企業活動において、「哲学」、「理念」を明確にすることが必要だ。
自分の組織の単位でもしっかりと、ミッション、ビジョン、バリューを明確にし、メンバー全員で共有化するようにしよう。
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①ミッション(私のお約束)
業務を通じて出会えたお客さまに、安心と信頼を
感じていただける活動を実践し続けます。
②バリュー(私のお役立ち)
お客さまのためになる「変革」を、「真剣さ」と
「誠実さ」で、「迅速」に実行します。
③ビジョン(私達の5年後の“目標”です)
「●●さん」と親しみをこめて呼びかけて下さり、
私たちを選択し続けていただけるお客さまを
一人でも多く作り上げています。
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「ミッション」とは企業の使命や存在意義、何を達成したいのかを意味し、「ビジョン」とは目指すべき方向性、将来あるべき姿を指し、「バリュー」は企業の価値観、つまりそのビジョン・ミッションをどうやって、何を大切にしながら達成していくのかという行動の判断基準を意味する。
(最近では、そこにコンプライアンスや環境問題への取り組みなども含まれている)。
日本では、この3つをまとめて「経営理念」と呼ぶこともある。
そして、最近は相次ぐ不祥事やCSR(企業の社会的責任)の動きから、特にバリューが問われるようになった。
・「ミッション」とは存在理由、将来像を記述する前提となるもののことであり、「ビジョン」とは望ましい将来の姿、将来像のこと。もし概念の上下関係を云々するなら、「ミッション」は明確に「ビジョン」よりも上にくる。
・「ビジョン」が長期目標(5~10年、またはそれ以上)を指し示す記述であるのに対して、「ミッション」は時間の限定がない
・「ビジョン」がわれわれはどこへ向かっているのか?という問いに答えるのに対して、「ミッション」はわれわれは何故ここにいるのか?という問いに答える
【ミッション】
●ミッションとは企業の存在にとっての目的あるいは理由のこと。その指し示す範囲は狭い場合も広い場合もある
●ミッションとは特定の職業が奉仕すべきニーズ、核となる技能、その職業を規定する基盤となる価値観などを完結に記述したもの。つまり、その職業が競争力を発揮すべく選択した領域や、その職業がその領域で成功できるようにする特質
●ミッションとは、ある組織特有の永続的な目標を明確に記述した公式の文書
●ミッションとは、なぜわれわれは存在するのか?われわれの目的は何か?われわれは何を達成したいのか?といった質問に答える記述である
●ミッションとは、ある組織の存在理由、組織のアイデンティティーを表わし、目的と焦点、方向性を明文化したもの
●ミッションとは事業の目的、競争力の基盤、主な競争分野を定義し、企業の主要目標、価値の定義も含んだ記述である
【ビジョン】
●ビジョンとは感情的に追求される最終目標を表現している
●ビジョンとは組織が次の5~10年間にわたる意思決定を行うための方位磁石
●ビジョンとは、事業を行う領域を定義し、顧客との関係を規定し、企業の戦略的な方向性を詳細化するものである
●ビジョンとは組織の長期的な目標を記述したものであり、組織全般に心の底からの感情とインスピレーションをかき立て、未来を有意義な現実にすべく全員が鼓舞されるような共通の自己了解と挑戦目標を作り出すものである
【バリュー】
●バリューとは、時代を越えて企業が経営活動を続けていくときに、守るべき“原則”、“価値観”であり、創業の精神から切れることなく受け継がれる内容のものである。
●バリューとは、企業が存続している間にめったに変えるものではない。仮に変わるとしても、ミッション、ビジョンよりも、より長いスパンで見直されるべき性格のものである。
●バリューとは、自社を取り巻く経済、市場、技術などの諸環境が激変したときに、エンジンとして機能する。
●バリューとは、市場での競争力を損なう可能性があっても放棄しない価値観、信条
●バリューとは、企業行動の指針(経営の姿勢)を表現するだけでなく、企業の構成員が備えるべき人材要件(あるべき人材像)についても表現する。
良いバリュー(価値観)に必要な条件「小田島品質経営研究所」
①具体的であること
バリューは、トップマネジメントから一般の社員に至るまで、組織を構成する全員の行動様式を規定する「価値観」である。従ってその記述、内容を見ると、全員がどのように行動すべきかがイメージできる程度に具体的な内容であることが大切である。
特に営利事業体たる企業としての価値観を定義するため、社会道徳的な内容ばかりでなく、ビジネスシーンにおける重大な判断の拠り所となりうる内容とすることが必要になる。
②時代を越えた真理たり得ること
