人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新日本フィル「第九」公演のチケットを取る / 青柳いづみこ著「パリの音楽サロン ~ ベルエポックから狂乱の時代まで」を読む

2023年08月21日 06時39分00秒 | 日記

21日(月)。一昨日は新日本フィルの「第九」公演のパトロネージュ会員・定期会員優先販売日だったのでチケット・オンラインから12月18日(月)のチケットを取りました それは良いのですが、午前10時に販売開始なのに、その前の時点で すでにS席を中心に良い席がほとんど残っていない状態でした これはどうしたことでしょうか 幸い私はA席狙いだったので、まだ良い席が残っていて影響ありませんでしたが、S席狙いの人は???だと思います    残念ながら、私はチケット販売方法に詳しくありません 「第九」のような特別公演は「主催者」はスポンサー用にこの辺、「ぴあ」はあの辺、「イープラス」はその辺というように割り当てがあるのだろうか? よく分かりません

なお、新日本フィル「第九」公演の日程は12月15日(金)19時=横浜みなとみらい、16日(土)14時=オペラシティ、17日(日)14時=トリフォニー、18日(月)19時=サントリー、19日(火)19時=オペラシティとなっています オペラシティで2回やるんですね 出演者は以下の通りですが、合唱は栗友会合唱団です なお、18日のみ前半に室住素子さんによるオルガン演奏があります

 

     

     

ということで、わが家に来てから今日で3142日目を迎え、北朝鮮は19日、国連安全保障理事会が同国の人権状況を協議する公開会合を開いたことを非難し、証言を行った脱北者を「人間のクズ」と酷評したと朝鮮中央通信が伝えた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     金正恩政権を批判する者は誰もが「人間のクズ」なんだろう  さすがは金王朝国家!

 

         

 

19日(土)18時から開催の東響定期公演の際にサントリーホールの入口近くで配布されていた下のチラシを見て、「いよいよ、カザルスホール復活か」と思って よく見ると、会場がサントリーホールとなっています    カザルスホールは2026年6月に新装オープンするそうです    このチラシのコンサート(10月21日)は「カザルス没後50年記念公演」としてチェロの作品を中心に演奏するようです 私は別のコンサートの予定があって聴きに行けませんが、ちょっと紛らわしいですね

 

     

 

同じビニール袋に下のチラシも入っていました 残念ながら飯守泰次郎氏は8月15日に逝去されたわけですが、19日のチラシ配布時点で、チラシ配布業者は当然そのニュースを知っていたはずです それでも袋から「抜かなかった」のは、すでにセットのうえ袋詰めが済んでいて、何百セットもの袋からいちいち1枚ずつ抜くのは面倒だと思ったからではないかと想像します それで良いのかどうか分かりませんが、いずれにしても、飯守氏の指揮でシューベルトの2曲の交響曲が聴けなくなったという事実の再認識を余儀なくされました

 

     

 

         

 

青柳いづみこ著「パリの音楽サロン ~ ベルエポックから狂乱の時代まで」(岩波新書)を読み終わりました 青柳いづみこは1950年、東京都生まれ。ピアニスト、文筆家。フランス国立マルセイユ音楽院卒業。東京藝大博士課程修了。1990年、文化庁芸術祭賞受賞。1999年、「翼のはえた指」で吉田秀和賞受賞、2009年、「六本指のゴルトベルク」で講談社エッセイ賞受賞。著書多数

 

     

 

本書のカバー裏に次のような紹介文が書かれています

「コンクールがなかった19世紀から20世紀初頭、音楽サロンの女主人は芸術家たちを支援し、彼らはサロンから世に出て行った 時代が進むとサロンは貴族の邸宅以外でも開かれ、異なるジャンルの出会いの場、前衛芸術の誕生の場へと性格を変えていく 時代の中の音楽サロン、様々な芸術家たちの交流を生き生きと描く

さらに「はじめに ~ サロンという登竜門」の中で著者は概要次のように書きます

「若く、無名でお金のない芸術家が世に出る手段は、そう多くはない 21世紀のこんにちでは、それがショパン・コンクールだったりチャイコフスキー・コンクールだったりするわけだが、19世紀は貴族やブルジョワのサロンがその役割を果たしていた 社交界に乗り込むためには、何をおいても馬車が必要だった。馬車がなければ上流階級のサロンに行くことができず、サロンでデビューしなければ、文壇・楽壇の大立者や文芸の庇護者に出会うことも出来なかった

本書は次の各章から構成されています

はじめに ~ サロンという登竜門

Ⅰ 団扇と夫人

Ⅱ シャルル・クロ

Ⅲ ニコレ街14番地

Ⅳ ポーリーヌ・ヴィアルド

Ⅴ ガブリエル・フォーレとサロン

Ⅵ ドビュッシーとサロン

Ⅶ サン=マルソー夫人

Ⅷ オギュスタ・オルメスとジュディット・ゴーティエ

Ⅸ ポリニャック大公妃

Ⅹ グレヒュール伯爵夫人

Ⅺ ルメール夫人とプルースト

Ⅻ 六人組誕生

ⅩⅢ ジャーヌ・パトリ

ⅩⅣ 旧時代と新時代のメセナ~ココ・シャネルとミシア・セール

ⅩⅤ ヴァランティーヌ・グロス

ⅩⅥ サティとマン・レイとダダイズム

あとがき

本書には190人以上の芸術家や、彼らを支援したサロンの主宰者が登場します サロンの女主人たちがいなければ、いくら優秀な芸術家でも無名のまま終わっていたのではないか、と思わされます ミシア・セールとココ・シャネルはディアギレフ率いるロシア・バレエ団を支援し、ポリニャック大公妃はエリック・サティに「ソクラテス」を書かせ、ヴァランティーヌ・グロスはパブロ・ピカソとサティに「パラード」を作らせました この辺の繋がりは「あとがき」で次のように書かれています

「ディアギレフがグレフュール伯爵夫人(プルースト「失われた時を求めて」のゲルマント侯爵夫人のモデル)のもとを訪れ、あまりうまくないピアノで未知のロシア音楽を弾いて聴かせたとき、夫人がそれを良いと思い、興行師アストリュックに紹介しなければ、1907年の5夜にわたる『ロシア歴史音楽会』は実現しなかった そのときにシャリアピンが歌う『ボリス・ゴドゥノフ』のアリアが評判を呼んだために、翌年の全幕上演に発展し、初日の舞台を観たミシアが感激してディアギレフに声をかけたために、ロシア側出資者の死去に伴う財政難も乗り越えて1909年のバレエ公演が実現することになる そしてまた、ロシア・バレエ団がなければ、ニジンスキーが躍る『牧神の午後』や『春の祭典』をデッサンしていたヴァランティーヌ・グロスがコクトーに出会うこともなく、彼女が結びの神となったサティのバレエ音楽『パラード』も生まれず、『パラード』に触発された6人組の誕生もなかっただろう

つまり、サロンの女主人たちが「新しい音楽の中に、良い音楽を聴き分けられる耳と鋭い感性」を持っていたがために、芸術家同士の繋がりが出来、次々と良い意味でのドミノ倒しが起こっていったということです

ショパンも、フォーレも、ドビュッシーも、ラヴェルも、サティも、サロンがなければ世に出ることはなかったかもしれません ラヴェルに至っては「ローマ大賞」に5回も落ちていますからなおさらです 音楽好きには必読の書です。お薦めします

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鈴木優人 ✕ 中江早希 + 澤江衣里 + 櫻田亮 ✕ 東響コーラス ✕ 東京交響楽団 でメンデルスゾーン「交響曲第5番”宗教改革”」、同「交響曲第2番”賛歌”」を聴く

2023年08月20日 00時44分53秒 | 日記

20日(日)。わが家に来てから今日で3141日目を迎え、米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は18日、2024年大統領選の共和党候補者指名を狙うトランプ前大統領が、23日の第1回候補者討論会を欠席する方針だと伝えた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     参加しても他候補に攻撃される一方で メリットがないと考えているからだろ 弱虫!

