十一月も末となり、アイスランドでは昨晩よりAdventaアズヴェンタと呼ばれる時期に入りました。クリスマス前の約四週に渡る期間で「待降節」とも呼ばれます。英語だとAdvent。

良いアドベントになりますよう!
このアズヴェンタについては、これまでも毎年のように書いてきましたが、今年はCxxxdの影響で、多少例年と異なる面がありますので、また来週にでも書いてみます。
今回は、とにかくこれまでエンチョーの連続で続いてしまった「緑の党」の思い出話しにケリをつけます。
これまで書いてきましたことは、私は十六、七年前に緑の党に入り、短い期間だったが積極的に活動した。が、ここ十年以上は単なる一般のサポーターでしかない。一方、万年小党だった緑の党は、経済危機以降支持を広げ政権にも参加、2017年にはついに党首のカトリーンさんが首相の座についた。
カトリーンさんは清廉さと庶民派のイメージを持ち、個人的人気は抜群。しかし、三党連立の政権の中で、緑の党は最大与党ではない。カトリーン首相も持ち味をなかなか出せずにいたのだが、コロナ危機を境にして、徐々に自分の個性を発揮し始めた、というようなことでした。
私が緑の党のサポーターでいるのは、環境問題、ジェンダー間格差の是正、一般的な人権問題などの基本的な考え方に賛同しているからです。それに、党の人たちが、まあ好ましい人物が多い、ということもありました。
その反面、私自身が関わりの強い移民政策や難民政策では、とりたててすぐれているとも考えていません。
過去十年間くらいのうちに、個別の難民(庇護申請者)のケースで、何度か緑の党の国会議員の助力を求めたことがあります。結果はたいした助けは得られなかったですね。
私が「一般のサポーターでいるのはいいけど、それ以上に何か党のために活動するのはゴメンだ」と、ベッタリから距離を取り続けたのは、そういうことも影響したのかもしれません。

気がつけば「清涼感アップ」は「寒さ倍増」の季節に
Myndin er eftir Jonas_Mendes@Unsplash
ところが、今年に入り、そういう「着かず離れず」さえ疎ましくなるようなことが出てきたのです。
それは「外国人法改悪案」。
もともと私が「政治参加も必要だ」と思い立ったのは、2004年の「外国人法改悪案」でした。やはり、私自身の仕事に直結する分野ですので、影響は大きいのです。
今年になって、二回、改悪案が国会(アルシンキ)に提出されました。二回ともほぼ同じ内容の法案で、提出したのは法務大臣です。
改悪案の中心は難民申請の分野に関するもので、特に「すでに第三国で『保護』を受けている場合は、申請そのものを無効とする」という点が含まれていました。まあ、それだけではないですが、それが「改悪の目玉」でした。
ご存知と思いますが、難民問題はヨーロッパでは大きな問題です。ギリシャやイタリア、ハンガリーなどには対処能力を超える数の難民が押し寄せており、難民の処遇は劣悪になっています。加えて当該国民の難民に対する悪感情も増加。
そういう中で、ギリシャやイタリアなどは「実質的な意味のない保護」を与えまくるようになりました。形式的に難民を保護している(ことになっている)統計をつくることでEUから援助金が得られるからです。
ですから、そういった国で「すでに保護を受けた」ことになっている人でも、事実として生き残るためには、さらに他の国へ助けを求めて出ていかなければならないことが多々あるのです。
アイスランドでは、過去数年間の間に、そのような背景を持つ難民申請者 –特に子供を含む家族の場合– が、強制送還の通告を受けるところまでいっていながら、一般市民のプロテストの故に滞在を認められる事例がいくつも生じました。
そういう事態が発生する場合、国として考えるべきことは、「なるほど、国民はそのように無下に難民を追い出すことを望んでいないのか。では、そのような事情を持つ難民申請について、もう少し公正かつ人道的に対処できるようにシステムを改善しよう」ということであるはずです。っていうか、「あるべき」です。
ところが法務大臣から出てきたのは「門前払い」案。この改革案が通過してしまうと、これまでのような「市民のプロテスト」による救済そのものが法的根拠を失い、「誰も何もできない」「してはいけない」ことが法律の中に入り込んでしまうのです。

