レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

アイスランドお医者さん事情

2014-09-28 05:00:00 | 日記
今日はアイスランドのお医者さん事情です。まず始めに、ごくごく簡単にここでの医療の仕組みの見取り図を示してみます。ここではいわゆる「ホームドクター制」が取られています。国民は自分がどこに住んでいるかによって、その地域の「健康管理センター」に登録されます。

レイキャビクでは多分それぞれの健康管理センターにふたりくらいのお医者さんがいるはずと思います。そしてその中のひとりが住民である特定の個人のホームドクターになるわけです。これは調べたわけではありませんが、その人の家族は皆同じドクターに診てもらうようになっているはずです。

ですから、誰かが流感にかかったりお腹の調子が悪かったりすると、まずこのホームドクターの予約を取って診てもらう必要があります。ところがこの予約がなかなか取れず、「空いている時間は二週間先です」とかいう事態になることさえあります。

患者さんが深刻な状態だったり、事故にあったような場合は国立大学病院にある「急患受け付け」へ行くことができます。それでもずいぶん待たされる人もいるみたいですが。

国立大学病院には、ホームドクターの様な「何でも屋」ではない専門の科と専門医がいます。この病気はホームドクターでは無理だ、と始めから考えられる場合は直接専門医に行くことも可能ですが、原則に従ってホームドクターに差し戻されることもあります。ただそのまま診てくれることもあります。

さて、今日の本題ですがズバリ「医者不足」です。現在アイスランドには1.100人のお医者さんが働いています。その内640人が五十歳以上。さらにその640人の内303人は六十歳以上です。五年以内に135人が退職する予定となっています。

これに比して四十代のお医者さんは250人で数が落ち込んできます。三十代は136人でさらにぐっと落ち込みますが、特に三十五から三十九歳というのは僅かに52人しかいません。一番若い分類の二十四から二十九歳も少なく、78人です。

この数字から見て取れるのは、年齢が若くなるにつれてお医者さんの数が少なくなっている傾向があるということです。実はこれは外国に行ってしまうお医者さんが多いからなのです。

2009年から2013年の五年間には330人のお医者さんがアイスランドに「ブレスブレス(バイバイ)」をしてしまいました。逆に同期間に帰って来たお医者さんも140人いましたが、全体では190人のマイナスです。一年に換算すると38人ずつお医者さんが国を離れていることになります。

もう少し細かく見てみると、同五年間に医者の免許を取得した人は230人。そしてその内の90人が国を離れてしまっています。まさしく教育を終えたらすぐに出て行ってしまう、の感がありますね。

これに加えて、先に述べた定年退職で辞めていくお医者さんもいるわけですから、今後医者不足に拍車がかかるのは間違いありません。モルグンブラウズ紙の計算では、現在国民295人当たりに医者がひとりいるという割合が、今後十年間では国民390人につき医者がひとりという割合に向かっていくそうです。

で、若いお医者さんがなぜ国外へ行ってしまうかというと、やはり労働環境が良くない、特に給料が安いということなのです。

2008年の経済崩壊以来、政府の保健衛生行政に関する予算分配がのきなみ削られて来ました。当然スタッフ数も給料も減り、逆にスタッフ一人当たりの労働は増してきました。加えて、看護師さんも含めてですが、人の生命を直接扱っているという責任の重さは軽減されません。

肉体的にも精神的にもへとへとになるのに給料は見合ったものがもらえない。これでは外国に目が向くのは無理からぬことでしょう。先に示しました年齢別の数の違いの中で、三十五から三十九歳のお医者さんが52人と極端に少なかったですね。想像するには五年前の経済恐慌時に三十代前半だった人たちが国を離れたのと、子供が生まれたりして生活にかかりがする人たちが出て行ったのではないでしょうか?

