レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

アドベント W杯 そこに生きている人々

2022-11-22 01:08:43 | 日記
こんにちは/こんばんは。




清涼感アップ用ピック
Myndin er eftir Cassie_Boca@unsplash.com


十一月もあと一週間あまり。レイキャビクでは相変わらず5〜9度くらいはあるような比較的暖かい日が続いています。それでも風が吹くと、さすがにサムっ!という具合にはなってきました。ちなみに私はまだシャツは半袖で過ごしています。

個人的には -これも相変わらずですが- 慌ただしい日々が続いていました。最近興味が「復活」したのがNFL 、つまりはアメリカン・フットボールなのですが、これは雑事を忘れるにはもってこいのエンターテイメントで、ここんところ日本のバラエティ番組を抑えて、私のプライベート時間消費のトップに立っています。

高校生の頃、初めてアメフトというものをテレビで見始めたのですが、その頃は相当ハマってボールを買い込み、学校でタッチフットなどをしたりしましたね。その頃からミネソタ・バイキングスというチームがひいきだったのですが、今年はそのバイキングスが久々に強いチームなりました。

これまで8勝1敗でリーグトップを走っていたのですが、昨日(日曜日)のダラス・カウボーイズ戦では40:3というコケ負け。暗い月曜日だ...




バイキングスのQB カズンズ (ウソウソ)


そういえばワールドカップも始まりましたね。あまり盛り上がっていません。私自身も入れ込んでいません。

なんで入れ込めないのかというと、まずは時期的なもの。私は教会で働いているのですが、教会では実は昨日の日曜日が一年の最後の日曜日。来週からは「新年」に入り、Adventアドベント「待降節」というクリスマスに備える時期が始まります。

で、今回のワールドカップ、まるまるとこのアドベントに被さっているのです。アドベントというのは、こちらでは家族でクリスマスの準備をする楽しい時期です。だから日曜日には、小さな子供さんとかのいるお父さん方は、子供連れでツリーの点灯式に行ったり、クリスマスの買い物に行ったりする時期なのです。

カタールとアイスランドの時間差は三時間。カタールの方が先行しています。だから試合開始が夜の7時とすると、こちらの夕方の4時。試合が見たいお父さんは悩むだろうとお察しします。子供を取るか、観戦を取るか...

日曜日に関して言えば、私の担当する礼拝は午後2時からなので、これも試合時間に引っかかるものがあります。えーい、迷惑千万な話しだ。礼拝を取るか、サッカーを取るか、では人は迷わないのです。アイスランドでの教会の宿命:「好天とW杯には勝てない」

てなことをいうと「そんなのはキリスト教中心の、それこそ勝手な話しではないか。世界にはイスラム教徒や仏教徒だってワンサカいるのだ。スポーツ競技の日程がイスラム教徒のラマダーン(断食の時期)にぶつかっていることだってあるのだぞ!」

まあ、それは確かにそうです。これは事柄の正当性というよりは、都合が良いか悪いかということの問題ですね。




先週の土曜日、ダウンタウンのクリスマスキャットの点灯式
Myndin er RUV.is


もうひとつ私が今回のワールドカップに入れ込めない理由。これは私個人というよりは社会的に取り上げられている問題ですが、カタールという国の人権問題です。この点は日本でも相当報道されているでしょうから、くどくどとは述べませんがポイントだけ。

第一はW杯開催に直接関係していることで、競技場や関連施設の建設現場で、多数の移民労働者が劣悪な労働条件の下で生命を失っていることです。イギリスのガーディアン紙によるとW杯開催決定以降、6500人もの移民労働者が亡くなっているとのこと。

カタール政府は「そんなに多くはない」と抗議していますが、ILO(国際労働機関)も「亡くなった労働者の数は、カタール政府の公式発表よりは多い」としています。

移民労働者に関しては、亡くなった方の数だけではなく、負傷した人や低賃金、給料不払い等々の問題もかなり指摘されています。

第二は性的マイノリティの人たち -LGBTQ- に対する差別問題です。これは決してカタールだけの問題ではなく、イスラム教国全般の中で共通するものがありますし、実際にはキリスト教会の中にも同じような考えを持っている人はあります。

