海老原博幸が亡くなって30年

 今から30年前の今日91年4月20日は元世界フライ級王者・海老原
博幸が、肝機能障害のため51歳で亡くなった日だ。

 海老原博幸といえばカミソリパンチと呼ばれた強打で生涯成績68
戦62勝(33KO)5敗1分を誇る
3人目の日本人世界王者だった一方、
持ち前のハードパンチに拳が耐えられず度々骨折を繰り返し2度の
世界王者に輝くも2度とも防衛できずに終わった悲運のボクサーで
もある。

 天性のリズムと絶妙のタイミングから放たれる左ストレートは特
に素晴らしいだけでなく、相手の急所をピンポイントで打ち抜ける
テクニックも併せ持っており‘この強打に防御技術を身に着ければ強
いチャンピオンになるだろう’と海老原の戴冠試合でジャッジをした
リング誌のナット・フライシャー編集長は語っていたらしい。

 ただ裏返せば素晴らしい強打と防御カンはガードやストッピング
にパーリングも甘くなり、カンの良さが却って防御に欠点を残す形
になっていた。

 更にピンポイントで急所を打ち抜けるテクニックはボディを攻め
ずともガードの間を貫通できるためヘッドハンターになっていたの
だが、それゆえ肘や頭を打つ結果になり試合中に拳を痛めたり骨折
する要因にもなっている。

 また名ライターとして知られる故・佐瀬稔氏は‘海老原博幸への
詫び状’という追悼記事を書いているのだが、それを読んでいると
なかなか興味深い。

 タイのバンコクで行われた海老原と前王者ポーン・キングピッチ
の再戦前に両国の通信事情から予定原稿を書く事になったのだが、
その中に1・海老原のKO防衛、2・海老原の判定防衛、3・ポーンの
判定勝ちの3つがあり1と2はスラスラ書けたが3の記事を書くのに
苦労したとの事。

 そして記者の目から見た海老原の弱点を基にして書いた原稿が
‘海老原のフットワークは前・後とリズムはいいものの言いかえれ
ば単調なのを中盤から見破ったポーンは海老原が前に出た時に軽
い右を次々にヒットさせポイントをピックアップしていき僅差の
判定でタイトルを奪回した’というもの。

 この単調なリズムの弱点を海老原に伝えるべきかと考えたが教
えると予定原稿が使えなくなるため黙っていたら、展開はその通
りになってしまいタイトルを奪われた。

 それでもすぐにタイトルを奪回できると思ったら再三にわたる
拳の骨折などのケガに泣かされ、一旦返り咲くものの前回同様初
防衛に失敗し引退する事になったのでバンコクで弱点を教えてい
ればと悔やまれると佐瀬氏は記していた。

 才能に恵まれた選手は素晴らしいが、その才能ゆえの弱点が響
いてしまうという事を知らしめてくれたのが海老原だったと思う。

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