 

         

 

一昨日の昼食は息子が「冷やし中華」を作ってくれました ビジュアル的にも味の点でもプロ級でした

 

     

 

昨日の昼食には「スパゲティ・ミートソース」を作ってくれました これもビジュアル的にも味も最高でした

 

     

 

そして、昨日の夕食には、「マグロのカルパッチョ」「カポナータ」「タラコのパスタ」を作ってくれました もちろん最高に美味しかったです

 

     

 

         

 

昨夜、サントリーホールで東京交響楽団「第713回 定期演奏会」を聴きました   プログラムは①メンデルスゾーン「交響曲第5番 ニ短調 ”宗教改革”」、②同「交響曲第2番 変ロ長調 ”賛歌”」です 演奏は②のソプラノ独唱=中江早希、澤江衣里、テノール独唱=櫻田亮、合唱=東響コーラス、指揮=鈴木優人です

 

     

 

オケは12型で、左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置をとります コンマスは小林壱成です

1曲目はメンデルスゾーン「交響曲第5番 ニ短調  作品107 ”宗教改革”」です この曲はフェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)が1830年に「アウグスブルク信仰告白」の成立から300周年を記念するために作曲、1832年に初演されました 第1楽章「アンダンテ ~ アレグロ・コン・フォーコ」、第2楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第3楽章「アンダンテ」、第4楽章「コラール:アンダンテ・コン・モート ~ アレグロ・マエストーソ」の4楽章から成ります

鈴木優人の指揮で第1楽章に入ります ホルン、トロンボーンといった金管楽器によるコラール風の音楽がいかにも「宗教改革」を想起させます その後の弦楽器による「ドレスデン・アーメン」の演奏が美しい そして アレグロに移ると、躍動感に満ちたドラマティックな演奏が展開します 第2楽章から第4楽章までは続けて演奏されましたが、第3楽章冒頭の歌うようなフレーズを聴いて、「シューベルト的だなあ」と思いました 第4楽章冒頭は、独奏フルートによりルターのコラール「神はわがやぐら」が奏でられますが、相澤政宏のフルートが素晴らしかった 大矢未来氏のプログラムノートによると、宗教改革の立役者マルティン・ルターはフルート奏者としても知られていたとのことで、この旋律はルター自身も暗示しているそうです 管楽器、弦楽器が混然一体となってコラールが奏でられ、輝かしいフィナーレを迎えました

カーテンコールが繰り返され 楽員が立たされますが、ヘビみたいに曲がりくねった形の「セルパン」という木製の楽器が演奏に加わっていたことを初めて知りました

 

     

 

プログラム後半は「交響曲第2番 変ロ長調 作品52 ”賛歌”」です    この曲は活版印刷技術生誕400年を記念した「グーテンベルク祝祭」のために1839年にライプツィヒ市から「祝典劇」とともに1840年に作曲を依頼され、同年ライプツィヒで初演されました   グーテンベルクの技術革新はルターと宗教改革、さらに啓蒙主義とも結びつけられ、祝祭は宗教的・愛国的な色合いを帯びていたとのことです

この曲は第1曲「シンフォニア」と第2曲~第10曲の「カンタータ」から構成されています

第1曲「シンフォニア」はさらに序奏「マエストーソ・コン・モート」、第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アレグレット・ウン・ポコ・アジタート」、第3楽章「アダージョ・レリジオーソ」の3楽章から成ります 第2曲から第10曲まではカンタータです

第2曲:合唱、ソプラノ・ソロ「すべて息するものよ、主よ讃えよ!」

第3曲:テノール・ソロ「語れ、主によって救われた者たちよ」

第4曲:合唱「語れ、主によって救われた者たちよ」

第5曲:二重唱と合唱「私は主を待ち焦がれ」

第6曲:テノール・ソロ、ソプラノ・ソロ「死の網目が私たちを絡めとっていた」

第7曲:合唱「夜は去った」

第8曲:合唱「さあ、すべての者よ、神に感謝せよ」

第9曲:ソプラノ・ソロ、テノール・ソロ「それゆえ私は自分の歌で」

第10曲:終曲合唱「諸国の人々よ、主に栄光と権力をあずけなさい!」

東響コーラスの男女混成合唱団120数名がP席に着きます これだけの規模の合唱陣は久しぶりです ソリストの3人が指揮者を挟んでスタンバイします

鈴木の指揮でシンフォニアの演奏に入りますが、ソリストの3人は彼が首席指揮者を務める「バッハ・コレギウム・ジャパン(B.C.J)」の常連歌手陣で、いわば「家族同然」の仲間です

ソプラノの中江早希は北海道出身のソプラノですが、透明感のある美しい歌唱で聴衆を魅了しました 澤江衣里は島根県出身のソプラノですが、出番は少なかったものの、第5曲で中江との美しいハーモニーによるデュオを聴かせてくれました テノールの櫻田亮はB.C.Jの中心的存在で、よく伸びる高音と抜群の安定感で存在感を示しました 特筆すべきは終始暗譜で合唱を歌い切った東響コーラス(合唱指揮=辻博之)の皆さんです コロナ禍でしばらく聴けませんでしたが、久しぶりに迫力のあるコーラスを聴くことが出来て嬉しかったです また、鈴木優人 ✕ 東響の面々はソリストと合唱団をしっかりと支え、熱演を繰り広げました

約65分の「オーケストラ付き宗教曲」を聴き終わって思ったのは、全体に占める「序曲」の割合が多すぎるということです 「序曲」だけで20分以上かかりました。曲全体の3分の1近くを占めるのは「序曲」としては長すぎるのではないか、と思います 序曲は序奏と3つの楽章から構成されているので、これをバラして各楽曲の間に挿入すれば、器楽と声楽がバランスよく聴けるのではないかと思うのですが、どうでしょうか、メンデルさん えっ、ロクに楽譜も読めない奴が余計なことを言うなって おっしゃる通りです。小さな親切 大きなお世話でした。ごめんなさい

例によって、主催者側の思う壺ですが、カーテンコールを記念に写メしてきましたのでアップしておきます

     

     

 

本日toraブログのトータル閲覧数が810万ページビューを超えました( 8,100,413 PV . トータル訪問者数は 2,522,009 IP )。これもひとえに普段からご訪問くださっている読者の皆さまのお陰と感謝しております これからも根性で毎日休まず書き続けて参りますので、モコタロともどもよろしくお願いいたします

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新日本フィル「2024/2025シーズン定期演奏会」ラインナップ発表 / 宮崎駿監督「君たちはどう生きるか」を観る ~ 宮崎監督の自伝的要素を含んだ 時空を超えたファンタジー

2023年08月19日 06時04分52秒 | 日記

19日(土)。新日本フィル「2024/2025シーズン定期演奏会」(2024年4月~2025年3月)のラインナップが発表されました

1.定期演奏会(トリフォニーホール・シリーズ、サントリーホール・シリーズ)は以下の通りです

  

ひと言で言えば「大音量でオーケストラを聴く醍醐味を味わってほしい」という「大曲中心路線」です 「こういう曲こそライブで聴かなければ」という作品を揃えています このシリーズの超目玉は6月度定期(指揮=シャルル・デュトワ)ですが、残念ながら演奏曲目は未定です 同じく11月定期(指揮=井上道義)のショスタコーヴィチ「交響曲第7番」も聴き逃せません 面白いと思うのは3月度定期(指揮=久石譲、ピアノ=角野隼斗)のメシアン「トゥーランがリラ交響曲」です あとは、佐渡裕指揮によるブルックナー「交響曲第7番」(9月度定期)とマーラー「交響曲第9番」(1月度定期)がどういう演奏になるか、気になるところです

2.すみだクラシックへの扉シリーズ(金曜、土曜)は以下の通りです

 

 

ひと言で言えば、「人口に膾炙した有名な曲を気軽に楽しんでほしい」という「大衆路線」です このシリーズの超目玉は10月度定期(指揮=上岡敏之)のモーツアルト「交響曲第39番、第40番、第41番」です 期待しているのは9月度定期(指揮=久石譲)のブラームス「交響曲第1番」です 面白いと思うのは4月度定期(指揮=佐渡裕、ピアノ=角野隼斗)のチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」と6月度定期(指揮=ヤデル・ビミャミー二、ピアノ=小曽根真)のガーシュイン「ラプソディ・イン・ブルー」です

