レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

北の光の科学 ノルズルリョウス

2013-10-31 05:00:00 | 日記
オーロラについてもう一回。前回はオーロラにまつわる伝説や俗信についてでしたので、今度は多少科学的なアプローチです。

オーロラ発生のメカニズムについては、いまだ未解明なところもあるとしても大まかな点は説明できるようです。もっともワタシなどが理解できるのはその中でも科学に至る前の常識の段階だけですが。

寒いイメージの強いオーロラですが、その発生の源は熱い熱い太陽にあるとのこと。太陽の内部は燃えたぎる原子炉のようなもので壮大な爆発を繰り返しているのですが、爆発により磁場が表面を突き破るといわゆる黒点が生まれるのだそうです。

この太陽の黒点活動は十一年周期でピークを迎え、ピーク時のことを太陽活動極大期といいます。黒点活動が激しくなると(ということは表面を突き破るような爆発活動が激しくなると、いうことだと思うのですが)、何十億という荷電粒子が太陽風となって太陽から流れ出します。

この太陽風は毎秒300キロから1000キロという凄まじいスピードで進み、二三日後には9300万キロ離れた地球に到達します。

地球に到達した荷電粒子は地球の磁場を突き抜け、今度は極地の周りの磁場の線に沿って電離層に誘導されて行きます。そして地上80キロから500キロの地点で電離層のガスと衝突します。衝突された際にガスが光を発生しオーロラとなって見えるわけです。

で、これはすでにワタシの理解を超えてしまうのですが、オーロラを作る太陽風は地球の地軸や磁場と関連しているので、北極、南極という極地地方でより多く観測される、ということになるのだそうです。

北半球のオーロラゾーンは北スカンジナヴィア、アイスランド、グリーンランドを通ってカナダ、北シベリアまで続いていきます。




南半球のオーロラオーヴァル
Myndin er úr solarsystem.nasa.gov


ということで、太陽によってエネルギーを与えられ、磁場によって誘導された太陽風によって極地周辺に作られるオーロラは、アイスランド人にとってはまさしく棚からボタ餅的な天の恵みであるわけです。なにしろ何にも管理も手入れもしなくていいのに、観光客を呼び寄せるのですから。

前にも一度書いたことがあるのですが、ワタシはオーロラについてはほとんど思い入れがない男です。故郷の八王子では、ワタシが幼少の頃は秋や冬には富士山がよく見えたものです。富士山は毎日見ても飽きませんでしたが、オーロラは10分が限界です。

寒い思いをしてわざわざオーロラ・ツアーのバスに乗り込んでいくツーリストの方々も多いのですが、不思議なものです。ついでに言うとスキーに行く人もワタシの理解を超えています。寒いところへ行くのは嫌なのです。

とはいえ、わざわざ遠くからオーロラを期待して来る人があるのなら、是非見てもらいたいものだ、とは思います。今月の始めに甥夫婦が遊びに来てくれ、オーロラを期待していたのですが、あまりオーロラ日和ではありませんでした。地上は100%の快晴だったのに太陽風の「凪」にぶつかってしまったようです。

現在ではオーロラ予報もすっかり定着しつつあります。太陽風の流れがかなりきちんと測定 ・予想されるようで、アイスランド上空でのオーロラ活動強度が予報されています。(この予報図の見方、ワタシは早とちりをして何人かの人にウソを教えてしまいました。ゴメンナサイ。ここに書くことの方が正解です。 m(_ _)m )


オーロラ活動予報と快晴度予報図はこちら

このページの右上に並ぶ0-9までの数字がオーロラの活動強度予報です。0が一番弱く9が最強なのですが、説明によると5とか6とかになることは滅多になく、逆に2とか3程度でもオーロラ観測は十分に期待できるのだそうです。中央の快晴度予想図の下には向こう五日間の日にちを選ぶ欄がありますので、そこを動かせば少なくとも五日先の日までは、オーロラ活動の強弱の予報を知ることが出来ます。

さて、オーロラ観測の大敵は雲です。中央にある快晴予報図は、実は曇り予報と言った方が適切です。雲の高さによって予報が区分されているのですが、一番手っ取り早いのが緑色の予報図で、これで緑が濃い地域はどこかの高度に雲がかかっていることになります。真っ白なら快晴。今日を含めての六日間の予報が時間を追って確認できます。

ということで、オーロラ活動予報が2以上での日に、快晴予報図で白い地域に行けばオーロラが見れる可能性が強いわけです。これでばっちりオーロラ見学の予定が立つというものです。おそらくオーロラツアーの業者さんはこの方式で観光客の皆さんをあちらへこちらへと連れ回しているのだろうと想像します。

今アイスランドにいらっしゃる皆さん、またこれから来てくださる皆さん、もはやオーロラ遭遇は運任せではありませんよ。現代科学の端末を利用してオーロラに接近して下さい!

