女性労働問題研究会主催による第39回女性労働セミナー「高齢女性の貧困と労働」が9月16日午後1時から全労連会館ホールで開催されました。
第1部は東京都立大学教授の阿部彩氏より「データーで読み解く高齢女性の貧困」と題して、調査資料に基づいて貧困の実態について報告しました。
これまでに貧困対策は、母子世帯→ホームレス(2002年~)→勤労世代の男性(2008~9年の派遣村)→若いシングル女性(2012年)→子ども(2013年~)と、「女性の貧困」ではなく、「貧困女子」がターゲットにされています。1985年と2021年を比較すると、女性の貧困率は高齢期になるほど高くなる傾向があり、2021年では70歳以上から貧困率が急上昇しています。
貧困率の男女比較(図Ⅰ)では、現役世代(20歳~64歳)では夫婦のみ世帯と夫婦と未婚の子のみ世帯では貧困率が低く、高齢者(65歳以上)の単身世帯では男性30・3%に対し女性44・1%際立って女性の貧困率が高くなっています。配偶者状況別(未婚)貧困率(図2)では、未婚の65歳以上の男性・女性とも貧困率は高く、現役世代(20歳~64歳)では、男女の貧困率の格差はほとんどなく、両者とも2018年から2021年にかけて上昇傾向にあります。女性の貧困問題は「若い女性の問題」ととらえられ、女性の支援策は、仕事と育児両立支援策に集中し、「女性の貧困対策」の視点が欠けていると指摘しました。阿倍教授は、最後に貧困率を下げる対策として、家賃補助など住まいに対する支援が必要であると強調しました。
第2部では、特別報告「高齢女性の貧困~年金裁判のたたかいから」について、年金引下げ違憲訴訟東京弁護団の今野久子弁護士が報告しました。続いて、パネリストとして①年金生活者「175人の声から」中川滋子さん(全日本年金者組合女性部長)、②「
高齢者の住宅問題」全借連細谷紫朗事務局長、③「高年シングル実態調査から」大矢さよ子さん(わくわくシニアシングルズ代表)より当事者の発言と報告が行われました。
全借連の細谷事務局長は、民間賃貸住宅の実態に
ついて、高齢者が立退きを請求されても転居先が見つからない。高齢賃借人の残置物の処理や賃借権相続問題が入居拒否の原因となっている。高齢者等が円滑に入居きる対策として住宅セーフティネット法が改正されたが、あまりにも民間まかせの法律で、高齢者の住宅問題解決には様々な課題と問題点があり、家賃補助等政府の支援策の抜本的拡充が必要である等報告しました。
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