なぜかホッとする苔
Myndin er eftir Kai_Gradert@Unsplash
アイスランド赤十字は、普段から国と仲良くするポリシーを持っており、なかなか歯切れの良い政策批判をしない組織です。(しんちゃんの声で:「オラ、赤十字に言いたいことは山ほどあるぞ」)
ですが、さすがにその赤十字さえこの改悪案に関しては、新聞やネットに批判するオピニオンを流したり、国会に意見書を送ったりしました。
改悪案の提出はコロナ前の二月が一回目。この時は早々に法案撤回。法務大臣にスキャンダルがあったのが影響したと思われます。ここで大臣交代。
二度目の提出はこの夏でした。Cちゃんの影響で社会はまだまだ混乱していましたし、国会運営そのものが、Cちゃん対策の臨時法案の山のために遅れに遅れていました。
そういうドサクサに紛れての改悪案再提出。提出者は前回とは別の法務大臣。スキャンダルで大臣を離れた前任者からは、ひとり代理大臣を挟んでの新大臣です。若い女性なのですが、これが、まあ前々任者に輪をかけたようなビxx。
ついでにはっきりさせておきますが、連立政権内で、これらの法務大臣は独立党の裁量下にあります。
私はちょうど、教会の中での難民問題に関する方針を作るために、五人の同僚牧師さんたちとワークチームを作っていました。この法案を見逃すわけにはいかないと、私たちも赤十字へ出向いて担当者と話し合い。
「まだ国会への意見書が間に合うわよ」と情報をもらい、教会のワークチームでも意見書を作成して国会へ送ることにしました。間に合うとはいえ、締め切りが迫っていたので、かなり集中してかかる必要がありましたね。
なんとか期限内でクリアし、せっかくだからその意見書を元にして、新聞(ネット版)にもオピニオンとして送ろう、ということになりました。長いので三分割にして、オピニオン三回分。
これはチームワークでしたが、私は私でもっと別な言い方をしたい、と思う点がいくつかありましたので、個人でもふたつのオピニオンを投稿しました。

難民問題に取り組む教会内でのワークチームの面々
Myndin er eftir sr. Solveig Lara Gudmundsdottir
こういうのはかなり消耗するプロセスです。教会の中でチームとして何かできるのは、まことにありがたい進歩です。が、一方でそのチームの最終責任を持つのはワタシ。
ここでは、意見書のことだけを書きましたが、実際は他の個人のケース等に際してのアシストやアピール –いずれも当局に対峙する内容になります– も、断続的に続いていました。「わたーしだって、わたーしだって... ツカレルわ」
で、ふと思ってしまったのです。「なんで、オラはオラの所属している政党の政権にこうも楯突かなくてはならないのだ?」
しばらく考えましたが、結論が出ました。やーめた! こんなに自分を疲れさせる緑の党は意味がない。出ていく時が来たようでした。
あー、また終わらなかった。話しの決着は、今週中に「臨時増刊」でつけたいと思います。
*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is

良いアドベントになりますよう!
このアズヴェンタについては、これまでも毎年のように書いてきましたが、今年はCxxxdの影響で、多少例年と異なる面がありますので、また来週にでも書いてみます。
今回は、とにかくこれまでエンチョーの連続で続いてしまった「緑の党」の思い出話しにケリをつけます。
これまで書いてきましたことは、私は十六、七年前に緑の党に入り、短い期間だったが積極的に活動した。が、ここ十年以上は単なる一般のサポーターでしかない。一方、万年小党だった緑の党は、経済危機以降支持を広げ政権にも参加、2017年にはついに党首のカトリーンさんが首相の座についた。
カトリーンさんは清廉さと庶民派のイメージを持ち、個人的人気は抜群。しかし、三党連立の政権の中で、緑の党は最大与党ではない。カトリーン首相も持ち味をなかなか出せずにいたのだが、コロナ危機を境にして、徐々に自分の個性を発揮し始めた、というようなことでした。
私が緑の党のサポーターでいるのは、環境問題、ジェンダー間格差の是正、一般的な人権問題などの基本的な考え方に賛同しているからです。それに、党の人たちが、まあ好ましい人物が多い、ということもありました。
その反面、私自身が関わりの強い移民政策や難民政策では、とりたててすぐれているとも考えていません。
過去十年間くらいのうちに、個別の難民(庇護申請者)のケースで、何度か緑の党の国会議員の助力を求めたことがあります。結果はたいした助けは得られなかったですね。
私が「一般のサポーターでいるのはいいけど、それ以上に何か党のために活動するのはゴメンだ」と、ベッタリから距離を取り続けたのは、そういうことも影響したのかもしれません。