とはいえ、地上の天気は運任せの部分が多いか?心がけもよくしておいてください! (^_-)☆


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ノルズルリョウス 北の光の伝説 

2013-10-28 05:00:00 | 日記
今回はオーロラについての蘊蓄を少々。ウンチクといっても又聞きしたことを並べるだけですが。

オーロラはアイスランドではNordurljosと呼ばれます。「ノルズル」は北、「リョウス」は光ですので「北の光」ということになり、これはまんまですね。

これに対して「オーロラ」という言葉はローマ神話の曙の女神アウロラから来ているとのことです。

オーロラは地球の地軸の極に関連して発生しますので、北極や南極の周辺でよく見られることになります。北極周辺のものを「オーロラ・ボレアリス 」南極周辺のものを「オーロラ・アウストラリス」と呼ぶこともあります。「ボレアリス」はラテン語での北、「アウストラリス」は南です。

実はオーロラは赤道に近いような緯度の低い土地でも観測されることがあるそうで、その際にはオーロラ活動の上部層の赤い色の部分が見えることが多いのだそうです。

面白いのは旧約聖書の外典(カトリックでは第二正典)である第二マカバイ記という書物にもオーロラのこととおぼしき記述があるのです。これは紀元前二世紀頃の中東地域での出来事です。

「そのころ、アンティオコスは再度のエジプト攻撃の準備をしていた。折から、全市におよそ四十日にわたり、金糸の衣装をまとい、槍と抜き身の剣で完全武装した騎兵隊が空中を駆け巡るのが見えるという出来事が起きた。すなわち、隊を整えた騎兵がおのおの攻撃や突撃をし、盾が揺れ、槍は林立し、投げ槍が飛び、金の飾りやさまざまな胸当てがきらめいた。そこで人は皆、この出現が吉兆であるようにと願った」(2マカバイ5:1-4、日本聖書協会新共同訳)

昔の人は想像力が豊かだったんでしょうね。ここでは色が赤とは記されていませんでしたが、一般には赤い色のオーロラというのは血を連想させたようで、不吉な前兆という迷信をあちこちにもたらしたようです。




先日、家のベランダから撮ったオーロラです


北欧のオーロラは普通には緑色っぽい輝きですが、北欧神伝説ではこれは夜空を駆け回るワレキュールたちの甲冑の輝きとされているそうです。ワレキュールとは天女のような存在で、戦で傷ついたヴァイキングたちをヴァルハラ(戦士の魂の宮殿)で休ませるために駆け回っているのです。オーロラがこの世と天の国の境目と考えられていたようです。

オーロラにまつわる伝説や迷信はこの他にも枚挙にいとまがないのですが、もう少しご紹介しましょう。

まずはオーロラの「音」です。昔からオーロラの音を聞いた、という申し立ては多いのだそうですが、実際に録音に成功した例はないそうです。科学者たちもオーロラの音については懐疑的だということ。

北欧の漁民の間に伝わる伝承では、オーロラは北海を泳ぐ大量のニシンが太陽の光に反射したもので、これは大漁の良い兆しだとされました。

スウェーデンの田舎の俗信ではオーロラは大地の豊穣の兆し。種が豊かにあり豊作をもたらすことを示しているとか。

北アメリカの北極圏に住むイヌイットの人々はオーロラの癒しの力を信じるんだそうです。彼らのシャーマンは治療の方法を授かったり、魂を死から守るための道を求めてオーロラへ向かうのだそうです。

また別のイヌイットの人々はオーロラを恐れ、子供たちをオーロラから隠すのだそうです。オーロラに遭遇した際にはナイフを振り回して対峙したり、また犬の糞を投げつけるのも効き目があるとか。

北スウェーデンのラップの人々は、オーロラを災いをもたらす力と考えて、特に女性を家の中に隠すのだそうです。もし外にいた場合は身体を包んで光が当たらないようにするとか。宇宙線よけみたいですね。

アイスランドでも妊婦の人がオーロラを見ると赤ちゃんが斜視になると言われていたそうです。

逆に中国ではオーロラは子宝を授けてくれるとされるとか。

まあこうして見てみると、やはり戦(いくさ)、大漁、豊穣、病気、子宝等々、伝説や俗信は人の基本的な要求や願いに関わるものが多いようですね。これだけ種類があると選択の幅も出てきそうです。

皆さんはどれを信じますか?
ワタシは...ワタシはあなたを信じます。(古!)


