レイキャビク西街ひとり日誌 (Blog from Iceland)

北の小さな島国アイスランドはレイキャビクの西街からの、男独りブログです。

当たるも八卦? アイスランドの天気予報

2015-07-26 05:00:00 | 日記
この間の木曜日に十五日間で三回目のホエールウォッチングに行ってきました。赤十字のボランティアで難民の人たちとのプログラムです。

二十七人の難民の人たちと三人の赤十字ボラで総勢三十名の参加だったのですが、今回は家族が多く子供が七名含まれていました。その中には二歳半と三歳半の姉妹も。それで多少気を遣いました。

前々回のブログでも書きましたが、二回目のクルーズは波が高かったために船が揺れ、船酔い続出という企画者としてはあまり嬉しくない事態が起こりました。今回は子供が多いということもあり、そういうことはなるべく避けたい、と...

Special Tours ホウェールウォッチング




クジラの写真を撮るのは労多くして得るとこ少なし


そこで当然のように天気予報に頼ることになりました。ところがこれまでの経験でわかっているのは、あまり天気予報には頼れない、という事実でした。アイスランドはいわゆる「山の天気」で、快晴があっという間に雨空に変わったり、静かな日に映画館へ入いり出てきたら大風、ということがよくあるのです。

だから「明日の天気は変わりやすく、何でもあるでしょう」という予報を出せば当たるのでしょうが、それでは予報にはならないので、一応週間予報なるものもあるのです。

アイスランドの気象局の名誉のために言っておきますが、きちんと正確に予報が当たることもよくあります。快晴の日に「今日の夕方から強いストームになるので注意するよう」とか冗談のように聞こえる注意報が出たことがあります。でもきちんと当たりストームになりました。

だから余計迷うんですよ。信じるべきか、信じないべきか...? 頼っていいのか、いけないのか...?

しかしながら、天候に左右される何かを計画するならば、天気予報以外には頼るべきものがないのです。アイスランドの週間予報の場合、当たるあたらないというよりは、予報が猫の目のようにくるくる変わってしまうことが問題と言っていいでしょう。

三日後が快晴になっていても、翌日の予報ではまったくの雨になってしまうようなことがよくあるのです。「山の天気」だから仕方がないことなのでしょう。

今回のホエールウォッチングの場合、もともとは月曜日に行くことにしていました。その前の週の木曜日には快晴で無風の良い予報が出ていたからです。

ところが土曜日から予報が変わり始め、日曜日には晴れで気温も高いものの風が相当強いという予報に変わってしまいました。「晴朗なれど波高し」でこれでは「船酔い続出」の前回の二の舞になってしまいます。

クルーズに招待してくれているSpecial Toursに問い合わせると、「金曜日以外の平日であれば、いつでもいい」ということです。そこで月曜になるのを待って、その時点で「凪」予報が出ていた木曜日まで延期したのです。

ちなみにアイスランドは漁の国でもあるので、天気予報はちゃんと海の区域にも出ます。私がフォローしていたのは、レイキャビク沖のFaxafloiファクサフロウイというレイキャビク湾を出るか出ないかの海域です。それも晴れ雨よりも風の強さの予報がメインでした。

実際、木曜日は陸上では雨予報だったのです。でも雨予報は一日のうちのある時間帯だけだったので「これは取るに足りない」と判断し、無視しました。

さて猫の目の予報ですから、たとえ月曜日の時点での木曜日の予報が「凪」であっても、覆される可能性はあります。火曜、水曜と朝起きるとすぐに天気予報の木曜日の夕方を確認しました。幸い大きな変更はなく、出発の夕方五時の予報はレイキャビクは雨、気温は十三度、風は微弱を保ってくれました。

そして木曜日の朝。朝はさわやかな快晴で風はゼロ状態。やった! まるで小学生の遠足の朝です。「レイキャビクは雨? 何だそりゃ?」と思いましたよ、その時は。

ところが午後になって仕事で車で外に出ると、なぜか雲が南の空から迫って来ているではありませんか! それものんびりした雲ではなく、あの風が強い日に出てくるような、上部はモコモコしていて下部がナイフでスパッと切ったようにまっすぐになっているヤツです。

案の定、木立が揺れ始めていて、肌でも風が強くなってきた、と感じられました。やばい。

そして、集合時間の四時半には快晴から「曇り多少お日様」になっていました。幸い風の方は吹いているもののそこまで強風ではない、というくらいでした。

船上のデッキで出航を待っていると、何と雨つぶがパラパラと落ちてきました。「レイキャビクは雨」当たった。ですがこちらの期待した通りにそれ以上の本格的な雨になることはなく、帰港するまで雨は大丈夫でした。