現在、私は「すみだクラシックへの扉」(金曜)の定期会員ですが、これは継続する予定です さらにトリフォニーもしくはサントリーのいずれかの定期演奏会の会員になるかどうかは、他のオケの日程等も考慮して じっくり考えたいと思います

ということで、わが家に来てから今日で3140日目を迎え、ロンドンのシンクタンク「戦略対話研究所」は17日、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」がフェイスブックやインスタグラムで戦闘員を勧誘していたのに、運営するメタ社が適切な措置を取っていなかったとの調査結果を発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     メタが戦争を拡大する内容の情報を放置しておくのは無責任! 対応がメタメタだ

     

         

 

昨日、夕食に「鶏のから揚げ」を作りました 息子が年末年始休みで帰省した際に作った時に失敗してしまったので、リベンジです あとは北海道産トウモロコシです。今回は茹でずに焼きましたが、結構時間がかかりました とても美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日、TOHOシネマズ池袋で宮崎駿監督による2023年製作「君たちはどう生きるか」(124分)を観ました

母親を火事で失った少年・眞人(まひと)は父の勝一とともに東京を離れ、「青鷺屋敷」と呼ばれる広大な屋敷に引っ越してくる 亡き母の妹であり、眞人の新たな母親になった夏子に対し複雑な感情を抱き、転校先の学校でも孤立した日々を送ることになる そんな彼の前に、ある日、口の中から人間の顔を覗かせる不思議なアオサギが現れる アオサギは「母親はまだ死んではいない。ついてくれば合わせてあげる」と誘い、眞人はそのアオサギに導かれ現在と過去、生と死が混然一体となった謎の塔の迷宮世界に迷い込んでいく

 

     

 

この映画は宮崎俊監督が2013年公開の「風立ちぬ」以来10年ぶりに世に送り出した長編アニメです 宮崎監督は一旦 長編作品からの引退を表明していましたが、撤回して手掛けた作品です 宮崎監督の記憶に残る戦争末期の日本を舞台に、自らの少年時代を重ね合わせた自伝的要素を盛り込んだファンタジー作品です

「君たちはどう生きるか」というタイトルは、宮崎監督が少年時代に母親から渡されて読んだという、吉野源三郎の著書「君たちはどう生きるか」の題名を借りています 劇中では、眞人が本の整理をしている時に、「大きくなった眞人へ」という母親のメッセージが挟まれたこの本を発見します

本作はタイトルと鷺の描かれたキービジュアル以外は事前に情報を一切公開しないまま公開当日を迎えたことで大きな話題を呼びました これについて、映画監督の相田和弘氏は8月4日付の朝日新聞紙上のインタビューで、「宣伝せずに情報を一切出さないやり方は、映画を作る者としては夢だ やはりまっさらな気持ちで見てほしいから。実行したのはすごい勇気で、それで大ヒットとは爽快だけど、宮崎作品だからできることかも 僕がやったら失敗するだろうなあ。そう思うと気分は複雑だ」と語っていますが、多くの映画監督も同じ気持ちではないかと思います

転校生の眞人は小学校のクラスメイトから虐めにあい、自ら頭を石で殴って大けがをして 父親や新しい生命を身籠った夏子に心配をかけますが、彼はアオサギから「母親が恋しいばかりに、その妹の夏子を憎んでいる」と本心を衝かれ、「自分は悪い心、卑怯な心を持っている」と認識するようになります それが「君たちはどう生きるか」を読むことによって、自分の過ちに向き合い、より正しく生きようと思うようになり、夏子を新しい母親と認知するようになったのではないか、と想像します

宮崎作品にはよく老婆が登場しますが、この作品の「青鷺屋敷」に仕える老婆は7人もいて、そのほかに煙草好きのお爺さんが1人います  「7」という数値は、「白雪姫と7人の小人たち」や「七福神」を連想させます 老婆の一人キリコは迷宮世界に迷い込んだ眞人の若き守り神になり、危険から彼を守ります    眞人はそこで少女時代の母ヒミに出会います  また、迷宮世界ではペリカンやインコの大群、「わらわら」と呼ばれる白い妖精たちが登場しますが、 時空を超えたストーリー展開はファンタジーに溢れています

この映画を観て、何となく村上春樹の世界観と似ているな、と思いました

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戸田奈津子・金子裕子著「Keep on Dreaming」を読む ~ 通訳・字幕翻訳者として活躍する戸田さんの ”夢を追い続けた人生”

2023年08月18日 06時24分29秒 | 日記

18日(金)。わが家に来てから今日で3139日目を迎え、2024年米大統領選の民主党候補指名争いで、再選を目指すバイデン大統領(80)の対抗馬を擁立すべきだとの意見が党内で浮上しているが、手を挙げる民主党有力者ないないままである  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     高齢もあるし 失言もあるし 息子の不祥事もあるし 優秀な人材が立候補してほしい

     

         

 

昨日、夕食に「蒸しジャガ  タラコバター」「生野菜サラダ」「豆腐とオクラの味噌汁」を作りました 息子が「パセリの卵とじ」を作ってくれたので「蒸しジャガ~」に添えました あとは、娘が北海道出身の会社の同僚から仕入れてきたトウモロコシをレンジでチンしていただきました さすがに北海道のトウモロコシは最高に美味しかったです

 

     

 

         

 

戸田奈津子・金子裕子著「Keep  on  Dreaming」(双葉文庫)を読み終わりました 戸田奈津子は映画字幕翻訳者。東京都出身。津田塾大学卒業後、生命保険会社に就職するも1年半ほどで退社。翻訳や通訳などのアルバイト生活を続けながら映画字幕翻訳者を目指した。「地獄の黙示録」(1979年)で本格的に字幕翻訳デビュー 以後、数々の映画字幕を手がけ、ハリウッドスターとの親交も厚い 金子裕子は映画ライター。栃木県出身。女性誌を中心に多くの媒体で映画紹介やインタビュー記事を執筆している

 

     

 

本書は2014年に刊行された「KEEP  ON  DREAMING 戸田奈津子」をもとに加筆修正のうえ 文庫化したもので、金子さんが戸田さんにインタビューしたものをまとめています

本書は次の各章から構成されています

プロローグ「通訳引退 トム・クルーズ」

第1章「生い立ち 戦争 学生時代」

第2章「就職 アルバイト コッポラ監督との出会い」

第3章「字幕翻訳 通訳 セレブとの交流」

第4章「旅行 グルメ」

第5章「戸田奈津子 ✕ 金子裕子 対談」

あとがき

プロローグを読むと、2022年5月にトム・クルーズが来日した時に、戸田奈津子さんが通訳を引退したことが分かります 戸田さんはもともと「通訳がやりたかったわけではなく、映画の字幕翻訳がやりたかった」として、通訳は辞めるが、字幕翻訳については「やっぱり大好きな仕事ですから、苦にならない。字幕を作っていると楽しくて、時間を忘れます。できる限りは続けたいですね」と語っています

「生い立ち」では、戸田さんが生まれて1年ほどで父親が出征し、帰還しないまま亡くなってしまったので、祖母と母親の手で育てられたとのことです 幼稚園から高校まで御茶ノ水女子大付属に通い、津田塾大学で英語を学んだそうです 卒業後は第一生命の社長秘書として採用されますが、「あまりにも退屈で」1年半で辞め、翻訳や通訳などのアルバイトで糊口をしのぎ、ほぼ20年が経ったそうです その間、できるだけ多くの映画を観て、字幕翻訳者の先駆者・清水俊二氏に手紙を書いたりしたのが功を奏し、やっと希望する道が開けたとのこと

最初は映画監督や出演者の「通訳」の仕事がメインだったようですが、当時はプロの通訳斡旋会社もないし、”バイリンギャル”と称されるような帰国子女もあまりいなかったこともあり、声がかかったようです 戸田さんは書きます

