲者のシベリウスも,演奏者のオイストラフもその当時は鬼籍に入っていましたが,著者があえてオイストラフを持ち出したことに興味があります.アイザック・スターンでも良かったろうし,ヤッシャ・ハイフェッツでも良かったはずです

 

          

 

さて,ここからが「後編」の話です.

牛河は天吾の見張りを続けますが,老婦人のボディガードであるタマルによって”知りすぎていた”ことから消されます 天吾と青豆はついに公演の滑り台の上で出会い,いっしょに,月が2つ出ている1Q84年の世界から脱出を図ります さて2人の運命は・・・・・

「後編」の中に出てくるクラシック音楽は1か所しかありません.天吾の物語で,天吾の父親が霊柩車で運ばれるシーンです(237ページ).

「そこにはおごそかな要素はまったくなかった.”神々の黄昏”の音楽も聞こえてこなかった」

たったこれだけです.「前篇」との落差が大きすぎて実に寂しい思いです 次のBOOK4に期待したいと思います

 

          

 

          

 

 

 

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