新卒のお医者さんたちの基本給は約36万クローネとのこと。大学卒の人たちの平均収入が月54万クローネですから、本当に若いお医者さんたちの給料は安いのです。

アイスランド医師協会の会長さんであるソルビョルン ・ヨウンスさんの話しでは、「医者の労働環境を周辺国並の状態にするように国が努力をしないなら、本当に未来はなくなる」と述べています。

医学部の四年生から六年生は実際にインターンとして治療現場に立ちます。彼らも給料をもらいますが、これも薄給。医科学生協会の会長さんのラグンヒルドゥル・ホイクスドティールさんの話しでは、「きちんとした教育と労働の対価としての給与がもらえないなら、来年卒業予定の48人の六年生はみんな外国へ行ってしまうだろう」と昨日(二十六日)のニュースで語っていました。

医療現場はチームですからねえ。医者だけ条件が良くなれば、というものでもないでしょう。行政は何を考えているのか?と疑ってしまいます。確かに経済効果のない分野ですが、健康は人間生活の基本中の基本ですからね。きちんとこれからの青写真を示して欲しいものだと思います。

これもホントのアイスランドですよ。ちょっとコワッ!


まだまだ凄い。国営放送の火山の英語情報はこちら。


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寒い国から来たマグロ

2014-09-21 05:00:00 | 日記
最近、新聞でマグロ漁についての記事をよく目にします。どうも秋がマグロ漁のシーズンであるためのようなのですが、加えてお寿司人気に付随してマグロという魚を獲ることが注目を浴びるものになっているようです。

こちらに長いこと在住している邦人の方々にとっては、以前からマグロ漁は関係のあるものでした。遠洋漁業でスペインから出発した日本のマグロ漁船が、大西洋を北上してアイスランドで補給をするからです。

この時、漁師の皆さんは病院とか歯医者に行く必要があることもあります。その際に通訳をしてあげたりするのが常だったのです。私も渡氷(アイスランドに来ること)して間もない頃、何度も病院への付き添いをしたことがあります。今も日本の漁船が来ているのかどうかはわかりませんが、私自身はここ数年は関係していません。

マグロ漁船はここからカナダへ向かい、確かメキシコ辺りまで南下していくと聞いた覚えがあります。「自宅にいるのは年に二ヶ月」「家を新築したけど、まだほとんど寝たことがない」などという話しを漁師の方から聞きました。私の常識からは信じられない世界。

ところが最近はアイスランドの漁師の皆さんの活躍がよく報じられます。今月の六日のモルグンブラーズ紙に、ちょっと面白い地図入りの記事が載り、マグロ漁の様子を伝えています。

それによると九月三日水曜日の夜にヨハンナ・ギースラドティール号という漁船が21匹のマグロを捕らえました。このヨハンナ号は(「ヨハンナ丸」というべきなのかしら?)延縄(はえなわ)漁でマグロを捕らえます。延縄漁というのは長―いワイアのような線に仕掛けがいっぱいついていて、それを海の中に放っておいてから引き上げて行く、という漁ですね。

ヨハンナ号は四本の延縄を使うらしいのですが、漁場がクジラ漁の場所と交錯して苦労したと書いてあります。で、明るいうちに延縄をしかけて海に沈める。夕方の六時くらいから引き上げ始めるのだそうですが、引き上げ終わるまでに八九時間かかるとのこと。




ヨハンナ号のマグロ漁の軌跡 ここの海から30時間で築地へ
Myndin er ur Morgunnbladid 6.sep.2014


今回の漁場はウェストマン諸島の南沖40マイル(約64キロ)だそうです。最後の一匹が船にあげられたのが水曜の夜22時10分。そこからヨハンナ号はウェストマン諸島の港へ直行します。待っていた別の船が21匹のマグロを受け継ぐと、一路国際空港のあるケフラヴィクへ。

木曜の午後には空港にマグロは着きました。そして木曜夕18時頃の飛行機で東京へ。今回はどうもチャーター便でお客さんを乗せてきた日本航空の帰りの便だったらしいです。

そして無事に築地着がおおよそ12時間後。Visirという漁の元締めのような会社の社長ピエトゥル・パウルソン氏の話しでは、これだけスムースにアイスランドで獲れたマグロが日本へ送られたのは「新記録」だそうです。

こうして築地に陸揚げされた「アイスランド産マグロ」は平均でキロ5.600クローネで取引されたと誇らしげに書いてあります。日本円だと5.000くらいですね。150キロあるとして75万円ですか?マグロにしては安いんではないかと思うのですが... 専門外です、スミマセン。