「あんなにヘタな英語でもなんとか務まったのは、やはり長年、映画を観続けてきたおかげだと思います 原題を聞いてすぐに日本語の題名に置き換えられる、監督や俳優のそれまでの仕事をある程度は知っていることが大事なのです たとえばフェリーニが今までにどんな映画を作り、どんな評価をされているかを知っているか、いないか。そこが命の通じた通訳の分かれ目になるのです

これがプロフェッショナルの心構えというものでしょう

ところで、字幕の存在を意識したのは高校時代に観た「第三の男」(1952年)だそうです

「ジョセフ・コットンが演じる三文文士が、ウィーンを訪ねる。ところが、彼を招いた親友ハリーはすでに死んでいる その状況に納得のいかないコットンは、ハリーの死の真相を調べるうちにナイトクラブでボベスコというルーマニア人の闇屋に会う。そこで、コットンが『事件には第三者の男がいたようだ』というと、闇屋はウィスキーのグラスを持ちながらシブい顔をして「今夜の酒は荒れそうだ」と言う この「酒が荒れる」という男っぽい台詞が、女だけの環境で育った私にはなじみが薄くて、じつにカッコよく聞こえました 英語ではどんな風に言っているか気になり、繰り返し観ながら耳をそばだてて何とか聞き取った原文が『I shouldn't drink it. It makes me acid.』(私はこれを飲んではいけない。これは私を acid にするから)。『acid』とは『酸性』の意味であり、同時に『不機嫌』『気難しい』の意味もある。翻訳者にとっては頭の痛いダブル・ミーニングの台詞ですが、それを『今夜の酒は荒れそうだ』と訳す。これぞ、名訳! 当時の私がそれをハッキリ意識したわけではありませんが、『字幕とは直訳するのではなく、台詞のエッセンスを上手く日本語に置き換える作業なのだ。おもしろそう!』ということは直感しました その記憶がずっと心に残っていたからこそ、就職活動をするときに、字幕翻訳の仕事をしたいという思いが芽生えたのでしょう

解らないことは徹底的に調べ尽くす。解った時の喜びは何物にも代えがたいものです 好きなことならなおさらです

「第三の男」(1949年:キャロル・リード監督)が取り上げられたので、第三の男=ハリー・ライム(オーソン・ウェルズ)のテーマ音楽を聴くことにします 作曲&チター演奏=アントン・カラスです

 

     

     

 

戸田さんが字幕翻訳者として初めて自信を付けたのはマリリン・モンロー主演「荒馬と女」だそうです

「冒頭のシーンは、離婚したばかりのロズリン(モンロー)が事故を起こしてしまい車を売ろうとする そんな彼女を見かねて世話好きの下宿のおばさんが自動車屋に車を引き取らせようとして言う台詞。『I'ts brand new,you know.She ought to get very good price for it.』。普通に訳せば『ほら新車なのよ。いい値がつくようにしてあげてね』という感じなのですが、なにせ文字数には制限がある そこで私は『新車なのよ。値をはずんあげてね』と訳しました それをご覧になった清水先生は、『これはうまい訳だね』とおっしゃったあと、『君なら、(字幕を)できるかもしれない』と付け加えて下さって・・・。清水先生の、このひと言には、本当に勇気づけられました

トム・クルーズ、フランシス・コッポラをはじめ世界的な映画監督や俳優との交友録は、凄いとしか言いようがありません それは彼女が「通訳」と「字幕翻訳」を両立させていたからこそ親密な関係が出来たのです

戸田さんは洋画黄金時代には年間50本もの字幕翻訳を手掛けたそうです 人生のほとんどを映画に捧げた戸田さん。カッコイイです

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飯守泰次郎氏 逝去 / 芸劇ブランチコンサート「第43回 フォーレの世界にひたる」を聴く ~ 「ピアノ四重奏曲第1番」「シシリエンヌ」他:藤江扶紀、佐々木亮、佐藤晴真、清水和音

2023年08月17日 00時42分51秒 | 日記

17日(木)。昨日、飯守泰次郎氏逝去のニュースが X(ツイッター)上でかけ巡りました 飯守氏の所属事務所ヒラサ・オフィスによると、飯守泰次郎氏(東京シティ・フィル桂冠名誉指揮者)は8月15日午前7時16分に急性心不全のため永眠した(享年82歳)とのことです 急な話で驚いていますが、思い起こせば 私が飯守氏の指揮姿を見たのは今年1月20日(金)にティアラこうとうで開かれた東京シティ・フィルの公開リハーサルでした   当日はシベリウス「交響曲第2番」と「フィンランディア」のリハーサルが公開されました 休憩後に再開されたリハーサルの冒頭、飯守氏が「練習ですから、何が起こるか分かりません。よろしくお願いします」と語っていたのが なぜか印象に残っています   数々の名演をありがとうございました。心よりご冥福をお祈りいたします

ということで、わが家に来てから今日で3138日目を迎え、トランプ前米大統領は15日、2020年の大統領選で敗北した南部ジョージア州の結果を覆そうとしたとして起訴されたのを受け、21日に記者会見を開いて無実を証明し、同州での選挙不正を明かにする「反論の余地がない報告書」を公表すると表明した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプの犯罪行為に対する「反論の余地がない報告書」が沢山出てるんですけど 

 

         

 

昨日、夕食に「茄子と鶏肉の炒めもの」「生野菜サラダ」「豆腐とシメジの味噌汁」を作りました サラダはトマトを切らしてしまい、彩りが緑一色になってしまいました お酒は息子が福島県からお土産に持ち帰った「一ノ蔵無鑑査」です 「無鑑査」というのは「本当に鑑定するのはあなたです」ということで、「美味い まずいは飲んでみて判断してちょ」という自信の表れのようです 最高に美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日、東京芸術劇場コンサートホールで「芸劇ブランチコンサート 第43回『フォーレの世界にひたる』」を聴きました オール・フォーレ・プログラムで①シシリエンヌ 作品78,②エレジー  ハ短調 作品24、③ロマンス 作品28,④子守歌 作品16,⑤ピアノ四重奏曲第1番 作品15です 演奏はヴァイオリン=藤江扶紀、ヴィオラ=佐々木亮、チェロ=佐藤晴真、ピアノ=清水和音です

なお、②は「トータルの演奏時間が短いため」として、急きょ追加された曲です

 

     

 

この日も1階席を中心によく入りました

1曲目は「シシリエンヌ ト短調 作品78」です この曲はガブリエル・フォーレ(1845-1924)が劇音楽「町人貴族」のための曲を1898年にチェロとピアノ用に作り直した作品で、同年ロンドンで初演されました その後、劇音楽「ペレアスとメリザンド」に転用されました

佐藤晴真のチェロ、清水和音のピアノによって演奏されます 佐藤晴真は2019年、ミュンヘン国際音楽コンクール・チェロ部門で日本人として初めて優勝した実力者です

佐藤による哀愁に満ちたメロディーを聴いていると、チェロこそこの曲にピッタリだと思います 素晴らしい演奏でした

2曲目は急きょ追加された「エレジーハ短調 作品24」です この曲は1880年に作曲、1883年にパリで初演されました

この曲もチェロとピアノのための作品ですが、抒情的な旋律は「シシリエンヌ」同様、チェロで演奏するのが最も相応しいと思いました

ところで 曲間のトークで、清水が佐藤に「11月のコンサートでベートーヴェンの『チェロ・ソナタ第3番・第5番』を演奏するそうですね」と、何気なく佐藤のPRしたのは良いのですが、そのあと「第3番はとてもいい曲ですね しかし、ピアニストにとって第5番はとても難しい曲で、嫌いなんです」と語りました。「難しい曲で」までは良いのですが、あえて「嫌いなんです」と言う必要はあるのだろうか、と疑問に思いました ピアニストはあまねくベートーヴェンの「チェロ・ソナタ第5番」を演奏するときは「やりにくいなぁ」とイヤイヤ弾いているのではないか、と思ってしまいそうです 清水はこのブランチコンサートで時々こういう発言をしますが、本人はそれほど深刻に捉えないで冗談半分で気軽に言っているようですが、受け止める側はそういう気軽な人ばかりではないことを知ってほしいと思います

 

     

 

