Gledileg jol! グレリヨール! メリークリスマス!
十二月に入ってから寒さと風、雪のトリプル悪天候に見舞われていたのですが、今週になってきれいに晴れ上がって落ち着いてくれました。それでも寒いですし(旭川や釧路ほどではありません)、それよりも残雪がアイス化して裏道などは悲惨な有様です。
でも天候がおさまったのは嬉しいことですし、悪天候で動きが取れずにいたこともあってか、日曜から「前夜祭」ソルラークスメサの二十三日にかけては街中は人と車でごったがえしていました。
それも今日二十四日の午後からは急速に静まり返っていきます。アイスランドの静かなクリスマスの始まりです。
こちらのクリスマスの様子についてはこれまでにいくつかご紹介したことがありますが、今回はまだお伝えしていなかった「伝統行事」について書いてみたいと思います。それはjolakvedjur「ヨーラクヴェズユル」と呼ばれるものです。Jola「ヨーラ」はクリスマスを意味するjol「ヨール」の接続形、kvedjur「クヴェズユル」は挨拶を意味するkvedja「クヴェズヤ」の複数形です。つまりChristmas greetingsのことになりますね。
ただしここではクリスマスの挨拶のうち、国営放送RUVの第一ラジオ放送で読み上げられる挨拶のことを指します。どういうことかというと、毎年二十三日ソルラークスメサの日に、第一放送は「ヨーラクヴェズユル」という特別の枠を作って、国内外のアイスランド人から寄せられる「挨拶」をアナウンサーの人たちが読み上げるのです。
例えばこんな感じです。「スキーザダールのヨウン・ヨウンスソンから親戚一同へ。良いクリスマスと良い新年を迎えてください 。旧年中はお世話になり、ありがとう。神の祝福を」というような具合です。要するになんの変哲も無い普通の挨拶です。ひとつ大体十秒か十五秒でしょう。それをただひたすらに読み上げていくのです。途中で時々クリスマスの音楽が入りますが。
奇妙に思われるでしょうが、これがアイスランドの人にはお気に入りの「番組」なのです。国民の三分の一は必ず聞き入る、と言われているほどです。
23日のラジオ第一放送の番組表 Jolakvedjurという番組に注意(赤印) 一日中です!
個人的な挨拶の交換に公共の電波を利用するというこの習慣は1951年あたりから始まったようです。実際にはそれ以前からもあったようなのですが、1951年にあるはっきりとした「出来事」があってそれ以来しっかり根を張るようになっていったらしいです。
それはこの年にスウェーデンのストックホルムに留学していたアイスランド人学生らが自分たちで故国の家族宛てにメッセージを吹き込み、それをRUVが放送したのです。これがかなり評判を呼んだようなのです。このことが昨年のクリスマス前にRUVのホームページで紹介されています。
そこで紹介されている実際の例はこんなものです。
「ストックホルムの工業大学で化学を学んでいるグビューズムンドゥル ・パウルマソンです。(ここから本人)ママ、パパ、オーリ、他の親戚やアイスランドにいる友だちの皆さん。心からのクリスマスと新年の挨拶を、この一年の感謝と共に送ります。僕はここで元気にしてます。みんなも元気で!」
当時のアマチュア録音ですから、周囲の雑音が入ったりしていますが、逆に生活感があります。今のようにスカイプもなければEメイルもない。国際電話でさえ庶民の手には届かない。郵便でさえ何週間もかかる。というような時代にこのようにして肉声を伝えようとしたことを思いながら聞いていると、なぜか涙が出てきてしまいます。実際に放送を聞いたグビューズムンドゥル君の家族はどんな思いでこの挨拶を聞いたのでしょうか?
実際に1951年の放送を聞いて見たい方はこちら
結局、これがアイスランドなんだと思います。この人のつながりというか、田舎独特?の結束の固さというか、「だからなんだ」ということではなくて、「どこどこの誰が誰に挨拶を送っている」ということ自体が興味あることで、面白いことなのです。
「時代がかっているなあ。今のネット時代には不要だろ?」と普通は思いますよね?ところがです。それが違うのです。今年寄せられた挨拶は全部で3200件。昨年の2700件を五百も上回って史上最高なのだそうです。しかも若い世代からの挨拶が増えているとか。
第一放送では二十三日だけでは読み切れなくなってきたので、二年ほど前から二十二日から挨拶を読み始めるように「枠」を拡大してさえいるのです。
ちなみにこれは無料ではありません。挨拶を申し込む人はきちんと料金を払わなくてはなりません。税込みで一語323クローネ。先ほどのストックホルムのグビューズムンドゥル君の例を取ると、これは原語で39語に相当しますので12597クローネ。決して安くはないですよ。
現代にあえてこういう時代が買った挨拶を、一万クローネを投入して選ぼうというアイスランド人。 人間というのは、というかアイスランド人というのは不思議なものですねえ。でも正直言って、分からなくはない気がします。ワタシもアイスランド化が進行しているのかも...