さて、海ですが「凪」とは言えないまでも穏やかな状態でした。クジラがいなくてかなり沖合まで出ましたので、さすがにそこでは波が多少高くなりましたが、それはそういうものでしょう。

ただその分きちんとクジラに遭遇でき、「クジラなし状態」になってしまった前回とは異なり、何度もそして何回かは相当ボートの近くでゆっくりと浮上して潜るクジラさんを鑑賞することとなりました。

八時過ぎに帰港するとさすがにホッとして、肩の荷を下ろす気がしました。「天気予報にころがされた五日間」という感じです。

そういうわけですから、特にアイスランドへいらっしゃる観光客の皆さん、アイスランドの天気は「山の天気」ですからね。そのことをくれぐれもお忘れになられませんように。


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ヴェセタ? アイスランドの電話のかけ方

2015-07-19 05:00:00 | 日記
いつだったかテレビの「相棒」を見ていました。右京さんが亀山君の携帯に電話したのですが、亀山君が「はい、亀山です」と答えると右京さん:「わかっています。君の携帯にかけているのですから」

なるほど、と思いましたが、日本では普通は携帯ではどのように応答するのでしょうか?私は携帯が普及する前に日本を出てしまいましたし、帰省の際には携帯を使わないので、その辺り浦島太郎です。

日本では電話の応対は丁寧にしますよね。会社ではもちろんですが各個人の家庭でも「一般的に」丁寧だと思います。私は三年間ほど新橋の小さな財団法人でサラリーマンをしていました。大企業ほどの厳しいマナー教育はありませんでしたが、電話の受け答えはやはり職場のイロハですので習いました。

「トゥルルル....」
「お早うございます。六田奈教育センターのトーマでございます」
「屋焙教育事務所の鈴木と申しますが、出版の萩原さんはいらっしゃいますか?」
「大変お世話になります。萩原ですね、はい、すぐにお繋ぎいたします」

私の職場のレベルではだいたいそんな感じでした。ハイビジネスになるに連れて、より洗練された対応になっていくのでしょうが、たとえ庶民レベルの職場でも丁寧さというものが一般的だろうと思います。

アイスランドへ来てからのカルチャーショックの五本の指に入るのがこの電話の応対でした。来て間もない頃は(1992年頃)は、まだ携帯は出回っていませんでしたし、職場にも縁がなかったので、まずは家庭電話でした。

「トゥルルル....」
「Hello, this is Anita and Toshiki’s home(Anitaは前のカミさんの名前の代用)」
「Is Anita at home?」
「Yes, who’s calling?」
「Einar」

これはまだましな方です。一番多かったのは「Anita!」と話したい人の名前を怒ったように告げるだけのものでした。「Hello」も「Excuse me, my name is ...」もないので「ずいぶん礼を失してるヤツだな」と何度も思わされました。

電話を受ける時も同じで、電話に出ると「Einar」と自分の名前だけを告げます。多少語尾が上がり調子になるのが普通です。「エイナルだけど、何なんだよ!」という感じに聞こえました、当時は。(^-^;

これは簡略という点では効率的でしょうが、丁寧さや会話を友好的な方向へ導こうという点においてはみすぼらしい応対です。

さらに輪をかけてびっくりしたのが、電話に応対した時に自分の名前さえ告げずに「ヴェセタ!?」と切口上で訊いてくる輩でした。

「ヴェセタ」というのは移民の間で冗談のようになっている言い回しでHver er thetta? クヴェール エル セッタ?「これは誰ですか?」のことです。我々外国人の耳には「ヴェセタ」と聞こえるのです。

「オレの家にかけてきて『誰だ?』とは何だ、バカやろう」と始めは思いました。ですが何度もこの「ヴェセタ」を経験するうちに、これは自分が間違った番号にかけてしまったかもしれない、という時にそれを確かめるための質問であって、それ以上はなにも他意がないことがわかってきました。

この「ヴェセタ」は今でもかかってきますが、そういう際は自分が誰であるかをきちんと伝えてあげます。別にもう腹も立ちません。そうすると意外にきちんと間違いを謝ったりすることもあり「かわいいじゃないか」と思ったりもします。(*^^*)

職場レベルではずいぶんマナーは向上しているように思います。私のいるネス教会では「おはようございます、ネス教会のニーナです」のように応対していますし、そういうオフィスが多いようです。観光業関連は洗練されてきていますね、さすがに。外国人相手の商売ですから。

ですがソーシャルオフィスのようにイライラして始めから喧嘩腰で応対するようなオフィスもまだまだありますね。困ったもんだ...