3曲目は「ロマンス 変ロ長調 作品28」です この曲は1877年に作曲、1883年にパリで初演されました

藤井扶紀のヴァイオリン、清水和音のピアノで演奏されます 藤井扶紀はフランスのトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団コ・コンサートマスターを務めています   コ・コンサートマスターというのは、コンマスが何人かいて、そのうちの一人ということのようです

藤井の歌うような優美な演奏が印象的でした

4曲目は「子守歌 作品16」です この曲は1879年に作曲されたヴァイオリンとピアノのための作品ですが、この日の演奏はヴィオラによる編曲版です

佐々木亮は2008年からN響首席ヴィオラ奏者を務めています

佐々木は優しくも哀愁に満ちた旋律を丁寧に奏で、聴衆を魅了しました

最後の曲は「ピアノ四重奏曲第1番 ハ短調 作品15」です この曲は1876年から79年にかけて作曲、1880年にパリで初演されました 第1楽章「アレグロ・モルト・モデラート」、第2楽章「スケルツォ:アレグロ・ヴィーヴォ」、第3楽章「アダージョ」、第4楽章「アレグロ・モルト」の4楽章から成ります

演奏前のトークによると、弦楽器の3人はこの曲の演奏経験がある一方、清水は初めて弾くそうです 佐々木氏によると、この曲はピアノ四重奏曲としては最高傑作とのことです

藤井のヴァイオリン、佐々木のヴィオラ、佐藤のチェロに清水のピアノが絡んでエモーショナルな演奏が展開します 第2楽章における佐藤の哀愁に満ちた演奏が印象的です 第4楽章では終盤における推進力に満ちた演奏で華麗なフィナーレを飾りました

やはり、名曲はトップクラスの演奏家で聴くべきだな、と思わせる素晴らしい演奏でした

 

     

 

次回以降の芸劇ブランチコンサートのラインナップは下のチラシの通りです いずれも魅力的なプログラム・出演者で、今から楽しみです

 

     

     

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第164回芥川賞受賞作=宇佐見りん著「推し、燃ゆ」を読む ~ 女子高生の”推し”(アイドル)がファンを殴り炎上した!

2023年08月16日 07時05分54秒 | 日記

16日(水)。わが家に来てから今日で3137日目を迎え、米南部ジョージア州の大陪審は14日、2020年大統領選で敗れたトランプ前大統領が結果を覆そうとして、同州の票集計作業に干渉した疑惑を巡り、トランプ氏と、法律顧問を務めたジュリアーニ元ニューヨーク市長ら19人を起訴したが、トランプ氏は20年大統領選の際、ジョージア州で1万1779票差で敗北、この結果を覆そうとし、同州の選挙管理を行う州務長官に電話をかけ「私がしたいことはただ(票差を1票上回る)1万1780票を見つけることだ」と迫っていた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプが起訴されるたびに 政治献金が増えるのは 米国民がアホだらけだから?

 

         

 

昨日の夕食は娘が餃子を焼いてくれました 王将の冷凍餃子ですが、とても美味しかったです 私はせめてスープでもと思い「野菜とウインナのスープ」を作りました、が写ってませんね 料理を作ってもらったら 皿洗いをする。これは常識です

 

     

 

         

 

宇佐見りん著「推し、燃ゆ」(河出文庫)を読み終わりました 宇佐見りんは1999年生まれ。2019年「かか」で第56回文藝賞を受賞しデビュー 同作は史上最年少で第33回三島由紀夫賞を受賞。第2作「推し、燃ゆ」は第164回芥川賞を受賞し、2021年本屋大賞にノミネートされたほか、世界15か国・地域で翻訳が決定し、現在 単行本累計80万部を超えるベストセラーとなった

 

     

 

主人公はアイドルグループ「まざま座」に所属する8歳年上の上野真幸(うえの まさき)を推す、高校生の山下あかり    アルバイト先ではミスが多いため「あかちゃん」と呼ばれ、学校の成績もパッとせず、家庭内でも怠け者扱いされている    そんなあかりは、バイト代はすべて真幸のライブチケットやグッズにつぎ込み、”推し”を本気で追いかけ、推しを”解釈”してブログに残す 全身全霊で打ち込めることが自分にもあるという事実を教えてくれたとして、真幸を生きる上での「背骨」のように思うことで、ままならない日常をなんとか生きていた そんな中、”推し”がファンを殴り、SNS上で炎上してしまう あかりの”推し”である真幸は なぜ 誰を殴ったのか? 自分に何ができるのか? と思いめぐらす しかし、真幸は彼女の心配をよそに、アイドルグループの解散と、アイドル引退宣言を発表する あかりは「この先どうやって過ごしていけばいいのかわからない。押しを推さないあたしはあたしじゃなかった。推しのいない人生は余生だった」と思い詰めるが、「もう追えない。アイドルでなくなった彼をいつまで見て、解釈し続けることはできない。推しは人になった」と観念する。しかし、これまでの人生を振り返り、イライラが募るばかりだった

”アイドル(推し)の追っかけ”は、いつの時代にも存在するし、身に覚えのある人も多いのではないかと思います 小遣いやバイト代は自分が”推す”アイドルのライブチケットやグッズにつぎ込み、コンサートツアーがあれば、全国どこにでも追っかけていく それが青春というものですが、青春は年齢ではないので、いくつになっても”推し”を応援することに生き甲斐を感じている人は少なくないと思います そういう人がこの本を読むと主人公の悩みや葛藤が良く分かり、感情移入してしまうと思います 本書では、”推し”がアイドルを引退した後、誰かと同棲していることが分かり、あかりはシラケてしまい、今までの”推し”への想いは何だったんだ、と自虐的になります 本当の”推し”とは結婚しようが別れようが一貫して応援し続けることではないかと思いますが、引退してしまっては仕方ありませんね

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「お茶をどうぞ 向田邦子対談集」を読む ~ エッセイの名手は対談の名手でもあった:対談相手は黒柳徹子、森繁久彌、阿久悠、池田理代子、和田勉、山田太一、久世光彦、倉本聰ほか

2023年08月15日 06時45分41秒 | 日記

15日(火)。一昨日は単身、埼玉県S市の菩提寺に墓参りに行ってきました 妹夫婦が車で最寄り駅まで迎えにきてくれたので助かりました    幸い台風の影響はほとんど受けず無事に墓参りを済ませ、帰りがけに妹夫婦の住む実家に寄って飼い猫ミラと再会してきました 人間で言えば80歳台の高齢猫ですが、顔を覚えていてくれて懐いてきました

昨日は、福島県白石市に単身赴任している息子が帰省しました    お正月以来なので約7か月ぶりです

ということで、わが家に来てから今日で3136日目を迎え、朝鮮中央通信は14日、金正恩朝鮮労働党総書記が11,12日 両日、ミサイルや発射台付き車両などを生産する複数の軍事工場を現地指導したと報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     軍事工場を現地指導したり 農業を現地指導したり 余程の天才らしいけど 本当は?