専門外といえば、大体アイスランドの漁業についてそのものが専門外です。で、こちらの漁業には「クヴォータ」という獲っていい量の割り当てがあります。先ほどのVisirのような元締めがクヴォータを持っています。

ここで余談です。クヴォータを持っている人、つまり有力な漁民のところにはお金が流れ込みます。家を買う時に普通の人はある額を現金や小切手で用意し、はるかに大きな割合をローンで賄うのが普通です。

でもクヴォータを持った人は「二千万?はい、これ」と言ってポケットから札束を出して払った、とか。真偽のほどは不明ですが、あちこちで聞きますので、それに近いものはあるようです。

もとに戻ってアイスランド人のマグロ漁自体のクヴォータは30トンだそうです。これはノルウェーなど周辺の国々との取り決めです。先ほどのVisirはこのうち25トンのクヴォータを持っているそうです。ヨハンナ号などがすぐれた延縄船であることが理由のようですが、配下には全部で七艘くらいの漁船があるようです。ヨハンナ号だけで今年は100匹を穫っていると書かれています。

全部を合わせて九月十日の時点で30トン中14トンを水揚げしているとのこと。まだ半分ですね。

割り当て30トンのうち、Visirが持っている25トン以外のあとの5トンは一本釣り用の割り当てだと新聞には書かれています。ほとんど何の成果もない、とも書いてあります。




ハルパへ送られたマグロ みんな嬉しそう
Myndin er ur Morgunnbladid 9.sep.2014


穫れたマグロが全部日本へ行くわけではありません。先日「ハルパ」という新名所のようになったコンサート会場にあるレストランで穫れたてマグロが解体されて食されたとか。

それでもワタシが目撃するマグロは、スーパーの「Sushiパック」の中にたまにお見かけする赤いものぐらいです。庶民の運命かなあ?美味しい部分はいったいどこのどいつのお腹に納まっているのでしょうか?

最後になりますが、火山情報です。ここ一週間は勢いが大分衰えてきています。しかしまだまだ終息にはほど遠いようです。二酸化硫黄(亜硫酸ガス)に対する注意報も繰り返し場所を変えて(風向きによって)出されています。昨日の土曜日からはレイキャビクまでガスがやって来ています。幸い濃度は低いですが。

これからアイスランドへ旅行を予定されている方は、英語情報で火山関係の状況を掴んでおかれることを強くお勧めします。

国営放送RUVの英語版火山情報



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アイスランド、この一週間の諸々

2014-09-14 05:00:00 | 日記
先の六月の中旬からブログの更新を週一回にしています。当初はやむを得ない事情があったのですが、今は「週一の方がゆとりを持って長目に書けていいかな?」という気持ちの方が主たる理由になっています。もう少しこのペースでいきます。

ところが週一更新で困るのは、やはり扱えるトピックの数がとても限られてしまうことです。八月の終わりから九月にかけては新年度なので、いろいろなことが起っているのですが、火山に終始してしまいました。今日は火山も含めて、こちらでホットな話題をみっつほどご紹介します。

まずは税金です。秋のアルシンキ(国会)が招集されました。それに先立ち2015年の予算案が発表されました。その中で付加価値税(こちらの言葉ではVASKと示されます)の税率の変更が謳われています。

北欧の税金が高いことは良く知られていますが、現在のVASKは25,5%もあります。1.000クローナの商品を買うなら1.255クローネ必要になります。多くの場合、VASKは価格に含まれて示されていますので自分で計算する必要はありませんが。

ただいわゆる生活必需品とされるものは、低税率グループとして7%のVASKが適用されます。食品、新聞雑誌、アイスランド語の書籍、ホテルの宿泊などが含まれます。つまりVASKは高税率(というか一般税率)グループと低税率グループに二分されているわけです。

新予算案に伴う税率変更案では、高税率グループの税率を1,5%引き下げて24%にし、低税率グループの税率を5%引き上げて12%にすることがいわれています。見込みでは高税率の引き下げで80億の税収減、低税率の引き上げで110億の税収増になるのだそうです。

この変更が実施されるとして、国民にもろに関わるのは食料品の購入のための支出の増大です。平均して年40.000クローネ、収入が平均より下の世帯では年に35.000クローナの支出増になると計算されています。当然庶民からは批判が吹き出しています。

「マイナスだけではない。テレビや冷蔵庫などは安くなるんだ」という説明をするビャルトゥニ・ベネディクトスソン財務大臣ですが、一般の人がテレビや冷蔵庫を買うのは十年に一回程度でしょう?食品は毎日のように買わなければならないんですが...

