日本サッカー界の分水嶺の試合から1年

 昨年の今頃は南アフリカW杯が行われていて昨年の今日2010年6月14日に
岡田武史監督率いる日本代表はブルームフォンテーンのフリーステイトスタジ
アムでカメルーン相手に初戦を戦い本田圭祐のゴールで挙げた1点を守りきり
1-0で勝ってW杯出場4回目にして初戦を白星で飾る事になった。

 そしてこの試合こそが日本代表のV字回復への文字通り分水嶺となったわけで
ある。

 大会前の岡田ジャパンの評判は酷いものだった。
 病で倒れたイビチャ・オシム監督の後を引き継いだ岡田監督は‘W杯ベスト4’を
目標に設定したもののアジア最終予選でも煮え切らない試合をして唯一のライ
バル・オーストラリアにはホームで0-0、アウェーで1-2と1分1敗だったし予選を
突破した後のオランダ遠征でも前半は互角に戦ったものの後半息切れして0-3の
完敗に終わり‘こんなのでW杯ベスト4か?’と酷評されたのだった。

 年が明けても煮え切らない試合ばかりで壮行試合として行われた韓国戦では
惨敗し、監督が進退伺いを出すなどという醜態を演じたのでカメルーン・オランダ・
デンマーク相手に勝ち点1でも取れたら御の字というのが希望的な見方だった。

 実際98年の初出場の時は‘勝てるのでは’と思われたジャマイカがいたし
02年は自国開催、06年は‘黄金世代’といわれたシドニー組中心で4年前の
中心選手が そのまま経験を積んで活躍していたので始まる前からワクワク感が
あったのに対し‘最強’といわれたジーコジャパンがクロアチア相手の引き分け
のみで当時‘格下’と思われたオーストラリアにすら大逆転負けしたので‘世界の
壁’の厚さを想像以上に感じていたのだ。

 更に岡田ジャパンの中心メンバーは‘谷間世代’といわれたアテネ組が中心。
 最強のジーコジャパンでも確実に勝てると思われたオーストラリアにすら負けて
いたので、確実に勝てそうな相手が見当たらないグループでは‘引き分けで勝ち
点1を取れれば御の字’という事すら希望的で殆どが3戦全敗が多くを占めて
いた。

 奇しく岡田ジャパンが初戦を戦うブルームフォンテーンのフリーステイトスタジア
ムは95年にラグビーW杯でスモールブッシュ・ジャパンがウェールズ・アイルランド
・ニュージーランド相手に3戦全敗しただけでなくニュージーランドには17-145と
いう未だにW杯記録として続いている空前絶後の国辱としか言えない大惨敗を
喫した会場なのだ。

 そんな中で流れが変ったのが岡田監督が不調ながらチームの中心として拘り
続けていた中村俊輔を外して守備的な布陣に切り替え更に本田圭祐の1トップと
いう思い切った布陣を敷いた事。

 これで‘まずはしっかり守る’という意思統一ができイングランド戦やコートジボ
アール戦でも韓国戦でガタガタだったDFが安定した中での敗戦だっただけに
一筋の光明が見出せた感じだった。

 初戦の相手のカメルーンはランキングがグループで2番目だったもののアフリカ
勢の特色である首脳陣と主力選手達の軋轢があるというのが付け入る隙で
‘しっかり我慢して守っていたら相手がじれて’とは思っていたが。

 そして実際39分に松井大輔が右サイドから上げたクロスを本田が決めて先制。

 前半を終えて1-0というのは4年前にカイザースラウテルンのオーストラリア戦と
同じ状況で、この時は猛攻を受けただけでなく監督の不可解な采配や守り切ろうと
するDF陣と追加点を挙げようとする攻撃陣のズレもあって残り5分から3点を失うと
いう最悪の逆転負けを喫していた。

 だから4年前の反省がどう生かされるか学習能力が試される状況だったが全員が
守りきると意思統一されていたので11人が体を張って後半のカメルーンの猛攻を
凌ぎ切って1点を守り抜き番狂わせとも思われる勝利を挙げたのだ。

 この勝ち点3が効いて2試合目のオランダには敗れたものの0-1だったため最終
戦のデンマーク戦は引き分けOKの状況で戦う事ができ本田と遠藤保仁のFKなど
で3-1と快勝して国外開催のW杯で初の決勝トーナメント進出となったのだ。

 カメルーン戦の後に一部の高名なサッカーライターが‘恥ずかしい勝利’などと
酷評したのだが、結局W杯は どんな見事な試合をしても負けたら意味がないし、
どんな無様な試合をしても勝てば次に繋がるという事実が証明された。

 そしてW杯の活躍で長友佑都をはじめとした代表選手達がヨーロッパのクラブに
移籍して活躍するという1年前の今頃では全く考えられなかった状態になったのだ。

‘これまで積み上げてきたものをW杯で’というスタンスでコンディションの悪い中村
俊輔を中心にしたチームで臨んでいたら3戦全敗という結果になっていたのは確実
で、そうなると今の状況は夢のまた夢だっただろう。

 ギャンブルとも思える決断を行った岡田武史監督にはサッカー界を上げて感謝
するべきだろうし、天国と地獄が紙一重だと痛感したカメルーン戦からの1年後で
ある。

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