非常にざっくりと総括してしまうと、アイスランドの皆さんは電話でのニュアンスとかにほとんど気がつかないか、気にしないという基礎に立っているように思われます。通じればいい、ということでしょうか?

日本の方がこちらの誰かに電話される機会があるかもしれませんが、電話の向こうの相手がつっけんどんな電話の取り方をしても、必ずしも悪気はありませんので、大目に見てあげてください。

さて冒頭に触れた携帯での応対ですが、これもアイスランド的にすると「トシキ」と語尾を上げぎみに告げるべきなのですが、自分のファーストネームを口にするというのが、なんとも照れくさくて私は「ハロー」でごまかしています。

右京さんの言うように「私の携帯にかけてきているんだから、わざわざ名を告げる必要もなかろう」という気もします。ですが大体の人は「トシキ トーマですか?」と確認してきますが。

今は登録が進んでいますから、答える前から相手が誰かわかる場合が多いのですよね。それなのに「私、エリーンだけど...」などと念を押されると「チェッ、わかってるよ」という気がしてしまうこともあります。

相当自分勝手なのかなあ...とも思いますし、相当自分のアイスランド化が進んでいるのかなあ...とも思います。(寒...)


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Special Tours ホウェールウォッチング

2015-07-12 05:00:00 | 日記
先週は水曜日、木曜日と連日ホウェールウォッチングに行ってきました。以前、子供達が小さかった頃に連れていった以来のことで、十六、七年ぶりになります。

「またか」と言われそうですが、今回もまた赤十字のオープンハウスの野外版で、庇護申請中の難民の人たちと共に行くホエールウォッチングです。

ホウェールウォッチング屋さんというか、そういう業者の人は昔から一定数あるのですが、その中のひとつSpecial Toursという会社が難民の人を無料で招待してくれることになったのです。

実はその会社のマネージャーが(腕にはでかい刺青でバイクを乗り回すタフガイのおっさんですが)赤十字のボランティアもしていて、難民の青年の支援家族をしています。その関係で私とも以前からの知り合いだったのですが、毎日所在なく日々を過ごしている難民の人が多い、ということを聞いて今回のありがたい招待となったようです。

いつものオープンハウスの担当の赤十字のスタッフが夏休み中なので、私が代行で準備。難民の人に尋ねて見ると、やはり物珍しいのかホウェールウォッチングは人気があり参加希望者が多いようです。

そこでグループをふたつに分け、二回ツアーに出ることにしました。水曜日はアルバニア語とロシア語を話す人がメインで参加者十五人。木曜日はアラビア語、ペルシャ語、英語の人たちで三十人。これに赤十字のボラが四五人付き添いです。もちろんチャーターではなく、一般のツーリストの人たちに混ざっての参加。

午後五時出航。この会社は三種類のボートを使っていますが、私たちが乗ったのはAndreaという一番大きなボートで、二百人を収容できるそうです。建物でいえば二階建てで、屋上が展望デッキになります。ドリンクやグッズ販売のキオスクもついているし、また清潔なトイレも六ヶ所にあり快適な船です。

さらに下のキャビン後方にはずらりと暖かいジャンプスーツがつる下がっており、寒かったり雨天時には無料で使用できます。私も使いましたが、これはいいサービスですね。着るものの心配が不必要になります。




ロウアーデッキ 黄色と黒の暖かいジャンプスーツは備え付け


水曜日はすこし曇りでしたがとても穏やかな日で、海にも大きな波がありません。しかめ面(それが普通の顔なのですが)のスラブ系のおっさんたちがワクワクして船から身を乗り出して沖合を見つめている光景は、多少笑えるものがありました。

パンフレットによると、アイスランド近海には二十三種のクジラがいるのだそうですが、一般的なのはその中の十一種とのこと。皆大型種で、その中で一番小さいのがHrefnaフレプナというクジラ。これは普通にはミンククジラと呼ばれているやつです。

このフレプナが一番普通に見られるクジラで、同時に食卓にも乗るものです。スーパーに行けばステーキ用のパックになっています。ちなみにフレプナは、ごく普通に女性の名前です。Hrefnaさんは周囲に大勢います。

