国交省の補助事業である「賃貸住宅の賃貸借契約に係る相談対応研修会」が11月21日にオンラインで開催されました。
講義は、原状回復をめぐるガイドラインの再改定版の解説が久保田和志弁護士から、賃貸住宅標準契約書の解説を大塚浩弁護士が、民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改定版)について升田純弁護士から講演がされました。
原状回復ガイドライン(再改定版)の解説では、はじめに原状回復トラブルについて2つの次元があり明確に分けて理解することが必要であると指摘。①民法上の原状回復義務とは、令和2年の改正民法621条で明文化され、賃借人が故意過失により、毀損・汚損した場合の損害賠償であって、自然損耗や経年変化は原状回復には当たらない。
②特約に基づき請求する場合については、民法上の義務を超える責任を課す合意について、合意の存在、合意の成立、合意の有効性の3つの点から判断することが必要と指摘しました。合意の成立については、最高裁平成17年12月16日の判決が重要で、判決では「賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が契約書の条項自体に明確に明記されているか、明らかでない場合には賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、その旨の特約が明確に合意されていることが必要である」。従って、特約は最高裁判決や消費者契約法に反しないものでないと認められず、極めて限定的になると指摘しました。
また、原状回復のガイドラインは裁判の判例にも引用され、法律に近いものとして運用されています。ガイドラインでは、建物価値の減少について、①A建物設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)、①B賃借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)、②賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような損耗等と定義され、①は賃料でカバーされるもので、賃借人は修繕義務を負わない。②については賃借人が負担すべき費用について検討が必要であるが、建物設備の経過年数により耐用年数等を考慮して賃借人の負担割合が減価される。トラブルの裁判例も詳しく紹介されました。賃借人の使い方によっては一定の負担を課す裁判例もあり、損害の相当性の判断は異なります。