財務大臣は独立党の党首ですが、政権連立のパートナーである進歩党(という名前の保守党)の議員の間にもこの税率変更に首をかしげる人が多いようです。どうなりますやら。


次はツーリスト関係です。今年の始めから数えて、 国立大学病院にお世話になった外国からのツーリストの数は252人で新記録とのことです。これは入院患者だけで、入院日数は1.406日にも達するとのこと。去年は同じ時期で154人、976日なので確かに大幅増ですね。

入院はしなくて外来だけの人はというと、八月の終わりまでで2.590人、通院数は4.853回!とのこと。このうち1.719人は七八月の時期に来院しているということですから、七割弱は夏の観光者ということになります。夏も舐めてはいかんぜよー。

感染予防課の医師のオーラブル・グビューズロイグスソン氏の話しでは、外国人ツーリストが病気で入院する場合、過去六ヶ月以内に外国での入院歴がある場合、必ず個室に隔離され伝染性のウイルスを保菌していないかどうかの検査を受けなくていけないのだそうです。

これは実はアイスランド人の病院利用者にも大きな影響を持っています。個室をそれだけツーリストにあてがわれてしまっては、自分たちの利用する病室が無くなってしまうからです。ただでさえ病室不足がいわれていますからねえ...

また病院事務局の話しでは、外国のツーリストの場合は保険の関係などで書類仕事が倍増して大変なのだそうです。

ツーリストの方も好きで来院するのではないと思いますが、くれぐれも滞在中の健康管理と怪我をしないように気をつけていただきたいと思います。




勢いを増したホールフロイン地帯での噴火
Myndin er ur Visir.is: eftir Egil Adalsteinsson


最後に火山です。ここのところ噴火の勢いが強まり、溶岩は時に地上百メートル以上にも吹き上げているとのことです。バウルザーブンガ氷河の地盤沈下も依然進んでいるようです。

さらに噴煙もとても強くなっています。噴煙は主に東海岸の方向へ流されていっています。噴煙には二酸化硫黄(亜硫酸ガス)が含まれています。空気中の二酸化硫黄の計測が、一時は一立方メートル当たり4.000マイクログラム近くまで上がりました。

新聞の解説によると、二酸化硫黄は一立方メートルで3.000マイクログラムの濃度になると「相当に危険」なのだそうです。レイザーフョルズルという町を含むオイストフィルジルと呼ばれる東海岸のフィヨルド地帯では、一時「家の中に留まり、窓なども閉め換気扇も使わないように」という警告が出ました。

風向きなどによって、空気中の二酸化硫黄の濃度はかなり急速に変化するようなので、付近の住民の人には「よーく注意報に気をつけているように」と呼びかけられています。

これはツーリストの人にも影響があるでしょう。東海岸を通過できないとしたら、相当旅行ルートを制限されてしまうと思われますから。噴火、もう飽きたから早く終息して欲しいものです。

近々観光に来られる予定の方がありましたら、くれぐれも注意報にPay attention! してください。

国営放送RUVの英語版の火山関係ニュースはこちら


なんか「今週の出来事」的になってしまいました。ニュースを紹介するだけというのは実は楽なんですけどね。自分の思いが入らないと書いていても他人事、という気になってしまいます。ま、たまにはいいか?(^-^;


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獲らぬタヌキの...火山ツアー?

