北島康介と‘過ごした’12年・・・・

誇り高き王者、散る＝北島、前半勝負で個人無冠〔五輪・競泳〕(時事通信) - goo ニュース

　日本時間の早朝に行われたロンドン五輪の男子200ｍ平泳ぎに出場した北島
康介は前半レースを引っ張ったものの終盤に失速する形で現在のNo1である
ハンガリーのダニエル・ギュルタに敗れて4位に終わり100ｍ同様アテネ・北京
に続いての3連覇はならなかった。

　たしかに残念な結果ではあるが個人的に こうして復帰してきた北島の決断
には敬意を払いたいし日本競泳界における21世紀最初のスーパースターの
今五輪で最後の個人種目の泳ぎを堪能できた。

　思えば日本男子競泳界の隆盛は北島の登場と共にあった。

　金こそ取れなかったものの銀2・銅2と72ミュンヘン以来の複数メダル4個を
獲得した00シドニー五輪でのメダリストは全て女子で、男子は山本貴司と北島
康介の入賞が目立つぐらいだったが特に北島の100ｍ4位はタッチの差だった
のが印象深い。

　その翌年に福岡で行われた世界選手権で銅メダルを獲得すると02釜山アジ
ア大会で世界記録を樹立して03世界選手権で初優勝を飾り04アテネ五輪
では100ｍと200mの2種目制覇を達成、更に08北京五輪でも2大会連続での
2種目制覇と正しく‘キング・オブ・ブレスト’の地位を不動の物にしたのだった。

　日本の競泳はアテネでは柴田亜衣も金を獲得し金3・銀1・銅4という素晴ら
しい成績を残すと北京でも金2・銅3という活躍を見せたのも、北島の活躍で
他の選手達も刺激を受けて自信を持って泳ぎ始めたというのが原因の1つだと
思う。

　なにせメキシコ五輪から観戦している私にとって競泳での日本人選手の活躍
は72ミュンヘンの100平泳ぎの田口信教と100ｍバタフライの青木まゆみの
金獲得以降には88ソウルの100ｍ背泳ぎの鈴木大地と92バルセロナの200ｍ
平泳ぎの岩崎恭子があるぐらいで、76モントリオールや84ロサンゼルスは2大会
連続メダル０という惨敗だったイメージの方が強い。

　しかも96アトランタでは女子を中心に‘史上最強’と言われ複数メダルが期待
されたにも拘らずメダル０にはガッカリしていた中で迎えたのがシドニー五輪
だったのだ。

　今回のロンドンでは8月2日現在 銅ばかりではあるが7個のメダルを獲得して
いて、その中には寺川綾や松田丈志といったベテランだけでなく高3年生の萩野
公介をはじめ鈴木聡美や星奈津美といった若手選手まで年代的に幅広い。

　これも北島の活躍が刺激になっているのは間違いないだろうし、01年以降
11年にわたって日本競泳陣のけん引役を果たしていたのだ。

「チャンピオンのまま引退するのは格好よく映るけど、ちっとも格好よくはない。
　体が決定的に壊れてないのに引退するのは卑怯だし、格好を気にするヤツは
臆病だ。

　まだ闘える、だったら例え負けても闘うべきじゃないか。

　失う事を恐れるのは未練なだけだ、正々堂々と闘って負けたら相手にチャンピ
オンベルトをくれてやればいい。それが新しい男への礼儀というものだ。」

　というのは輪島功一が沢木耕太郎著のコホーネス・肝っ玉で柳済斗から世界
タイトルを奪回した直後にチャンピオンのまま引退する事を薦められた時の
反論だ。

　北島が格好を気にするなら北京での2種目連覇を達成した時点で引退していた
だろうが前記したような輪島功一のような心境で現役を続行したのではないかと
思ってしまう。

　北島の背中を追って200ｍ平泳ぎで銅メダルを獲得した立石諒をはじめとした
日本人選手が育ったし、先日亡くなったダーレンオーエンやギュルタなども北島を
目標に世界新記録を出すまでレベルアップしているのだから日本だけでなく世界
的にも影響を与えた功績は計り知れない。

　まだ北島本人が楽しみにしているチーム戦・400ｍメドレーリレーが残っている
ので このレースを とりあえず北島康介12年間の集大成として欲しいし、そこで
泳ぐ姿を目に焼き付けておきたい。