本日 大陸の富裕層が伽羅を買い占めて世界的に高騰と不足を招いているというニュースがあり、
実際 単なる資産として買占めに走る行為は 非常に見苦しく 罪過を重ねる行為になりますが、
一方 「中国を叩く」のが目的で 大陸の事情をよく調べないままニュースにして、
そして 「だから中国は民度が低い」という叩きのコメントが延々と並ぶ
そういった風潮にも 少々うんざりしています。
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中国人が買い占めに走る「伽羅」に日本の仏教界が困っている
NEWS ポストセブン 7月30日(水)7時6分配信
いつ崩壊するか分からないと囁かれる中国バブル。
それだけに中国の富裕層は、虎視眈々と私有財産を増やそうと買い占めを行っているわけだが、
ゴールドや海外の土地といった高価なものから、おむつや粉ミルクといった日用品まで、
自分たちが得するものであれば、とことん手を伸ばす姿勢は節操がないというかすごいというか…。
中国では土地の私有を認めておらず、土地の社会主義公有制を実施している背景がある。
それだけに私有財産を増やせるものであれば、何にでも飛びつく習性があるのだ。
そんな彼らが今ひそかに買い占めているものが、『伽羅』である。
伽羅とは、ベトナムを主とした東南アジアで採れる香木の一つで、
日本でも高級なお線香の原料として重宝されている品物。
その匂いは、“神が創った香り”とまで言われ、数年前にワシントン条約の2種に指定され、
許可がないと輸出入ができないほど。
もちろん、それに伴い価格も高騰し、20年前には10gで1万円だったものが、
現在では、1gで2万円前後に変動してしまっている。採出も難しくなる一方で、
さながらその価値はゴールドのように扱われているのだ。
今後も価格が上昇することが期待されるため、中国人が私有財産として目をつけはじめたわけだが、
この状況に困っているのが日本の仏教界だという。
「伽羅は、格式の高い寺社で使われる線香の原料になります。
ですが、その伽羅が中国人の買い占めに遭い、とにかく手に入らない。
手に入ったとしても価格が急騰していて、非常にコストがかかる。
お線香だったら何でもいいじゃないかと言われるかもしれませんが、
お寺にも格付けがあるので、そういうわけにもいかない」(寺社関係者)
実際、日本の寺社界隈では、「中国人の伽羅買占めを何とかしろ」という戒厳令が敷かれているほどだとか。
「そもそも中国は道教の国です。ロウソクや線香を使いますが、その質は重要視していない。
むしろ、祭壇に「焚紙炉」(ふんしろ、紙の焼却炉)があり大量の紙銭を燃やすことこそ意義がある。
加えて、中国は大規模な廃仏毀釈を繰り返している歴史があり仏教への理解度は低い。
伽羅を宗教的な理由ではなく、私有財産目的で買い占めているのは、仏僧としてやりきれないです」
(前出・寺社関係者)
紙銭を焼くことで、あの世に送金し、現世の罪を軽くする…そんな意味を含むこの行いは、
まさしく“地獄の沙汰も金次第”という中国人の考え方そのものだという。
現世でも、あの世でもお金が第一。中国人にとっては、信じるものは金だけということなのだろう。
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「中国は道教の国」という説明がありますが、
現実は 道・仏・儒の三教の国であり
特に現在 中華仏教は 日本仏教よりも発展している背景があり
僧や尼僧は結婚できず 在家でも菜食などの戒律を守る人は沢山おり、
また 五台山をはじめとした有名な仏教の霊山聖地もあります。
そして 「富裕層の拝金主義によって伽羅が買い占められる事」を嘆きながら、
日本では単に表面的な 「寺の格付けによって 高級香を使わなくてはいけない」という
俗物としての比較では どちらもあまり変わらないように見えます。
チベット仏教の経典では 特定の仏尊に捧げるための香の調合法が記され、
そういった調合法を守るために 伽羅が必要であるという場合は理解できますが、
単に「寺の格付けを守るため」という理由では
客観的に見た 伽羅の必要性としては 優先順位が最も低くなってしまいます。
また 「紙銭を焼くことで、あの世に送金し 罪を軽くする」と書かれているのは
死者の為に行ったり 功徳を積むための事で
また 中華仏教では 紙銭で元宝や服を折って燃やし
元宝や服を死者に送るなど そういった事も行われていて、
「紙銭を焼いて 神仏や故人を供養する伝統的宗教行為に拝金主義が顕れている」と書かれていますが
高級車に乗って 戒名や水子供養で稼ごうとする日本仏教の方が 個人的には よほど拝金主義に見えます。
わたくし自身は 伽羅の買占めに走る中国富裕層を擁護する気持ちは一切持っていませんが、
中国富裕層の買占めだけに批判を向ければよいところを、
よく調べもしないまま 中華仏教や道教まで叩こうとすれば
結局は
「どうせ日本仏教は 戒律を遵守してないので 意味があって伽羅を必要とはしていない」
などという事になって ブーメランになってしまうように思われます。
このニュースは
「中国富裕層の信仰心の無さを嘆きながら、
中国の伝統宗教を叩く事で終わっている」
という 主張の軸がよく見えない形で終わっており、
昨今は とにかく よく調べもしないまま 単なる自己の印象によって
「中国は仏教への理解度が低い」
「中国は一人っ子政策の結果 軍隊が弱体化し 日本と戦争をしてもすぐ負ける」
といった 「中国は日本より低い」の結論に早く持ってゆこうとする論調が非常に多い印象がありますが、
そういった論調は無益どころか
敵でなかったものまでも 敵に回す恐れがあり 却って日本にとっても有害になると思われます。