 

         

 

昨日、帰省したばかりの息子が夕食を作ってくれました 「スパゲティ・ミートソース」がメインですが、真鯛をメインにした料理とレタスとミニトマトのサラダも作ってくれました。どれもが美味しく、わが家で一番料理が上手いところを見せてくれました

 

     

 

         

 

「お茶をどうぞ 向田邦子対談集」(河出文庫)を読み終わりました 向田邦子は1929年生まれ。実践女子専門学校国語科卒。映画雑誌編集記者を経て放送作家となりラジオ・テレビで大活躍した 代表作に「だいこんの花」「七人の孫」「寺内貫太郎一家」「阿修羅のごとく」「隣の女」などがある    1980年に初めての短編小説「花の名前」「かわうそ」「犬小屋」で第83回直木賞を受賞し作家生活に入るが、81年8月飛行機事故で急逝した   著書に「父の詫び状」「無名仮名人名簿」「眠る杯」「思い出トランプ」などがある

 

     

 

本書は2016年8月に河出書房新社から刊行された単行本を2019年1月に文庫化したものです

私は書店に行って「向田邦子」という名前が書かれた本に出合うと、必ず手に取って 持っている本かどうか確かめ、まだ持っていないと分かると何の躊躇もなく購入しています 娘が実践女子高校を受験するのをきっかけに、彼女の作品を片っ端から読破していったのが始まりです 小説でもエッセイでもそうですが、彼女の文章の特徴は①「~である」調の男性的な文章、②ワン・センテンスが短く簡潔な文章、③意表を突く展開と余韻が残る終わり方、です 私が彼女の文章に憧れるのは、まったく逆のスタイルだからだと思います エッセイに関する限り、向田邦子を超える人はいないと思います そんな向田邦子が「対談」で相手からどういう言葉を引き出し、どういうことを話すのか、興味があります

なお、文春文庫から「向田邦子全対談」が出ていますが、対談の相手が本書とは異なっています

この本は、大きく「テレビと小説」「おしゃれと食いしん坊」「男の品定め」の3つのテーマにより章立てされています

1.テレビと小説

①「おっちょこちょいの生死の瀬戸際 ~ 黒柳徹子

②偉大なる雑種・強運 ~ 森繁久彌

③男運だけはいいのよ ~ 小林亜星

④ぜいたくって何だろう ~ 阿久悠

⑤小説とテレビの脚本では勝手が違う? ~ 池田理代子

⑥テレビの中のインテリア ~ 山本夏彦

⑦男の眼、女の眼 ~ ジェームス三木

⑧ブラウン管の裏側で ~ 和田勉、久世光彦

⑨いやな人の台本は書けない ~ 橋田寿賀子、山田太一、倉本聰

2.おしゃれと食いしん坊

①マリリン・モンローとローレン・バコール ~ 原由美子

②私のマドレーヌは薩摩揚 ~ 大河内昭爾

3.男の品定め

①結婚しない女の先駆者じゃない。嫁きおくれです ~ 青木雨彦

②男の美学について ~ 常盤新平

以上の対談の中で、改めて驚くのは黒柳徹子との対談で向田邦子が語った それまで手掛けたテレビとラジオの台本の数です テレビについては「一口に千本って言ってますけど・・・」と語り、ラジオについては「1万本以上?」という問いに「もっと書いていますね」と答えています こうなると、食べて寝ている以外は「文章を書いている」、というより「文章を書き飛ばしている」としか考えられません

これに関連して、脚本家のジェームス三木との対談で、「向田さんは”速い”といわれる説と、”遅い”といわれる説がありますが・・・」と問われ、「それは両方当たっているんですね。書き始めると遅くはないと思うんですけど、とっかかりが非常に遅いもんですから、結果的には非常に遅くなるということなんですね」と答えています さらに「これはある人の名言なんですけども、学校に近い子供ほど遅刻するっていうんですね。わたくしの場合ピッタリです。それだけは直さなくちゃいけないと思っているんですけどね。”遅いんならば、字ぐらい綺麗に書け”って言われるんです、ところが遅かろう汚かろう、筋の先がわからないというんですから。よくこれで仕事してますね(笑)」と語っています

「書いた字が汚くて読めない」ということに関しては 自分のことのように共感を覚えますが、面白いエピソードに事欠きません 黒柳徹子との対談で、次のようなエピソードを披露しています

向田:池内淳子さんの台詞だったと思うんですが、その下にカッコして、(怒り)とか、(羞恥)とか、そういう表情をしていただきたいと書くじゃないですか。で、池内さんが台本を見て、ディレクターに「私はどういう顔をしたらいいんでしょうか」って尋ねたらしいの。カッコの中には「猿股」って書いてあったんですって

黒柳:池内さんの猿股?

向田:私は「狼狽」って書いたのよ。

黒柳:ハッハッハッ・・・

向田:全然違うでしょう。

黒柳:でも、その時の池内さんの表情は狼狽そのものだったわ、きっと

黒柳さんの切り返しも見事ですね

ところで、対談の中には ブログを書く時のヒントが登場します 例えば、黒柳徹子との対談では次のようなやり取りがあります

黒柳:最近、書きたい人がすごく増えているんですってね シナリオ講座とかいろいろ。そういう方たちに向田さんがおっしゃってあげられることがあったら、どういうこと?

向田:私はね、書く技術は氷山の一角だと思うの 氷山の下のほう、海面下の部分は考えたり、感じたりすることなんです。その上のちっちゃな部分が書くことだと思うんです。感じたり、思ったりすることがたくさんあれば、自然に書けるんじゃないかと思うのね

黒柳:もちろん慣れとか技術ということもあるんでしょうけれど・・・

向田:そうね。だから感じたり思ったりがなければ何も書けないとは言えますね 名文集なんて読んでも無駄な気がします

これはよく分かります いつか このブログに書きましたが、これを拡大解釈すれば「インプットがなければ、アウトプットがない」ということです 「インプット」とは知識を吸収することであり、モノを見たり聞いたり感じたりすることです 私の場合「インプット」とはコンサートを聴いたり、映画を観たり、本を読んだりすることで、それらを通して思ったことや感じたことをブログに書くのが「アウトプット」です 12年前の2011年2月15日にこの このブログを始めたきっかけは、ある知人から言われた「それだけ頻繁にコンサートに行っているのに、後に何にも残さないなんてもったいないですね」という ひと言でした つまり、それまでは「インプット」だけやっていて、「アウトプット」がなかったのです だから、コンサートの翌日にはすっかり内容を忘れている・・・なんてことは日常茶飯事でした 「ブログを書く」ということは、観たこと・聴いたこと・読んだことを、一度 頭の中で整理して、思ったことや感じたことを第三者に分かってもらえるように文章として表現することです したがって、他人がコンサートの休憩時間や終了後にビールやワインを飲んでいるからといって、自分もリラックスして酒を飲んでいるわけにはいかないのです そんなことをしていたら、今聴いた演奏を忘れてしまい、いざブログを書く段になって言葉が出てこなくなります これは「アウトプット」が前提となっている私の宿命だと思っています

話を戻します 言葉を扱う同業者としての和田勉(NHKディレクター)と久世光彦(TBSプロデューサー)との鼎談では、言葉をめぐる面白いエピソードが語られています

久世:「青春の蹉跌」という映画に出た役者が、今でもその映画を「青春の挫折」と言ってる

   (tora注:この「役者」とは”ショーケン”こと萩原健一のことではないかと思われます)

向田:「故郷に綿(ワタ)を飾る」と言った人もいたようですね

和田:銭湯を「ゼニユ」と読んだりね 台本に「今夜はむしむしと蒸すなあ」と書いてあるのを、「今夜はむしむしとフカすなあ」と読んでしまったり

向田:和田さんだって大きなことは言えないわよ。ワカサギをずっと鳥だと思ってたんでしょう

和田:ワカサギは「足が早い」なんて向田さんが言うからさ 

向田:「足が早い」ってのは、浜辺をチョコチョコ走ることじゃないのよ(笑)。「くさるのが早い」ってことなの

また、スタイリストの原由美子との対談では次のような会話が交わされます

向田:コーディネーターとスタイリストの区別、よく分からないのね

原 :区別ないみたいですね

向田:ああ、そうなの。じゃ鮫(サメ)と鱶(フカ)みたいなものね(笑)。私、友だちとよく笑うんですけれど、鮫と鱶とどう違うんだ、って 鮫の大きいのを鱶と思っている人もいるの。ガブッと噛む「ジョーズ」はどっちだ、っていうと もうわからなくなっちゃう   みんな そこのところでイメージがごちゃごちゃになるわけね。鮫と鱶とは同じものなのよ

対談を読んで「意外だなあ」と思ったのは、作家・常盤新平との対談で語った「女が信用できない」という発言です

向田:男の人はみんな面白いですよ(笑)。女よか ぜんぜん面白い    わたしはネコもオス猫、お医者さまも男のお医者さんというふうにね(笑)。恥ずかしいんですけどね。わたし、お店屋さんに行くでしょ、女の店員から絶対に買わないですよ。嫌いですよ、わたし、女の店員から物を買うの    こんなこと言うと、自立するなんとかの雑誌から叱られますけど、信用しないですね、女を     たとえばお薬ならお薬買いますね。その時、たとえば3千円ぐらいかけて買うわけですよ。女の人から買うとーその人が作った薬じゃないですよー単なる売ってる人ですけども、薬が効かないような気がする(笑)。女を信じないとこありますね