気がつけば「清涼感アップ」は「寒さ倍増」の季節に
Myndin er eftir Jonas_Mendes@Unsplash
ところが、今年に入り、そういう「着かず離れず」さえ疎ましくなるようなことが出てきたのです。
それは「外国人法改悪案」。
もともと私が「政治参加も必要だ」と思い立ったのは、2004年の「外国人法改悪案」でした。やはり、私自身の仕事に直結する分野ですので、影響は大きいのです。
今年になって、二回、改悪案が国会(アルシンキ)に提出されました。二回ともほぼ同じ内容の法案で、提出したのは法務大臣です。
改悪案の中心は難民申請の分野に関するもので、特に「すでに第三国で『保護』を受けている場合は、申請そのものを無効とする」という点が含まれていました。まあ、それだけではないですが、それが「改悪の目玉」でした。
ご存知と思いますが、難民問題はヨーロッパでは大きな問題です。ギリシャやイタリア、ハンガリーなどには対処能力を超える数の難民が押し寄せており、難民の処遇は劣悪になっています。加えて当該国民の難民に対する悪感情も増加。
そういう中で、ギリシャやイタリアなどは「実質的な意味のない保護」を与えまくるようになりました。形式的に難民を保護している(ことになっている)統計をつくることでEUから援助金が得られるからです。
ですから、そういった国で「すでに保護を受けた」ことになっている人でも、事実として生き残るためには、さらに他の国へ助けを求めて出ていかなければならないことが多々あるのです。
アイスランドでは、過去数年間の間に、そのような背景を持つ難民申請者 –特に子供を含む家族の場合– が、強制送還の通告を受けるところまでいっていながら、一般市民のプロテストの故に滞在を認められる事例がいくつも生じました。
そういう事態が発生する場合、国として考えるべきことは、「なるほど、国民はそのように無下に難民を追い出すことを望んでいないのか。では、そのような事情を持つ難民申請について、もう少し公正かつ人道的に対処できるようにシステムを改善しよう」ということであるはずです。っていうか、「あるべき」です。
ところが法務大臣から出てきたのは「門前払い」案。この改革案が通過してしまうと、これまでのような「市民のプロテスト」による救済そのものが法的根拠を失い、「誰も何もできない」「してはいけない」ことが法律の中に入り込んでしまうのです。

なぜかホッとする苔
Myndin er eftir Kai_Gradert@Unsplash
アイスランド赤十字は、普段から国と仲良くするポリシーを持っており、なかなか歯切れの良い政策批判をしない組織です。(しんちゃんの声で:「オラ、赤十字に言いたいことは山ほどあるぞ」)
ですが、さすがにその赤十字さえこの改悪案に関しては、新聞やネットに批判するオピニオンを流したり、国会に意見書を送ったりしました。
改悪案の提出はコロナ前の二月が一回目。この時は早々に法案撤回。法務大臣にスキャンダルがあったのが影響したと思われます。ここで大臣交代。
二度目の提出はこの夏でした。Cちゃんの影響で社会はまだまだ混乱していましたし、国会運営そのものが、Cちゃん対策の臨時法案の山のために遅れに遅れていました。
そういうドサクサに紛れての改悪案再提出。提出者は前回とは別の法務大臣。スキャンダルで大臣を離れた前任者からは、ひとり代理大臣を挟んでの新大臣です。若い女性なのですが、これが、まあ前々任者に輪をかけたようなビxx。
ついでにはっきりさせておきますが、連立政権内で、これらの法務大臣は独立党の裁量下にあります。
私はちょうど、教会の中での難民問題に関する方針を作るために、五人の同僚牧師さんたちとワークチームを作っていました。この法案を見逃すわけにはいかないと、私たちも赤十字へ出向いて担当者と話し合い。
「まだ国会への意見書が間に合うわよ」と情報をもらい、教会のワークチームでも意見書を作成して国会へ送ることにしました。間に合うとはいえ、締め切りが迫っていたので、かなり集中してかかる必要がありましたね。
なんとか期限内でクリアし、せっかくだからその意見書を元にして、新聞(ネット版)にもオピニオンとして送ろう、ということになりました。長いので三分割にして、オピニオン三回分。
これはチームワークでしたが、私は私でもっと別な言い方をしたい、と思う点がいくつかありましたので、個人でもふたつのオピニオンを投稿しました。

難民問題に取り組む教会内でのワークチームの面々
Myndin er eftir sr. Solveig Lara Gudmundsdottir
こういうのはかなり消耗するプロセスです。教会の中でチームとして何かできるのは、まことにありがたい進歩です。が、一方でそのチームの最終責任を持つのはワタシ。
ここでは、意見書のことだけを書きましたが、実際は他の個人のケース等に際してのアシストやアピール –いずれも当局に対峙する内容になります– も、断続的に続いていました。「わたーしだって、わたーしだって... ツカレルわ」
で、ふと思ってしまったのです。「なんで、オラはオラの所属している政党の政権にこうも楯突かなくてはならないのだ?」
しばらく考えましたが、結論が出ました。やーめた! こんなに自分を疲れさせる緑の党は意味がない。出ていく時が来たようでした。
あー、また終わらなかった。話しの決着は、今週中に「臨時増刊」でつけたいと思います。
*これは個人のプライベート・ブログであり、公的なアイスランド社会の広報、観光案内、あるいはアイスランド国民教会のサイトではありません。記載内容に誤りや不十分な情報が含まれることもありますし、述べられている意見はあくまで個人のものですので、ご承知おきください。
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