宮地神仙道

「邪しき道に惑うなく わが墾道を直登双手
または 水位先生の御膝にかけて祈り奉れ。つとめよや。」(清水宗徳)

モンマルトルの魔女

2006年04月05日 | Weblog
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20世紀の初め頃のフランスでは、魔女狩りは
数十年前に既に廃止され、反対に自然魔術や
神秘学に対する人々の関心が高まった時期でした。

パリのモンマルトルの丘に構えるフランソワ-ズの
占いの店も大変繁盛していました。彼女がこの地で
商売を始めたのは20歳ぐらいの時でしたが、それから
20年を過ぎた今も変わらぬ年齢に見え、またそこで
店を開く前に彼女が何をしていたのか、誰も知らなかったのでした。
噂では彼女の祖母は19世紀中頃のフランスの皇帝であった
ナポレオン3世に仕えた占い師であるとの事でした。

ある日友人である画家のジャンがフランソワ-ズを自宅
に招待しました。
「ジャン、あなたも随分年をとったのね。」
「ああ、もうすぐ60歳だからね、仕方ないよ。でも君は昔と
ちっとも変わらない。一体どんな魔法を使っているというのだい?」
「実は随分昔にある伯爵から"不老不死の魔法"を授かったの。
それでル・コンキスタという魔法薬を飲んでいるのよ。
だから私は長生きしているの。私の祖母がナポレオン3世の占い師
であったのではなく、実は私がそうだったの。」
「えっ、まさか…。」
フランソワ-ズは微笑むと彼の自宅を後にしました。

それからしばらくして彼女は突然店をたたみました。
ジャンは窓からフランソワ-ズが春風の様に軽い足取りで橋を渡って
行くのを見ました。
「フランソワ-ズ!何処に行くんだい?」
「さようなら、ジャン!きっといつかまた会えるわ。もしかしたら、
あなたのお孫さんと恋に落ちるかも!」

フランソワ-ズはそうして去って行きました。きっとまた何処かの町で
お店を開いている事でしょう。
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この話しは不死を肯定的に扱っている感がありますが、
現実に自分がこの話しの様な不死を得るならば、果たして
幸福であるかと感じた次第です。
死という対比があっての生であり、そうでなければただ惰性で生を
引きずって生きる事になってしまう様に思われますし、また他者の
死を永遠に傍観し続ける事に耐えられなくなり、結果転々とし
続ける生き方になってしまうのかもしれません。
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