2014-09-07 05:00:00 | 日記
さてしつこくもう一回火山についてになってしまいました。ちょっと飽きられるかなー、と心配でもあるのですが、今起っていることなのでやはり引きずられてしまいます。

八月の中旬を過ぎた頃から継続的な地震が観測され火山活動の活発化が警戒されていました。月末の二十九日の夜についに噴火が始まりましたが、 ヴァトナヨクトゥル氷河からは北側に外れてくれたために、非常に心配されていた洪水の心配はひとまず納まってくれたのでした。

この噴火、前回に写真もアップしたので分かっていただけると思いますが、遠くからみると非常にきれいでほどよい噴火?となりました。もちろんそれでも噴火は噴火ですので、近寄ることは危険です。噴火地帯に至る山道は北側からも南側からもクローズになっていました。

噴火直後は「この程度か」という楽観ムードが流れたのですが、専門家は「まだまだ」と釘を刺しました。さすがは専門家、三日もすると噴火は激しさを増し溶岩の吹き上げる様は高さを増したのです。これは前回にビデオのリンクも付けた通りです。

専門家集団の予測では一致して「噴火がいつまで続くのかは予想できないが、かなり長く続くことは間違いない」

ところがこの勢いを増した噴火もそれなりに美しく、火山灰は激しく吹き上がっているものの、2010年のエイヤフャトゥラ山の時のような度し難いものでもありません。遠目で見ている分にはやはりかなりきれいな自然現象に思われます。十分な距離を保てば危険でもなさそうです。

これに目を付けたのが観光業界です。火山地帯に近づく山道が封鎖されているために、ツアー客はいくつかの人気スポットを断念せざるを得ません。正確な額は書き留めるのを忘れましたが、観光業界には一日あたり相当な額の損失が出ているとのことなのです。

九月二日のニュースでは「観光業界が火山見学ツアーをプラン中」と報じました。あっちがダメならこっちで儲ける、というさすがヴァイキング根性です。確かに噴火の程度がそこそこで安定しているのであれば、このツアーは当たるだろう、と私も感じました。

ところがです。先の金曜日(九月五日)の朝、ほとんど何の前触れがなかった状況で、今までの烈状噴火の亀裂地帯から南東に離れたところでも、平行した二本の亀裂が現れ溶岩が噴き上げ始めてしまいました。




先の金曜日に出現した噴火亀裂 左後方は従来の噴火地帯
Myndin er ur Ruv.is eftir Hauk Snorrason


この新しい烈状噴火はその長さは700メートル程度で、従来の噴火亀裂よりはかなり小さいのは写真で見ても分かります。ただ、その南端の端が ヴァトナヨクトゥル氷河の北端部でもあるディンギュヨクトゥル氷河からわずか二三キロしか離れていないのです。

この新噴火で事情は一変してまたハイアラートの状況になってしまいました。溶岩がディンギュヨクトゥル氷河まで流れることは十分に考えられますし、そうなると再び洪水の心配が出てきます。さらに恐ろしいのは、また新しい噴火が氷河下で起ることです。そうなると洪水は必至となってしまいます。

一度は緩くしようか、と考えられていた山道の規制もまた完全封鎖になってしまいましたし、ニュースによると常時130人体制の観視を昼夜を問わず行うということです。

さらに今夕のニュースによると、火山活動が始めに観測されたヴァトナヨクトゥル氷河北西部のバウルザーブンガという地域では、地盤がなんと15メートルも沈下していることが観測されたとのことです。これは観測史上最大の沈下だそうです。専門家がこの沈下は一連の地震と溶岩の噴出に関連していることだけは確認していますが、それ以上は観測を継続し分析しないと分からないようです。「つまり氷河は15メートル低くなったということです」とアイスランド大学の地質学教授マグヌス・トゥーミさんはコメントしています。山って低くなるんだー?

今、これを書いているのは九月六日の夜ですが、この先どのように展開するのか多少心配でもあります。

国営放送RUVの英語による火山情報はこちら


いずれにしても「火山見学ツアー」は「獲らぬタヌキの皮算用」で当初の思惑通りには行かないようです。それで諦める観光業界とは思えませんので、必ず新手を見出すでしょうが。

それにしても、あの溶岩を見ていると「もったいない!」という気がしてしまいます。あれだけのエネルギーが勝手に生まれているんだから、あの熱をどこかに蓄える術はないのでしょうか?