事業の対象や達成水準は、時代の流れや経営環境の変化に対応させる必要があるが、事業活動を行うにあたって守らなければならない指導原理は、時代に関係なく大切にすべきものである。企業であれ、個人であれ、「良識ある行動」の判断基準は、おいそれと変化が生じるような性格のものではない。
③人間性に満ちていること
バリューは、企業を構成している全員がその内容に共鳴してはじめてバリューたる機能を発揮する。そのためには、人間性にあふれた内容でなければ、人々の共感は得られない。人間性にあふれるとは、単に慈愛主義に満ちているということではなく、事業活動を行う組織体としての「きびしさ」と「やさしさ」を併せ持った内容のことを意味する。
④社長の想いがこめられていること
元来、ミッション、バリュー、ビジョンの「エンジン」は、社長、経営者の迸(ほとばし)るような想いから出てくる起業の精神である。内容や形式にこだわる必要は全くない。
こだわるべきは、「社長(経営者)の想いが簡潔な言葉に凝縮されていること」ならびに「組織の構成員が大いに共鳴し、同志的な信念ができること」である。
企業内外の誰が読んでも心が躍り、経営者の人格を想像させるような内容を期待したい。
(例)
≪ITベンチャー企業:
ロゴスウェアーの「ミッションと価値観」≫をホームページからコピーさせていただいた。
■ ミッション・ステートメント (私たちの存在目的は何か)
映像/音声/アニメーションを駆使した次世代の情報伝達・知識共有を実現するために、新たなエコシステムをインターネット上に構築し、 人々の仕事、学習、生活の向上に貢献する。
我々は顧客を幸福にするために存在する。 我々は顧客の一人一人のニーズに応え、常に質の高い製品やサービスを提供しなければならない。 適正な価格を維持できるように常に業務効率を改善する努力をしなければならない。 顧客の要望に耳を傾け、顧客の視点に立って業務を遂行しなければならない。
我々は社員を幸福にするために存在する。 我々は、社員一人一人を尊重し、自由な意見交換がなされ、安心して仕事のできる環境を提供しなければならない。 待遇や機会は公正で平等でなければならない。 社員が家族や友人を幸福にしてあげられるように配慮しなければならない。
我々は株主を幸福にするために存在する。 我々は、健全な事業を営み、十分な利益を生み出し、株主へ正当な見返りを与えなければならない。
我々は社会に貢献するために存在する。 我々は、税金を支払い、社員を雇用することを第一の社会貢献としなければならない。
■ 価値観・行動哲学 (私たちはどのような価値観・哲学を持って行動しているか)
『オープンであること、公正であること』
私たちは、肩書きなどにとらわれず、自由でオープンなコミュニケーションによって問題解決や目標達成のために取り組まなければならない。 そして、私たちは、対立意見の交換を強く支持する。 ただし、議論/意見交換は、常に建設的でなければならない。人の尊厳を傷つけるもの、 人を否定するものは一切認められない。 また、最終決断が自分個人の意見と一致しない場合、「意見に賛成ではないが、 目標達成は約束する」ことが私たちの行動哲学である。
報酬の公正・公平な配分方法として、メリトクラシー(Meritocracy。成果主義)の考え方を重視する。 成果をあげる能力は努力次第で誰にでも身につくものである。 私たちは、成果をあげるために払われた一人ひとりの智慧、熱意、勇気、努力、チームワークに対して、相当する見返りが与えられなければならないと考える。
挑戦して失敗したものが悪い評価を受けることは不公平である。 挑戦したものは、挑戦しなかったものよりも常に良い評価が与えられなければならない。
私たちは、価値観を共有して結果をださなければならない。 私たちの価値観に合わない方法で達成された成果に対して良い評価が与えられることがあってはならない。
『現実を直視し、変化し続ける』
隕石は既に落とされた。 私たちを取り巻く環境は常にすごいスピードで変化している。 生存と繁栄と永続のためには、この競争に勝たなければならない。 これが現実である。 取り巻く環境に最高に適合する何かを求めて、あらゆることを試し、変化し続けなければならない。
変化は速いので、昨日新しかったものも今日は古くなり、昨日正しかったことも今日は間違いとなりうる。変化におびえてはいけない。 変化は常にチャンスをもたらすものと歓迎しなければならない。
「業務プロセス」、「戦略プロセス」、「人材プロセス」、「開発プロセス」の全てにおいて、現実を把握し、現実を踏まえて、問題を発見し、改善方法を見つけ、 変化させ続けなければならない。
綿密な計画を立てても、いつ何が起こるかわからず、相手はこちらの思うとおりに動くとも限らない。 うまくいっていないとき、うまくいっている振りをしてはならない。 時が全てを解決してくれると思ってはならない。 現実から目をそむけてはならない。 変化する状況に応じて、私たちは絶えず変化しなければならない。