出航して三十分ほどすると、クジラが日常的に回遊している、いわゆる「ミーティングスポット」に入ります。ここまでくると船は速度を落とし、ガイドさんは一段高い見張り用の席に立ちます。キオスク担当の女の子も船尾に立って後方を見張ります。結構大型のボートなので、ガイドさんとの連絡はウォーキーを使います。

ガイドさんはマイクロフォンのヘッドセットを付けていて、アナウンスは船内全体に届きます。出航時からいろいろ説明をしてくれるのですが、一番の役目はクジラを見つけてどこにいるか船客に知らせることです。(それからクジラがいなかった時にお客さんを慰めること)。

ここでは周囲三百六十度を指すのに、時計の読み方を使います。船首が向いている方向が十二時、船尾が六時。左手は九時で、右手が三時です。クジラがいると「十時の方向、六十メートル先、ミンククジラ! 東の方向へ」のように指示を出してくれるのです。最後の東とか西とかは、船上では私にはほとんど見当もつきませんでしたが。

水曜日はかなりのあたり日で、クジラは何回も出てきましたし、イルカはさらにその三倍くらいたくさん泳いでいました。もっともレイキャビク近界ではクジラが息継ぎに上がってくるのを見れるか、多少ラッキーならジャンプするのを見ることができる程度が普通です。

北部のHusavikフーサビークのホウェールウォッチングだと、クジラがわざわざ寄ってきて、なんというか猫がじゃれてひっくり返るようなことをしてくれるそうです。クジラはバカではないので「この船は危なくない」とわかっているのだそうです。

前にも書いたことがありますが、レイキャビクでは捕鯨とホウェールウォッチングが同じ地域でなされています。ですから、こちらのクジラたちはフーサビークの連中のように安心できないのでしょう。

捕鯨とホウェールウォッチングについてはこちらも




沖合からボルガネス方面を覗む


さて、水曜日はかなり高得点のツアーでしたが、翌日木曜日は空振りでした。クジラたちはいっこうに姿を見せず、昨日はあんなにいたイルカたちさえどこかへ行ってしまっていました。

おまけに風が強く波が高くなって船が相当揺れることがありました。というわけであまり船旅の経験のない中近東などからの人たち、七八人は船酔い。あちこちで死んでいました。

面白かったのはイラン人で親しくしている青年が「トシキ、実は海の上に来るの、生まれて初めてなんだ」雪を初めて見た、という人とは以前に会ったことがありますが、海の上に来るのは初めて、と聞くのはそれが私には初めてのことでした。(^-^;

波止場に帰還すると、それでもみんな嬉しそう。クルージングを楽しんで嬉しい人もあれば、生きて帰ってこれたのが嬉しい人もあったことでしょう。中にはこれが最初で最後のホウェールウォッチング、という人もいるはず。

私自身は楽しみましたよ。そんなにクジラに関心はないし、波揺れも平気。売店担当の、明らかにアイスランド人ではない女の子が相当かわいい子であるのに水曜日に気がついていたので、クジラよりむしろそちらを眺めることに専念していました。(*^^*)

さて、今回はこのようにSpecial Tours の宣伝のような内容になってしまいましたが、書いたことにウソはありません。皆さんの中でアイスランドでのホウェールウォッチングを考えている方がありましたら、私はこの Special Tours を選ばれますようお勧めいたします。

Special Tours の詳細はこちら



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夢 お告げ、迷信、深層心理?

2015-07-05 05:00:00 | 日記
先日、私のオフィスに知り合いの男性チモさんが訪ねてきました。彼はアフリカ出身ですが、滞在許可に関する問題に巻き込まれ、それが三年以上にも渡ってしまっています。

やっかいな状況の中で、さすがに昨冬は落ち込んでいるのが傍目にもわかりました。本来は礼儀正しく穏やかなのが、クリスマス前あたりからぶっきらぼうで周囲に構わなくなっていました。

そんなわけで約束の時間の前になると、こちらの心もいくばくか重くなり、あれやこれや話しの展開を考えたりしました。

ところがチモさんが来てみると、彼は以前の穏やかな表情でなにかすっきりしたかのように見受けるではありませんか。「何かニュース?」と尋ねると、「いや、別にニュースはないんです。ただ夢を見て...」

チモさんの話しによると、先日夢を見たのだそうです。その中で彼は晴れて新しいアイスランドの滞在許可を受け取っていたそうです。話しの前後はわからないのですが、その中で私も夢に登場したそうで、何かこれまでの努力が当局に評価されていたようなのです。