あの熱をパックして日本へ送れたら東京中のお風呂を一冬涌かすことができるんじゃないかと....
くだらないワタシでした... m(_ _)m


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Septemberと噴火した火山

2014-09-01 04:00:00 | 日記
九月になりました。もうラジオから竹内まりあさんの「September」は流れないのでしょうか?相当古い話しですね、スミマセン。(^-^;

ヨーロッパやアメリカを始めとする多くの国々で一般的であるように、アイスランドでも新年度は九月より始まります。仕事一般もそうですし学校も同じです。もう少し正確に言うと、小中学校などはすでに八月の二十日あたりから始まっています。夏休みモードからしぶしぶ学業・就業モードに切り替えなくてはならないのは子供も大人も同じです。それがそう簡単には切り替わってくれないのも子供も大人も同じでしょう。

そういう新年度の頭の諸々を書こうと思っていたのですが、今回はやはり前回の続きで火山活動の話しになってしまいます。

まずは火山です。前回相当なアラートモードにある、ということをお伝えしました。ずいぶん来るか来ないかの状態が続いたのですが、こちらの時間で先週の金曜日の深夜からついに噴火が始まりました。

噴火といってもひとつの火山が大爆発という画ではなく、縦に裂けた地表の割れ目から溶岩がちらちら覗いている、という感じです。それほどものすごい噴煙も出ていませんでした。

場所はヴァトナヨクトゥル氷河から北へ外れたホールフロインという原野です。フロインHraunというのは「溶岩」のことですので、もともと溶岩地帯である場所です。確かにいくつもの火山に囲まれてるし。

火山活動による地震は一番始めには氷河の北西部にあるバウルザーブンガというところで始まったのですが、それから一週間をかけて震源は北に向けて徐々に移動して行ったことははっきりとニュースの地図上でも説明されていました。

噴火が氷河をはずれてくれたおかげで、あれほど心配された洪水は今のところ回避できているようです。

で、金曜日の噴火はあれだけ警戒されていた割りには小規模で、しかも氷河をはずれたこともあって、専門家でない一般の我々はその夜には「もう終わったかー」感がありました。

ところがニュースでの専門家の話しでは「バウルザーブンガ地帯の火山活動は以前活発に続いている。いつそちらが噴火しても不思議はない」と楽観ムードに釘を刺しました。

さすがに専門家。(ちなみに専門家の中にはとてもチャーミングな妙齢の女性もいます。どういうきっかけで地質学者になったのか訊いてみたいです)土曜日には引き続き700回の地震が計測され、さらに土曜の晩から日曜の朝にかけては1200回の地震があったとのこと。そして一時は「このまま終息か?」と思われたホールフロインでの噴火は、日曜日に再び薪をくべたかのように勢いを取り返してしまいました。




写真で見る分にはきれいな烈状噴火と溶岩
Myndin er ur RUV.is Eftir Armann Hoskuldsson(Institute of Earth Sciences)


今回は溶岩そのものも激しく吹き上げていますし、噴煙も70メートルくらいまで届くこともあるようです。

日曜日正午あたり(アイスランド時間)の噴火の様子はこちら
*リンク先画面の下方に動画があります。

ニュースによりますと火山灰はかなり広範な地域に降っているようで、2010年の時のエイヤフャトゥラ山の火山灰に比べれば大したものではないものの、酪農家等への被害が心配されています。

酪農家の皆さんですが、ここ数年は本当に踏んだり蹴ったりの厳しい現実でしょう。前回の火山灰。加えて冬には大雪(特に北部と東部)で羊に被害が出たり、夏は連続冷夏で日照時間が少なく牧草が成長してくれず、冬用の干し草が不足し輸入しなければならないようなのです。

金曜日の噴火当初は、航空機の飛行に関してもアラートが最大に上がったのですが、その後下げられていますし、今現在(日曜日の夕)ではフライトに大きな影響が出ている、というニュースは伝わってきていません。

火山の溶岩が列に並んで見え隠れするビデオは、特に夜間のものはきれいなのですが、実際に噴火が与える様々な方面への影響を考えると、ぜひともこれ以上激しくならずに終息して欲しいものです。

旅行予定の方がありましたら、ぜひ英語ニュースで引き続き情報をアップデートしてくださいね。

国営放送の英語での火山情報はこちら


最後にひと言です。
このブログ、先の8月26日で三年目に突入しました。マイナーなブログなので、存続は皆さんが読んでくれることにかかっています。ヨロシクです。(*^^*)


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