『スピードを重視する』
スピードはきわめて重要である。 スピードをあげることは目標ではない。 欠くことの許されない条件である。
「できるだけ早く製品を市場投入する」、「できるだけ早く顧客に対応する」、「できるだけ早く意思決定する」。 大企業でさえ、スピードを重視している。 私たちは、これをぶっちぎるスピードで達成しなければならない。
部署間の壁、上司・部下などの立場の壁、会社と顧客を隔てる壁、を乗り越えるために時間をとるような余裕はない。 時間を浪費する全ての不要な障壁を取り除き、その上で、意思決定、管理に混乱を生じさせないシステムを構築しなければならない。
スピードを追求するときに、品質の低下を招くことは許されない。 品質を落とすことなくスピードをあげる方法を考えださなければならない。
『とびっきりすごいものをめざす』
「平均より少し良いもの」は世の中にあふれている。 ありふれた製品やサービスで生き残る余地はない。 私たちがめざすのは、見たこともないような「とびっきりすごいもの」である。 これは、目標ではなく、条件である。
良いアイデアか悪いアイデアかを実行前に判断することは不可能である。 従って、新しいアイデアをより多く出すものは、より多く評価される。
「まったく新しい」、「わくわくするような」製品やサービスを開発するものは最高の賞賛を受ける。
イノベーションに失敗のリスクはつきものである。 挑戦の結果として失敗をするものは、何の挑戦をしないものよりも遥かに高い評価が与えられる。
『成果を貪欲に求める実行力』
市場での競争は戦うことが目的ではない。 戦う以上、勝つことが目的である。
どんなに素晴らしい計画も、どんなに優れた知識も、実行されなければ何の成果も達成せず、従って何の価値も待たない。
私たちが求める成果とは、短期的に数字となって表れるものだけではない。長期的持続的な成長を達成するための個人的/組織的な力の向上を評価する。 私たちにとっては、「短期的な成果」、「長期的な成果」のどちらも重要である。
成功のチャンスは常に困難・課題と共にある。 困難・課題を、達成できない理由にすることは簡単であるが、困難・課題を乗り越えたところにしか成功は存在しない。 従って、困難・課題を乗り越えるための熱意、勇気、行動には最高の評価が与えられる。
『主体的に行動し、全員が参加する』
一方通行の「独裁型」、「自由放任型」のいずれも私たちが意図する経営スタイルではない。 私たちは、経営者・管理職と社員が互いに自由に意見を交換し、 互いの責任・職務に最適なレベルの秩序を構築する。 社員は、意思決定への参加が求められる。
社員の自らが、単に指示されたことを実行するのではなく、自ら考え、状況を判断し、具体的な職務を遂行し、 会社全体のパフォーマンス向上に向け行動することが求められる。 また、これを遂行するための権限と責任が与えられなければならない。
他人を管理できる保障はない、しかし自分を管理することは常に可能である。 自分の限界を試し、自己ベストを更新していく、主体的な行動が求められる。 これを支援するために、社員の全てに対して、必要な情報が共有され、意思の疎通が図られ、力を存分に発揮し、いつでも何かを学ぶことができる環境、 機会が提供されなければならない。
『顧客の視点で考える』
Win-Winの実践こそが、顧客と私たちが長期的に良好な関係を築く基盤となる。
私たちは、顧客の要望を継続的に学習し続け、顧客サービスを持続的に進化させなければならない。
製品開発、サービス、価格体系は、顧客の視点に立って計画され実施されなければならない。 自分たちだけの都合に合わせた製品、サービス、価格体系を実行してはならない。
私たちが良い仕事をしたかどうかは、顧客の評価によって決定される。
社員の全員は、どんな職種であろうと、顧客のことをよく知らなければならない。顧客のニーズや要望を知らなければならない。 私たちの未来を決めるのは、顧客である。
『チームに貢献する』
自分自身の固定された役割に固執せず、チームとしての私たちの目標を達成するために、従業員同士が互いを尊重し、激励し、足りない部分を補い、協力し合あうことを重視する。
知識は、組織で共有されてこそ本当の価値を持つ。 従って、創造された知識を、組織で共有できるようにするための行動が重視される。
私たちの行動倫理は、「個人の利益」を重視するものではなく、「組織の利益」を重んじたものである。
各部署間において、互いが 「相手が自己利益を追求するあまり、自分たちの利益を阻害している」と考えるのは間違いであり、また勘違いである。 お互いはオープンに話合い、共通の目標を目指すパートナーであるという認識に立って協力関係を築かなければならない。
組織全体のパフォーマンス向上のために、常に全体の最適化を優先させなければならない。 個人あるいは部署の部分最適化によって組織全体のパフォーマンスを犠牲にしてはならない。