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ド素人ナレーター

2013-10-24 05:00:00 | 日記
アイスランドに暮らしていると、邦人である希少性の故に日本でなら経験できないような体験を色々とする機会があります。日本人であるというだけのために、様々な役割が勝手に廻ってくるのです。私の場合、そのひとつが「ナレーション」です。

何故かナレーションには男性が請われるということがあり、少ない邦人の中でも少数派である男性であるためにナレーションは何度も体験させてもらいました。

パッと思い出せるものは2005年の愛知万博での北欧館の中でのアイスランド紹介のビデオのナレーションです。これは話しが来てから録音までが三、四日という、チョウ短い準備期間でまいりました。

この時だけでなく大抵いつもそうなのですが、日本語の訳が英語からなされているために日本語で読み上げる文が長過ぎるのです。言葉というのは面白いもので、英語ならぴったりするような饒舌なナレーションは日本語では陳腐なものになってしまいます。

日本語のナレーションというのは基本的に、NHKの「大日本紀行」のようなのんびりゆったりしたテンポのものが自然だろうと思います。

この万博用のビデオ(DVD)の場合は、画面が変るまでにその場面のテキストを読みきれない、というくらいに長かったので相当削りまくりましたが、それでも間に合わず、かなりな早口になってしまいました。恥ずかしいできでしたがオレ知ーらない、です。(知らんプリ)

お土産用のDVDもふたつ担当しました。ひとつはアイスランドの観光スポットを紹介するもので、これは訳から担当しましたので事前に短く短くテキストを切っていきました。ただ読み方があまりうまくいかず噛みまくりました、アナウンサーじゃないし。(言い訳)

もうひとつのDVDはオーロラのもので、これはこちらに長く在住されていた女性の方が訳されたテキストを使いました。この方、まだ若かったのに癌で亡くなられてしまい、このDVDは何か形見の仕事のように思えています。ナレーションはいまいちですが映像は天下一品なので、機会があればぜひお土産にしてください。

この他にあと二回、アミューズメントのナレーションをしたことがあります。ひとつはストックスエリというレイキャビクから車で一時間弱の南にあるお化け屋敷(Draugasetur)です。

国内のいろいろなお化けの話しを集めてきたものジオラマのような感じで展示しています。その展示を見て回る際に、iPodのようなものでヘッドセットを使って解説を聞いていくのです。このお化けの話しはなかなか面白いものがあったので、いつかそのことだけでご紹介してみたいです。(訳したものを紛失してしまったので、細部を描写できないのです。困ったものだ)

そしてもうひとつのアミューズメントが、ボルガネスというこれもレイキャビクから一時間ほど西へ行ったきれいな町にある「ランドナウムスセートゥル」(Landnamssetur)という展示館です。ここでは紀元十世紀くらいからのアイスランドへのヴァイキングの入植の歴史を、これもジオラマ風に展示しています。

アイスランドの有名な古典文学かつ歴史であるサーガを元にしての展示で、これもいつかこれだけでご紹介したいですね。解説をiPod風なディバイスで聞いていくのはお化け屋敷と同じです。ここのナレーションでもいい間違いをひとつしています。もし訪れる機会がありましたら、間違い探しをしてください。(開き直り)

これらのナレーションは、プロではないとはいえそれなりに時間と労力を費やしますので何がしかの謝礼をもらいます。ただそれぞれに勉強になりますので、全般的に楽しいアルバイトではありますね。

最後にひとつ短ーいナレーションを紹介します。これはボランティアで「アイスランド脊髄損傷協会」に頼まれたPR用のコマーシャルでした。

アイスランド脊髄損傷協会のPR用ビデオ

日本人だ、というだけでこのように色々な役が回ってくるアイスランド。得をしたような気がすることもあります。退屈しないための生活上のアクセントにもなってるみたいです!(^_-)☆