「夢は神が人に話しかける大切な方法でしょう。その夢を見た後ですべてうまくいくという確信を得ました。それで心もすごく軽くなりました。それでファーザー(彼はいつも私をそう呼びます)にも感謝を言いたかったのです」

実はこのチモさんは敬虔なクリスチャンです。アフリカのクリスチャンの中には、というか非常に一般的なのですが、熱心にお祈りをし、時には熱狂的になる宗派/タイプがあります。チモさんもそのような流れを汲んでいます。

チモさんの言うように、聖書の中には夢を通じての預言、お告げというものが何度も登場してきます。例えば旧約聖書の創世記、アブラハムのひい孫にあたるヨセフは重要な人物なのですが、彼は夢に託された神のメッセージを読み解く能力があり、エジプト王のファラオから重用されています。

新約聖書でも、例えばクリスマスの物語りの中に、生まれたばかりの幼子イエスに東方の三博士が贈り物を携えて旅をしてくる話しがあります。訪問を終えた三博士は夢で帰り道についての神の指示を受けます。

同様にイエスの(地上での)父のヨセフも夢で「エジプトに逃がれよ。ヘロデ王が後を追ってくるぞ」というメッセージを受け、それに従っています。ですから夢というのは神と通じるひとつのチャンネルです、聖書的には。

ですが二十一世紀の現代で誰かが「私は夢でこういうお告げを受けた」などと言いだしたら、まず間違いなく「おい、オマエ、気は確かか?」というようになってしまうでしょう。私も基本的にはそっちの仲間です。

聖書の時代と今とでは「夢」が何であるのかの理解がまったく違います。昔は不思議な現象としか理解されず、それ故に「神的な出来事」につなげられていたことでしょう。しかし今では、生理学的にも深層心理学的にも夢のメカニズムは解明されてきています。夢はまったく無から生じる、というものではないようです。

まあ、それは経験的にもわかりますよね。気にかけていることとか、トラウマになっていることとか繰り返して夢に出てきますから。(私のトラウマ的夢は高校の保健の単位が出席不足でもらえない、というものです。実際にはもらえたのでトラウマというのは不正確でしょうが。何かそれに近いことで焦ったことがあったのでしょう)

さて、それにもかかわらず、アイスランドでは今でも夢をたいそう深刻に受け取る人がいます。やはり高齢の方に多いように見受けますが、まだそんな歳でもない人でも「私は夢を信じる」という方がいます。

私が覚えている例では、例えば「夢にいとこが現れたの。何か困っていることがあるに違いないので、すぐに電話したわ」というおばあさんや、「夢の中で交通事故を見ちゃったのよ。だから今日は出かける用事は止めにする」とかいうおばさんがいました。

特に前者のような「誰々が現れた」ということを「その人が自分に何か連絡を取ろうとしているのだ」というメッセージとして受け取ることは結構よく耳にします。これも深層心理学的には「連絡を取りたいと思ってるのは自分の方だ」というように説明されるのかもしれませんが。

私は牧師ですので聖書の中にあるような「夢のお告げ」を否定する気はありません。ただ、全部の夢が「お告げ」とは思いませんし、むしろ「お告げ」たりうるのは非常に稀なケースでしょう。

聖書の中にある、時代に制約されたものというのをどのように正しく今の時代に移すかというのは、牧師の大切な任務のひとつです。時代を吟味せずに、聖書の字句をそのまま現代で使おうとするのは怠慢であって、信仰ではありません。

冒頭のチモさんに戻りますが、チモさんが夢をメッセージとして良い方向で受け取ったことはなんら問題ありません。むしろ他の方法では得られない平安を取り戻したのですから、ありがたいことです。

ただ、そこで「ああ、もう何もしなくても...」と腰を据えられては困ります。まだまだしなければならない課題が多くあるのですから。チモさんとはそのことを話し合い、彼もそれを理解し「頑張ろう」ということになりました。願わくはこれが正夢であってくれるように、です。

考えてみれば、私たちの相当多くが実際には「夢のお告げ」とも言えるような「想い」「確信」「使命」を持って、自分の生き方に方向を与えているのかもしれません。理由は説明できなくても、「これが私の行く方向」という確信を持って生きている人は、存外多いのではないでしょうか?

そう信じていたら思い違いだった?それもあるでしょう。だから人間やってるのが面白いんです。
(^_-)☆


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