「いかにも旧世代の女性の発言だな」と思うと同時に、これを今の若い女性が読んだらどう思うだろうか?という疑問も湧いてきます

本書を読み終わって思うのは、「エッセイの名手は対談の名手でもあった」ということです 飛行機事故とはいえ、52年の生涯はあまりにも短すぎたと思います 向田邦子が現代に生きていたら、今の世相をどのように切り取り どのように文章表現していただろうか、と思わずにいられません 1週間後の8月22日は彼女の42回目の命日です

 

     

     本棚の「向田邦子コーナー」。ダブっている本もあるし、妹の和子さんの本もある。

 

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METライブビューイング2023ー24シーズンラインナップ / 青柳いづみこ「パリの音楽サロン」、ブレンダン・スロウカム「バイオリン狂騒曲」、宇佐見りん「推し、燃ゆ」ほかを買う

2023年08月14日 06時51分14秒 | 日記

14日(月)。「METライブビューイング2023ー2024シーズン」のラインナップが発表されています 12月8日(金)から来年6月27日(木)まで、東劇、新宿ピカデリーほかで以下の全9作品が上映されます 

第1作:ジェイク・ヘギー「デッドマン・ウォーキング」(MET初演)

第2作:アンソニー・デイヴィス「マルコム X 」(MET初演)

第3作:ダニエル・カターン「アマゾンのフロレンシア」(MET初演)

第4作:ヴェルディ「ナブッコ」

第5作:ビゼー「カルメン」(新演出)

第6作:ヴェルディ「運命の力」(新演出)

第7作:グノー「ロメオとジュリエット」

第8作:ブッチーニ「つばめ」

第9作:プッチーニ「蝶々夫人」

上記の通り、全9作品のうち3作がMET初演、2作が新演出という進取の精神のMETらしい意欲的なラインナップになっています

 

     

 

また、8月25日(金)から9月28日(木)まで東銀座の東劇で、これまでのMETライブビューイングから厳選された全28演目がアンコール上映されます

 

     

     

 

ということで、わが家に来てから今日で3135日目を迎え、中国の不動産業界で業者の資金繰りが悪化し、天津市の開発区に高くそびえる117階建て 高さ597メートルの超高層ビルの工事も止まっている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     さすがは習近平の中国! ビルを建てるのも 工事を中止するのも スケールが大きい

 

         

 

手元の本が少なくなってきたのでいつもの通り、ジュンク堂書店池袋本店で6冊購入しました

1冊目は青柳いづみこ著「パリの音楽サロン ~ ベルエポックから狂乱の時代まで」(岩波新書)です 気鋭のピアニストによりパリの音楽サロンの役割が語られているようです

 

     

 

2冊目はブレンダン・スロウカム著「バイオリン狂騒曲」(集英社文庫)です 言うまでもなく、本書はタイトルに惹かれて購入しました

 

     

 

3冊目は戸田奈津子著「Keep on Dreaming」(双葉文庫)です 本書は映画の字幕と通訳でお馴染みの戸田奈津子さんの自伝エッセイです

 

 

     

 

4冊目は宇佐見りん著「推し、燃ゆ」(河出文庫)です 本書は第164回芥川賞受賞作で、2021年本屋大賞ノミネート作でもあります

 

     

 

5冊目は「お茶をどうそ 向田邦子対談集」(河出文庫)です 私は「向田邦子」の名前を見るとほぼ自動的に購入してしまいます 彼女のエッセイにおける文章は私の理想です

 

     

 

6冊目は誉田哲也著「オムニバス」(光文社文庫)です 待望の姫川玲子シリーズの文庫本最新作です

 

     

 

いずれも読み終わり次第、当ブログでご紹介していきます

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オーケストラの楽団員数 ~ フェスタサマーミューザのプログラム冊子から / 是枝裕和監督「怪物」を観る ~ 第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞受賞作

2023年08月13日 06時53分27秒 | 日記

13日(日)。11日に終了したフェスタサマーミューザの各公演のプログラム冊子に、出演オーケストラ(全11楽団)のプロフィールが掲載されています それをもとに各オケの創設年と楽団員数をまとめてみました 以下、楽団員数が多い順に掲載。オケによって歴史上の説明を加えてあります

 

     

 

東京フィルハーモニー交響楽団 「いとう呉服店(現・大丸松坂屋)」の少年音楽隊として1911年創設。現在の名称は1948年から。2001年に「新星日本交響楽団」と合併。160名。

NHK交響楽団 1926年に「新交響楽団」として創設。「日本交響楽団」の名称を経て、1951年に日本放送協会(NHK)の支援を受け現在の名称に。103名。

読売日本交響楽団 読売新聞社、日本テレビ放送網、読売テレビのグループ3社を母体に1962年創設。100名。

東京都交響楽団 1965年に東京オリンピック記念文化事業として東京都が設立。92名。

新日本フィルハーモニー交響楽団 日本フィルを退団した3分の1の楽員と小澤征爾、山本直純により1972年創設。90名。

日本フィルハーモニー交響楽団 1956年創設。80名。

東京交響楽団 1946年創設。79名。

神奈川フィルハーモニー管弦楽団 1970年創設。68名。

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 1975年創設。58名。

日本センチュリー交響楽団 1989年創設。52名。

山形交響楽団 1972年創設。49名。

以上の通り、オーケストラの歴史が古いほど楽団員数が多い傾向があるようです

ということで、わが家に来てから今日で3134日目を迎え、アメリカのバイデン大統領は10日、訪問先のユタ州で開かれた政治資金集めのイベントで、中国は経済成長が鈍化し高い失業率や高齢化といった問題を抱えていると指摘し、「中国は時限爆弾だ」「悪い人々が問題を抱えると悪いことをする、これは良くないことだ」と述べた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     アメリカだってトランプという時限爆弾を抱えている  不発弾のまま投獄しなきゃ

 

         

 

昨日午前、新宿ピカデリーで是枝裕和監督による2023年製作映画「怪物」(125分)を観ました

物語の舞台は諏訪湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な生活を送っている そんなある日、学校でケンカが起きる それはよくある子ども同士のケンカのように思えたが、当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく そしてある嵐の朝、子供たちがこつ然と姿を消してしまう

 

     

 

この映画は3部構成になっていて、第1部は小学5年生の麦野湊(黒川想矢)の母親でシングルマザーの早織(安藤サクラ)の視点で描かれています 息子が学校で教師から体罰を受けて虐められていると疑い、学校に乗り込んでいくというストーリーです 第2部は教師の保利道敏(永山瑛太)の視点で描かれています 湊のケガは体罰でなく、暴れる湊を止めようと思って偶然手が当たってしまったこと。しかし、学校側の事なかれ主義の保身により保利が犠牲になったというストーリーです 第3部は湊と、同じクラスの少年・星川依里(柊木陽太)との関係の中で、言葉で言えない少年の微妙な心理を描いています

第1部を見ると、母親の早織がいかに学校の形式主義的な対応に怒るかが理解できます しかし、第2部で教師の保利の生徒たちへの態度を見ると、保利は全然悪くないのではないか、と思い直します そして、第3部に入ると、湊は男友達の依里が好きになってしまったが、そのことを周囲に知られたくないというストレスを抱え、保利が自分に体罰を振るったと嘘をついたことが明らかになります

映画を観終わって思うのは、「怪物」とは誰か? あるいは「怪物」とは何か?ということです それは学校の体面を守るため、若い教師が体罰をやっていないという主張を無視し、やったことにして、保護者に謝罪すればいつかは問題が忘れ去られていくという「事なかれ主義」かもしれません あるいは、同性愛に目覚めた少年たちの、正直な気持ちを言い表せない複雑な心情そのものなのかもしれません

本作は2023年、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞を受賞しています 孫を自動車事故で亡くし、表情を無くした小学校校長・伏見真木子を田中裕子が怪演しています 音楽を今年3月に他界した坂本龍一が手掛けていますが、エンドロールで流れる抒情的な音楽が心に沁みます

 

     

 

     

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フェスタサマーミューザ・フィナーレ ~ 原田慶太楼 ✕ 清塚信也 ✕ 東響でラヴェル「ピアノ協奏曲」、芥川也寸志「交響管弦楽のための音楽」、チャイコフスキー「眠りの森の美女」他を聴く

2023年08月12日 00時01分15秒 | 日記

12日(土)。わが家に来てから今日で3133日目を迎え、北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は10日、台風6号の接近に警戒を呼び掛ける記事で、故金日成首席と故金正日総書記の肖像画や銅像などを守る対策を取ることに「最優先の関心を払わなければならない」と強調したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     北朝鮮の国民は よくこんな馬鹿げた国で生活してるね  生まれる国は選べないか!