ですがカタールだけに焦点を当てると、同性愛行為は違法行為になり処罰の対象になります。これは国の法律(市民法)。イスラムの宗教法であるシャリアではさらに重い罪とされ、死刑を課せられることもあります。





ジュールリメ杯
Myndin er eftir Rhett_Lewis@unsplash .com



私自身はカタールに行ったこともないので、ここから先は単に報道で見聞きしたことになるのですが、LGBTQが法律で処罰対象になることだけが問題なのではなく、一般の市民生活の中で、はなはだしい差別、嫌悪があり、性的マイノリティ者だけではなく、時にはLGBTQへの支持を表明する人の身の安全が脅かされることがあるらしいのです。

「国」というよりは「市民」の中にそのような差別思想があるということですね。イスラム教「だけ」バッシングにならないように言い添えておきますが、同様な偏見差別は、例えばキリスト教文化の下にあるアフリカの国の中にも非常に根強くあります。「例えば」ですよ、アフリカだけではありません。

その三。ジェンダー間の不平等。もっと単純にいうと女性の権利の脆弱なこと。先日、イラン人の知り合いから聞いたのですが、イランでは女性は夫や父親の同意書なくしては海外旅行へ行けないとのこと。カタールでも同様のようです。

婚外での性行為はもちろん禁止されており、女性が婚姻関係外で妊娠した場合でも処罰されるそうです。これがですねえ、同意による性関係だけではなく、レイプの場合も同じなんです。

女性がレイプ被害にあった場合、これが「婚外性関係」とみなされ、被害者であるはずの女性自身が裁かれます。何年か前にノルウェーの女性がドバイでレイプ被害者となり「有罪」とされた事件があり、こちらでは相当大きなニュースとなりました。

ノルウェー政府の努力でその女性は「恩赦」をもらい帰国できましたが... 被害者を有罪にしておいて「恩赦」とは笑わせるな、と言いたいですね。

さて、これらの問題、アイスランドではかなり議論の俎上に上がっています。周囲のヨーロッパ諸国でも同様のようです。実際にはカタールの人権問題に加えて、FIFAの内部腐敗も槍玉に上がっており、これもW杯盛り上がり不足の要因となっています。




イランxイングランド戦 国歌斉唱を拒否したイランチーム
Myndin er ur CNN.com


伝わってきているところでは、パリとかではサッカーのW杯やヨーロッパ杯では恒例の、屋外でのパブリックビューを今回は設置しないとか。レイキャビクでもロシア大会の時は、ダウンタウンの広場でパブリックビューがあったのですが、どうするんでしょうね。

現市長のダーグルさんは人権派(気取り)なので、おそらくパリの真似をするのではないかと思いますが...

「スポーツに政治を持ち込むな」という声をよく聞きますが、実際にはそんなに簡単に線引きできるものではないようです。

その関連でひとつ。月曜日に行われた試合のひとつ、イランvsイングランド。イランチームは試合前の国歌を歌いませんでした。言わずもがなですが、イランチームは今の「イラン国家」を支持していないことをこの行為で世界に示したのでした。

スポーツは基本的にそうなのでしょうが、サッカーは特に庶民に結びついていますからね。政治というよりは、「人々の生活の有り様」からサッカーだけを切り離すということは土台無理なことなのでしょう。

今回はアイスランド代表は予選を通過できませんでした。そういうこともあり「オイラは今回は一試合も観るつもりはない」という人も周囲にちらりほらり。「こうしなければいけない」となってしまうと、それはそれで問題でしょう。私は日本を応援しますし、サッカーの試合そのものを批判するつもりはありません。

ですが、カタールでの開催を決めたことを含めて、FIFAは「ハルクにぶっ飛ばされろ!」です。


*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。

藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com

Church home page: Breidholtskirkja/ International Congregation
Facebook: Toma Toshiki
コメント (2)
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