まあ、それはそれ。
改めまして、レイキャビクのToshiki Tomaから挨拶です。
日本の皆さん、アイスランド在住中の皆さん、平和で暖かいクリスマスの願いを送ります。正視できないような現実に取り囲まれている私たちですが、クリスマスは本来そのような現実の中での人の救いをもたらすものであることを信じます。ここからまた歩を進めましょう。グレリヨール。
応援します、若い力。Meet Iceland
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is
十二月に入ってから寒さと風、雪のトリプル悪天候に見舞われていたのですが、今週になってきれいに晴れ上がって落ち着いてくれました。それでも寒いですし(旭川や釧路ほどではありません)、それよりも残雪がアイス化して裏道などは悲惨な有様です。
でも天候がおさまったのは嬉しいことですし、悪天候で動きが取れずにいたこともあってか、日曜から「前夜祭」ソルラークスメサの二十三日にかけては街中は人と車でごったがえしていました。
それも今日二十四日の午後からは急速に静まり返っていきます。アイスランドの静かなクリスマスの始まりです。
こちらのクリスマスの様子についてはこれまでにいくつかご紹介したことがありますが、今回はまだお伝えしていなかった「伝統行事」について書いてみたいと思います。それはjolakvedjur「ヨーラクヴェズユル」と呼ばれるものです。Jola「ヨーラ」はクリスマスを意味するjol「ヨール」の接続形、kvedjur「クヴェズユル」は挨拶を意味するkvedja「クヴェズヤ」の複数形です。つまりChristmas greetingsのことになりますね。
ただしここではクリスマスの挨拶のうち、国営放送RUVの第一ラジオ放送で読み上げられる挨拶のことを指します。どういうことかというと、毎年二十三日ソルラークスメサの日に、第一放送は「ヨーラクヴェズユル」という特別の枠を作って、国内外のアイスランド人から寄せられる「挨拶」をアナウンサーの人たちが読み上げるのです。
例えばこんな感じです。「スキーザダールのヨウン・ヨウンスソンから親戚一同へ。良いクリスマスと良い新年を迎えてください 。旧年中はお世話になり、ありがとう。神の祝福を」というような具合です。要するになんの変哲も無い普通の挨拶です。ひとつ大体十秒か十五秒でしょう。それをただひたすらに読み上げていくのです。途中で時々クリスマスの音楽が入りますが。
奇妙に思われるでしょうが、これがアイスランドの人にはお気に入りの「番組」なのです。国民の三分の一は必ず聞き入る、と言われているほどです。
23日のラジオ第一放送の番組表 Jolakvedjurという番組に注意(赤印) 一日中です!
個人的な挨拶の交換に公共の電波を利用するというこの習慣は1951年あたりから始まったようです。実際にはそれ以前からもあったようなのですが、1951年にあるはっきりとした「出来事」があってそれ以来しっかり根を張るようになっていったらしいです。
それはこの年にスウェーデンのストックホルムに留学していたアイスランド人学生らが自分たちで故国の家族宛てにメッセージを吹き込み、それをRUVが放送したのです。これがかなり評判を呼んだようなのです。このことが昨年のクリスマス前にRUVのホームページで紹介されています。
そこで紹介されている実際の例はこんなものです。
「ストックホルムの工業大学で化学を学んでいるグビューズムンドゥル ・パウルマソンです。(ここから本人)ママ、パパ、オーリ、他の親戚やアイスランドにいる友だちの皆さん。心からのクリスマスと新年の挨拶を、この一年の感謝と共に送ります。僕はここで元気にしてます。みんなも元気で!」
当時のアマチュア録音ですから、周囲の雑音が入ったりしていますが、逆に生活感があります。今のようにスカイプもなければEメイルもない。国際電話でさえ庶民の手には届かない。郵便でさえ何週間もかかる。というような時代にこのようにして肉声を伝えようとしたことを思いながら聞いていると、なぜか涙が出てきてしまいます。実際に放送を聞いたグビューズムンドゥル君の家族はどんな思いでこの挨拶を聞いたのでしょうか?
実際に1951年の放送を聞いて見たい方はこちら
結局、これがアイスランドなんだと思います。この人のつながりというか、田舎独特?の結束の固さというか、「だからなんだ」ということではなくて、「どこどこの誰が誰に挨拶を送っている」ということ自体が興味あることで、面白いことなのです。
「時代がかっているなあ。今のネット時代には不要だろ?」と普通は思いますよね?ところがです。それが違うのです。今年寄せられた挨拶は全部で3200件。昨年の2700件を五百も上回って史上最高なのだそうです。しかも若い世代からの挨拶が増えているとか。
第一放送では二十三日だけでは読み切れなくなってきたので、二年ほど前から二十二日から挨拶を読み始めるように「枠」を拡大してさえいるのです。
ちなみにこれは無料ではありません。挨拶を申し込む人はきちんと料金を払わなくてはなりません。税込みで一語323クローネ。先ほどのストックホルムのグビューズムンドゥル君の例を取ると、これは原語で39語に相当しますので12597クローネ。決して安くはないですよ。
現代にあえてこういう時代が買った挨拶を、一万クローネを投入して選ぼうというアイスランド人。 人間というのは、というかアイスランド人というのは不思議なものですねえ。でも正直言って、分からなくはない気がします。ワタシもアイスランド化が進行しているのかも...
まあ、それはそれ。
改めまして、レイキャビクのToshiki Tomaから挨拶です。
日本の皆さん、アイスランド在住中の皆さん、平和で暖かいクリスマスの願いを送ります。正視できないような現実に取り囲まれている私たちですが、クリスマスは本来そのような現実の中での人の救いをもたらすものであることを信じます。ここからまた歩を進めましょう。グレリヨール。
応援します、若い力。Meet Iceland
藤間/Tomaへのコンタクトは:nishimachihitori @gmail.com
Home Page: www.toma.is