     

         

 

昨日、夕食に「アスパラとベーコンとジャガイモのバター炒め」「生野菜サラダ」「冷奴」「ブナピーの味噌汁」を作りました 今まで、「アスパラとベーコンのバター炒め」は作ったことがありましたが、小ぶりの新じゃがを入れたらどうだべか、と思って一緒に炒めました   とても美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日、ミューザ川崎シンフォニーホールで「フェスタサマーミューザ2023」参加公演「東京交響楽団 フィナーレコンサート リズム!メロディ!!慶太楼!!!」を聴きました プログラムは①ラヴェル「道化師の朝の歌」(管弦楽版)、②アルトゥロ・マルケス「ダンソン第9番(ダンソン・ヌメロ・ヌエヴェ)」、③芥川也寸志「交響管弦楽のための音楽」、④ラヴェル「ピアノ協奏曲 ト長調」、⑤チャイコフスキー:バレエ組曲「眠りの森の美女」作品66a です プログラムの隠れ共通テーマは「ダンス」です 演奏は④のピアノ独奏=清塚信也、指揮=東響正指揮者・原田慶太楼です

 

     

 

デジタルサイネージにある通り、本フィナーレ公演も「完売御礼」です オーケストラ12公演を聴いてきた1C8列13番の席ともこの日を最後にお別れです

拍手の中、楽員が配置に着きます 弦は14型で 左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置をとります。コンマスは客演の相曽賢一朗です ステージ上手奥にはハープが2台スタンバイします

1曲目はラヴェル「道化師の朝の歌」(管弦楽版)です この曲はモーリス・ラヴェル(1875-1937)が1904年から翌05年にかけて作曲した5曲から成る「鏡」の第4曲で、1918年に管弦楽用に編曲されました

原田の指揮で演奏に入りますが、メリハリの効いた音楽づくりで色彩感豊かな演奏を展開します   中間部におけるファゴットの福士マリ子の演奏が冴えていました

2曲目はアルトゥロ・マルケス「ダンソン第9番(ダンソン・ヌメロ・ヌエヴェ)」です この曲はメキシコの作曲家アルトゥロ・マルケス(1950~)がロサンゼルス・フィルからの委嘱を受けて2017年に作曲しました

冒頭、トランペットと大太鼓による迫力のある演奏で度肝を抜いたかと思えば、抒情的なフレーズが登場したりと、起伏の激しい音楽です 基本的にリズム中心の音楽で、楽員は「同じアホなら踊らにゃダンソン」とノリノリの風情です とても楽しい演奏でした

3曲目は芥川也寸志「交響管弦楽のための音楽」です この曲は芥川也寸志(1925-1989)が1950年に作曲、NHK放送25周年記念管弦楽懸賞で特賞を得ました 第1楽章「アンダンティーノ」、第2楽章「アレグロ」の2楽章から成ります この曲はかなり前に一度聴いたことがありますが、内容を思い出せません 第1楽章を聴いていて、プロコフィエフみたいだな、と思いました 第2楽章ではトロンボーン、トランペット、ホルンといった金管楽器が大活躍し、弦楽器によるスピード感溢れるリズム中心のキレッキレの演奏を聴いて、その昔聴いたメロディーを思い出しました 70年以上前の音楽ですが新鮮に感じました 実に素晴らしい音楽だと思います

 

     

 

プログラム後半の1曲目はラヴェル「ピアノ協奏曲 ト長調」です この曲はラヴェルが1929年から31年にかけて作曲、1932年にパリで初演されました 第1楽章「アレグラメンテ」、第2楽章「アダージョ・アッサイ」、第3楽章「プレスト」の3楽章から成ります

ピアノ独奏の清塚信也は5歳からピアノの英才教育を受け、桐朋女子高等学校音楽科(共学)を首席で卒業 国内外のコンクールで数々の賞を受賞。人気ドラマ「のだめカンタービレ」等の作品で吹き替え演奏を担当し脚光を浴びる 今年1月~3月に日テレ系で放送された「リバーサルオーケストラ」の音楽を担当して大きな話題を呼びました

協奏曲なので8型に縮小します 清塚信也がピアノに向かいますが、ちょっと落ち着きがありません 原田の「さあ、集中しようぜ」といった気持ちを反映したかのように鞭が鳴らされます 清塚はかなり自由に、まるでジャズのインプロビゼーションのように”気楽に”演奏しているように見えます そのうち原田 ✕ 東響のしっかりとしたサポートを得て、落ち着いてきました 第2楽章はかなりゆったりしたテンポでピアノ・ソロが奏でられます 中盤におけるコーラングレの葉加瀬太郎、もとい、イングリッシュホルンの最上峰行のしみじみとした演奏が独奏ピアノに調和して美しく響きます 第3楽章は一転、推進力に満ちた軽快な演奏が展開しました

満場の拍手の中 カーテンコールが繰り返され、清塚はアンコールにラヴェル(清塚編)「亡き王女のためのChill」を自由自在に演奏し、再び大きな拍手を浴びました

最後はチャイコフスキー:バレエ組曲「眠りの森の美女」作品66aです この曲はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)がマリインスキー劇場よりシャルル・ペローの童話「眠りの森の美女」を題材とするバレエ音楽の作曲を依頼されたことから、1888年から翌89年にかけて作曲、1890年にペテルブルクのマリーンスキー劇場で初演されました 今回演奏されるのは「組曲」で、第1曲「序奏とリラの精」、第2曲「アダージョ(パ・ダクシオン)」、第3曲「パ・ド・カラクテール(長靴をはいた猫と白猫)」、第4曲「パノラマ」、第5曲「ワルツ」の5曲から成ります 

オケが14型に戻り、管打楽器が増員され、ハープがステージ上手奥にスタンバイします

原田の指揮で演奏に入りますが、第1曲「序奏」でガツンと決めて、一気にチャイコフスキーの世界に引きずり込みます 竹山愛のフルート、新日本フィルからの客演・神農広樹のオーボエ、福士マリ子のファゴット、トランペットが素晴らしい 第2曲の終結部に向けての盛り上げは原田ならではです パノラマに移る前に演奏された独奏ハープによる演奏が素晴らしかった どこのだれ❓ オケの総力を挙げた最後のワルツを聴いて、”メロディーメーカー”としてのチャイコフスキーの才能を改めて見直しました

満場の拍手とブラボーに、原田 ✕ 東響は芥川也寸志「行進曲”風にむかって走ろう"」を元気溌剌と演奏しました    曲が終盤に近づくと、原田は客席の方に振り返り 聴衆に手拍子を求めます かくして指揮界の策士・原田慶太楼にまんまと「聴衆参加型アンコール」に乗せられた聴衆は、嬉々として手拍子をして東京交響楽団と一体となり、演奏を完結させたのであります 以上、ミューザ川崎シンフォニーホールからライブ中継でお送りしました 実況は宮田輝でした

 

     

 

これで今年のフェスタサマーミューザも終わりです 今年はオーケストラ12公演、洗足学園バレエコンサート、真夏のバッハの計14公演を聴きました オーケストラでは「山形交響楽団」と「日本センチュリー交響楽団」を初めて聴くことが出来てラッキーでした どちらも素晴らしいオケだと思います

大型台風が日本列島に近づいています 皆さん、強風に飛ばされないように気をつけてお過ごしください

 

     

     

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