ウルトラマンネクサスのEP35で人体実験の最中にナイトレーダーから救出
された憐はそれまで語ろうとしなかった自らの身の上話を初めて孤門に語るの
だった。
プロメテの子として生まれたが致命的な欠陥のために特効薬であるラファエル
が完成するのを待っていたもののアテはなく、周りに迷惑をかけるだけで死への
カウントダウンを待つ事に耐えられなくなってアカデミーを脱走したという事。
もともとプロメテの子はアカデミーという閉鎖空間の中でのみの生活だったの
だろうから、ほとんどの者達が顔見知りで自分の運命を知っている。
ならば死ぬ前に外の世界を知りたいと思うのは当然の事だろうし、ましてや
‘海を見に行く’という目的のために未来を見る事ができる吉良沢が止めるのを
振り切って脱走した事がある憐だから、自分の運命を知らない人達の中で残さ
れた人生を生きてみたいと思うのも分かる。
‘陽の光や木々や風そんな当たり前の物の中にいるだけで憐はとても嬉しそう
だった’というのはEP28で憐を見て感じた孤門のモノローグだが、閉鎖された
アカデミーの中での世界しか知らなかった憐が なぜ過酷な運命を知りながら
嬉しそうにしていたのか理解できる。
そこにウルトラマンの光が降ってきたのだから、その‘力’を得た事により残りの
人生を更に有意義に使えると考えたのも当然だろう。
憐のキャラが純粋培養されたような天然系の中にシリアスさが同居するという
もので、実際に孤門が憐編の最初で‘透明感溢れる笑顔の中に深刻な物を抱え
ている’というモノローグが そのまま当てはまったわけだ。
その点では先代のデュナミスト・姫矢准も理想主義者ともいえる純粋さを持って
いたが、それゆえ人間社会のドロドロした部分に耐えかねて・・・という感じだった
のに対し間逆の環境で育っていたのが分かる。
それで‘自分の命が残り少ないならウルトラマンから得た光の力で見ず知らずの
人々を守る事で死んでも悔いはない’と考えての全く自分のダメージを省みない
捨て身の戦いを続けていたのだった。