東京多摩借地借家人組合

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火災で焼失した借地上の建物を再築で地主の承諾は必要か

2006年10月09日 | 増改築と修繕
(問)火災で借地上の建物が焼失してしまった。20年間の借地契約の残存期間は4年であるが、再築することは出来るのか。又、地主の承諾がいるのか。

(答)借地借家法施行(1992年8月1日)前に設定された借地権については建物滅失後の建物築造に関しては、なお従前の例によるとされている(借地借家法附則7条)。相談者の事例は借地法7条が適用される。7条には次の趣旨のことが書かれている。(1)借地権の存続期間が終了する前に借地上の建物が滅失しても借地権自体は消滅しない。(2)借地人は新たに建物を築造することが出来る。(3)その再築建物の耐用年数は、借地権の残存期間を超えることが多いが、地主が滅失建物最築に異議がなければ借地権の存続期間の延長を認める。(4)借地権は建物滅失の日から起算して堅固建物については30年間、その他の建物は20年間存続する。(5)但し、残存期間の方が長い時は、その期間による。(6)また、地主が借地人の再築に反対する旨の異議を述べた場合、その異議の効果は、従来の借地権の存続期間が延長されないだけである。従って借地人は建築工事を中止する必要は無く、そのまま建物の建設が出来る。
 だが増改築を制限する特約がある場合はどうであろうか。実際の借地契約では増改築をする場合は地主の承諾が必要であり、承諾なしに増改築をすると地主は契約を解除出来るという特約条項がある。このような特約は建物が火災で焼失した場合にまで適用されるのか。借地法7条は、建物が滅失しても建物を再築することが出来ると規定している。7条の規定に反して再築を禁止する特約は、借地法11条の規定によって借地権者に不利なものとして無効とされる(最高裁1958年1月23日判決)。従って増改築を制限する特約は火災・地震・風水害が原因で滅失した建物の再築までを制限したり禁止する趣旨ではないことは明らかである。判例も「建物を新築する時は、地主の承諾を得る旨の特約があるとしても、この特約は、消失した建物を再築する際にも地主の承諾が必要である趣旨ではない」(東京高裁1958年2月12日判決)。このように増改築に制限のある特約がある場合でも火災によって建物が滅失し、それを再築する場合は地主の承諾は不要という結論になる。

 10月7日に退院致しました。

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