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今もある「南と北」

2013-10-21 05:00:00 | 日記
前回、移住に関してEUとEU「外」の境の敷居が高い、というようなことを書きました。今回はそれに関連して心に浮かんだことを綴ってみたいと思います。

地球上の人の移住の動きについてはそれだけでひとつの専門の分野が学問としてあるのだそうです。移住というと私たちはおそらくすぐに移民労働者や戦災難民などを思い浮かべるでしょうが、例えばお金持ちがタックスヘイブンに移るとか、成功したアーティストが自分の活動に適した国へ移るとかいうことも恒常的にあるようです。

しかしそういうことを承知した上でも、人の流れは戦災地から平和な場所へ、貧しい場所から豊かな場所へというのが太い主流であると言って間違いではないでしょう。

先日、ネットで「世界まる見え! テレビ特捜部」という番組の何ヶ月か前に放映された分を見たのですが、その中でエルサルバドルからグアテマラを経てメキシコへ不法入国し、さらにアメリカを目指すカップルについてのミニドキュメンタリーをやっていました。

どこまでが本当でどこまでがテレビ用の粉飾なのかは分かりませんが、おそらく実際にそんな感じなんだろうな、と思わせられるものがありました。このカップルの場合は本国での貧困が密入国への動機だったようです。

メキシコ国境からの米国への密入国者の数が年間で62万人いるそうで、これはアイスランド国民総数の約二倍ですね。私が学生の頃によく言われた「南と北」はまだしっかりと存在するもののようです。

広大な陸の国境(一部は河のようですが)を有するメキシコ-米国とは異なり、アイスランドには陸路の国境がありません。イタリアのように海を挟んで短い距離に隣りの国があるわけでもありません。

北の海の孤島であるアイスランドにはいわゆる「密入国」を果たすことは難しいことでしょう。加えて人口が少ない上に国民総IDナンバー制を取っていることもあり、不法滞在者が隠れて生活することはほとんど不可能です。おそらく不法滞在の外国人の率というのは欧州一低いのではないかと想像します。

そんなアイスランドにも助けを求めて庇護申請者と呼ばれる人たちがやってきます。アサイラムシーカーです。庇護申請者は基本難民であるのですが、個人や家族などの少人数の単位で普通偽造旅券などを使って入国を試みます。

現在シリアの戦乱でシリア-ヨルダンの国境には難民が押し寄せていると報じられていますが、そのような「明らかな」難民と違い、庇護申請者は庇護を求める国の当局から「本当は犯罪者で逃げているのではないか」というようなうろんな目で見られてしまいます。

本来国連が難民(庇護申請者を含めて)として考えていたのは政治的、宗教的または人種的理由などにより、「国家から」迫害を受けているか受ける恐れのある人たちのことだったのですが、現在では部族間の争いや性的なオリエンテーション等による迫害等を含めて、より広い視点から難民を捉えるようになってきています。

私の仕事では、この庇護申請者の人たちとも定期的あるいは断続的に話しをしたりすることがあるのですが(申請の結果が出るまでには一年、二年という長い時間がかかることがあります)、確かに経済難民というか、よりよい仕事の機会を求めて来ている人たちも混ざっています。

経済的な理由での庇護申請は好ましいものではない、と私は考えています。それにより本来庇護を受けるべき人たちの問題の扱いが曖昧になってきてしまうからです。

しかしその一方で経済的な理由に基づく庇護申請者を悪く言う気持ちにも正直なれません。本当に度し難い貧困というものもあるようですし、そのような地域では「国を良くしよう」という気持ちを持つ個々人たちを貧困が飲み込んでいってしまうようです。

EUとEU外の間には越えがたい敷居がある、と前回文句を言いましたが、よくよく振り返ってみると自分自身もしっかりと「豊かな国」側の敷地に居座って、向こう側の「貧しい国の人々」の相手をしているような気がします。

「南と北」の問題は大戦後の1960年代から扱われ始め、1980年にブラント委員会が報告書「南と北」を出して南北の経済格差と個々人の安全保障について提言をした問題です。

決して過去の問題ではないですね。継続して考える必要があると思います。

「南と北」についての簡単な解説はこちら


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EU内 - EU「外」の壁

2013-10-17 05:00:00 | 日記
昨日のモルグンブラーズ紙に、今年のこれまでの九ヶ月間のアイスランドでの人の移住に関する記事が出ていました。ここでいう「移住」とはアイスランドから外国へ移って行くことと、逆に国外からアイスランドで移って来ることを意味します。

