KOfyの「倍行く」人生

バイクで人生を“2倍”楽しみたい。勝手気ままな日記代わりの備忘録。

ヴァナキュラー(vernacular)

2010年04月05日 | その他あれこれ
4年ほど前、2006年7月のこと。。。。

大学に入学した下の娘が、最初の試験でレポート課題に苦戦していました。
担当教授は厳しい人のようで、前年には相当の数で不可が出たようです。

自分の学生時代の仏語のクラスを思い出しました。

「何を書いて良いか分からへん。。。」 
助けて欲しいとメールで訴えてきました。
どんな事を講義で話していたの?と聞いても、
さっぱり要領が得ません。。。。
あてずっぽでネットを検索しまくって、久しぶりに徹夜して仕上げたレポート。
パソコンのファイルを整理していて懐かしい作品が出てきました。

娘には内緒ですが、この度何とか卒業したので記念のためにアップしておきます。
娘が子供を持った時に、アップしたことをそっと教えるとするかな。(^o^)

以下のレポートは残念ながら「優」は貰えず、「良」だったようです。。。(・_・;)


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『ヴァナキュラーな住まいとエネルギー』

 ヴァナキュラー(vernacular)な住まいとは、その土地の風土・気候・地域性を考慮し、その地域で入手できる材料などによって確立される建築・生活スタイルを言い、「土着的な、風土に根ざした」先人達の知恵と経験の結集である。
長い年月を経て文化や伝統として確立され、住まいの原点や今後の住まいのあり方を考える上で大事な要素になっている。

 ある地域に住みだした人々が自らの手で作り出した住居はさまざまな知恵や工夫に満ちている。木材、石材、土、動物の皮・糞、布などの材料、狩猟や農耕などの経済活動の特殊性(移動性と定着性、集団化共同化など)、雪・雨・風などの気候、土地の形状などさまざまな要素の中で、その地域の自然を最大限に生かしてきた。
入手できる材料が地域性で限定されてくることから、建築される住まいは地域単位として見た目にも一体感や共通性を持ち、集合体としての村落や町並みとして美しく機能的になっている。例えば、京都の美山の茅葺屋根の集落など美しい景色を作り出している。

 しかし、電気、ガス、水道などの整備発展、施工や材料などでの各種技術の進歩、経済の発展、広域的な物流手段・交通網の発達、情報の広域的な流通、生活スタイルの多様化、住まい手の要望の高まりや利便性の追求などにより、自然を壊し、無視をして更なる快適性を得るようになった。そして、エネルギーの無駄遣いによる地球温暖化、廃棄物処理など環境面でさまざまな問題が発生してきたと思う。
また、電車や車で各地を移動した時にその地域の特徴が薄れ、どこに行ってもハウスメーカーの工業化住宅、マンションなどの集合住宅などが目立ち、屋根を見ても材料や色がばらばらで地域としての特徴が薄れていっている。テレビでヨーロッパの地方の村落の映像を見る機会があるが、屋根や壁の材質や色が統一されて町並みとしての美しさを感じる。
住まいに求められているのは快適性や機能性、安全性だと思うが、自然と人間という事を含めて環境との共生を積極的に考えていく必要があると思う。

 電気もガスも水道もなかった昔の住まいは、結果として環境に優しい住まい、つまり環境共生住宅だったのだろう。昔ながらの日本家屋は、光と風の入る大きな窓を持つ開放性があり、ひさしや簾、庭の樹木(特に広葉樹の活用)などで夏場の強い太陽光を遮るなどの知恵によって、自然エネルギーを実に効率良く住まいに取り入れていた。
北海道から沖縄まで南北に延びている日本の国土では、単一的な対応でないが、平均的には高温多湿の気候の中で、「夏を旨とすべし」という言葉に代表されるように夏は、太陽エネルギーをいかに遮るかが日本の住まいのヴァナキュラーな課題だったのだろう。伝統的日本家屋は大変工夫されている。

 現代住宅に応用すると次のようなことが考えられる。家屋は開放的に、大きな窓を設けて通風をよくする。屋根と壁は二重構造にして空気層を設け、また屋根の天辺を開け、空気の流れを良くする。床下を開放して湿気の上がるのを防ぐ。木や土壁を使い湿気を吸収させとともに土壁は高性能の断熱材として機能する。庇や樹木(落葉樹)で太陽を遮る。地面に植物を植え太陽の照り返しを防ぐ。屋根に水をかける、或いはスプリンクラーを設け、水の気化熱で屋根を冷やす。地下室や地下貯蔵庫など年間を通して一定温度である地下を利用する。水道水に比べて年間の温度が一定している井戸水を利用する。
電気製品はすべてが熱源になるので、熱エネルギーの放出の少ない製品を使う。またその使用を出来るだけ控える。厨房のコンロや湯沸し器も熱源であるから、熱の排出を考える。発熱部分を室外に出す方法は大変有効。
心理的な涼しさを意図して風鈴や、氷、虫の声などで涼しさを演出する。(BGMで対応するのも良いだろう)クールビズなどの対応を徹底し温度などの快適な生活の要求水準を下げる。

 なぜ、エネルギーの消費を減らす必要があるのか。それは、今、危機に瀕している地球環境を保全し、生態系を維持することを目的にするからだ。そのために、CO2を発生させるエネルギーの消費を減らし、太陽電池や太陽熱温水器などのソーラーエネルギーや再生可能なエネルギーに置き換えていくことが重要になっていくだろう。
省エネルギー住宅の、第一の目標は、先人達の知恵と経験で残したヴァナキュラーな住まいに学びエネルギーの使用を最小化することだろう。ソーラーシステムや太陽熱温水器、バイオマスの利用や風力発電によって、エネルギーを自給自足することで効果を拡大させていく。こうした各種のエネルギーを、多角的に組み合わせることで省エネルギーと快適性を成立させることができるだろう。

 個々の住まいの単位での省エネルギーを考えるだけでなく、省エネルギーの設備や機器の製造や設置・施工に要したエネルギー、また、住まいそのものの建築に要したエネルギーまでをも加算して、その最小化を考えることが、全体最適の観点、地球環境レベルで大事な要素になってくる。
さらに、住宅の耐用期間が終わった後、解体されて、廃棄または再利用されることまで考慮し、住宅のライフサイクルの中で使用されたエネルギーを最小化する、ということがヴァナキュラーな住まいから学ぶ住宅の省エネルギーの重要な目標になるだろう。

 いにしえのヴァナキュラーなすまいは地域の特性から住まい手としての選択肢はあまりなく、限定的必然的な条件の中からトライアンドエラーを繰り返し確立されてきた。その後の経済や技術の発展から制約条件が解除され数多くの選択肢が提供され、個々の住まい手が自由に選択し、また量産的工業手法を導入した住宅提供者が他社との差別化を重視して一気にヴァナキュラーな住まいの伝統が失われていった。
しかし、地球環境規模での省エネルギーの推進という大きな課題の中で、ヴァナキュラーな住まいとの決別の要因になった技術の進歩が、逆に自然や環境との共生を補完する重要な要素になっていくし、そうさせるよう国の政策レベルでの強い誘導が必要に思う。
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