ロンドン五輪の男子体操はエースの内村航平が個人総合で84ロス五輪の
具志堅幸司以来の金メダルに種目別・床と団体戦の銀の3個を獲得した。
前回の北京が団体と内村航平の銀2つで04アテネでは団体の金に平行棒の
銀、あん馬と鉄棒の銅2つの合計4だから、北京よりは上の成績だがアテネ
よりも やや落ちるというところだろうか。
基本的に各種目のレベル全体が飛躍的に進化してしまった現在は1人の
選手が金を複数獲得するというのは難しい時代になっている。
特に個人総合のメダリストは種目別で活躍するのが難しくなっている時代
だからメダルの大量獲得に拘る中国などは最初から個人総合は捨てて種目
別のスペシャリストばかりで団体戦に臨んでいるし、ヨーロッパ諸国の多くも
この路線を踏襲しているのでスペシャリストを揃えるというメンバー構成は
ある意味主流になっているのだろう。
どうしても金を含めたメダルを大量に獲得すると盛り上がるのでスペシャリ
ストばかりでのメンバー構成を日本も・・・という意見があるようだがアテネ・北京
のエースで代表コーチの富田洋之は‘スペシャリストばかりのメンバー構成
では今回の山室のようなアクシデントが起きた時にメダルを取るのは難しい’と
語っている。
もともと体操競技は種目別のスペシャリストよりも個人総合のオールラウンダ
ーの方が尊敬されるわけで伝統的に体操強国だった日本は その価値観が
脈々と流れているし、今の流行がスペシャリストだからという事で一旦その
伝統を絶やすと立て直すのは容易ではないのも事実。
ならば内村が大会終了後に語った‘5人のメンバーでオールラウンダー3人を
2人にした方が・・・・’というのが妥協点かもしれない。
ちなみに採点競技である体操やフィギュアスケートには難易度の高い技に
対する挑戦という理想と確実に勝つという現実路線の間で折り合いを付ける
必要がある。
思えばロス五輪で金メダルを獲得した具志堅幸司と森末慎二はロス五輪の
採点基準が着地をピタリと決めれば高得点が出る傾向だったので、五輪の
ために開発した難易度の高い技が着地が乱れるリスクが高かったため あえて
封印し観客が沸く伸身宙返りで着地を決めての栄光だった。
今回の内村も個人総合では落下のリスクがあった鉄棒でのコールマンを あえて
外して難度を下げての金となった。
種目別でメダルを取るならコールマンは絶対に成功させないといけないだろうが
個人総合で金を狙うなら少しぐらい難度を下げても大丈夫だったわけで、そこの
折り合いを付ける事ができたからの個人総合の金だったのだろう。
そういう意味では4年後のリオで団体と個人総合の金メダルを取るためには
理想と現実の どのレベルで折り合いを付けるかというのが最大の焦点になる
のではないだろうか。