もちろん観光客はここには入らず、相当な期間を国外または国内で過ごす人たちが対象です。どのようにしてそれが分かるのかというと、基本的には「法定住所」の抹消(国外へ移住する場合)と登録(国内へ移住して来る場合)の統計によります。

この法定住所は海外も含めてひとり一カ所しか登録できない原則になっているので、人の移住の動きを測る上ではかなりしっかりとした根拠になります。もっとも季節労働者のように、本国の法定住所を維持しながらこちらへ来る人もありますので、それは何か別の資料で補足的に計算するのでしょう。機会があったら調べてみたいと思います。

さて記事によると今年に入ってからの九ヶ月間で海外へ移住したアイスランド人は2.570人、アイスランドへ帰ってきたアイスランド人は2.550人で、僅かに出て行った人の数がお帰り組を上回っています。

外国籍の人をみると、アイスランドへ移って来た人の数は3.060人、出て行った人の数は1.630人でこれは1.430人というかなりはっきりとした増加になっています。

詳しくもとの統計を見たわけではないので断言はできませんが(アイスランド人は統計好きです。これについては別の機会にまた)、外国籍の増加組の大多数はヨーロッパからの移住組と思われます。

アイスランドはEUには加盟していませんが(加盟申請はしていたのですが、喧々諤々の議論があり、今は加盟申請を休止しています。これについても機会を改めて)EEA(ヨーロッパ経済機構)には加盟しており、そこでの条約によって加盟国の市民は自由にアイスランドへやって来て働くことができます。もちろんアイスランド人がEEA加盟国へ行って働くことも可です。

このようにEUもしくはEEA内では「国境」の敷居はどんどん低くなっているのですが、逆にEUとEU「外」の敷居はどんどん高くなってきている感があります。実際に日本を含めてのアジアやアフリカ、アメリカ大陸からの移住を実現するには二重三重のチェックポイントをクリアしなければなりません。

移住を可能にするには「外国人法」が定めるみっつの条件をまず満たす必要があります。1)仕事があり自身の経済をまかなえること、2)始めの半年間をカバーする医療保険に入っていること、3)保健衛生の基準を満たす住居を確保していること、のみっつです。

保険や住居はさておいて、最大の山は仕事です。「職探し」はそれ自体困難なことなのですが、移住者が職を探すのは輪をかけて難しくなっています。

例えば日本人がこちらで就労ビザを得るには「入国前に労働許可を得ていること」が求められます。ところが労働許可を申請するには具体的な雇用者との契約書が必要になります。つまりこちらへ来る前に日本でアイスランドでの仕事の契約と許可を得ていないといけないわけです。

自分自身がその場にいない状況で職を得るというのは、ほとんど奇跡的なことだと思われます。あるいは取りあえず職探しで現地に行ってみるか?という向きがあるかもしれませんが、法律上は普通のツーリストビザでの職探しも禁止されています。まあ、これはかなりザル法でしょうが。

ところがこれだけではありません。先があります。空いている仕事はまずアイスランド人またはEEA内の労働者にあてがわれます。EEA外の市民に労働許可を発行できるのは、その当該職を管轄する労働組合から「アイスランド人またはEEA市民からはアプライがない」という承認が必要なのです。

ですからEEA外の人が就労できるのは、アイスランド人もEEAの人も就きたがらない仕事が残っている場合、ということになってしまうわけです。実際そのような仕事はいつでもあるようですが、日本と同じく3Kに類する仕事のようです。

もちろん労働許可の発行についての例外もあります。例えば高度な専門性を必要とする仕事をする人の場合で、スポーツ選手やコーチ、語学の教師、特定の民族料理のシェフなどがその代表でしょう。この場合は先に述べたような条件を飛び越して労働許可が発行され得ます。スポーツ選手は国籍も取得しやすいんですよね。これもどっかとよく似ている。

このようにEEA外からの移住を難しくしている規定は不公平な感じに思えるのですが、当該国とアイスランドという二国間で同等の権利が相互に与えられない限りは、変えることは難しいでしょう。

日本-アイスランドに限っていえば、アイスランドから日本へ怒濤のように労働者が流れて行くというような恐れは事実上ないでしょうから、特別に二国間協定でも結んでくれたらいいのにな、と考えちゃいます。双方とも益するところが多いと思うのですけどねえ...


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