東京多摩借地借家人組合

アパート・賃貸マンション、店舗、事務所等の賃貸のトラブルのご相談を受付けます。

「高齢者お断り」の賃貸住宅 資産があっても家族がいてもダメ 65歳以上入居可能は全物件の5%とも

2024年11月25日 | 法律知識

「父が賃貸の契約を断られたのよ。私が毎日寄るし、家賃の支払いも責任持つって言ったけどダメだったの…」友人から聞いて驚いた。
80代のお父様は、しっかりされていて、金銭面の不安もない。
友人は都内の戸建てに住んでいて、お父様は近くの賃貸物件にひとりでお住まいなのだが、より彼女の家に近い物件が見つかったので引っ越そうとしたら、審査が通らなかったというのだ。
高齢者の賃貸契約は難しいと聞いたことはあったが、まさか、問題なさそうな人でも断られるとは…。高齢者の賃貸物件探しの現状はどうなっているのか。
高齢者向けの部屋探しを専門で支援する、国内唯一の不動産会社「R65不動産」の山本遼代表に話を聞いた。

■不動産会社は機械的に年齢だけで断る「40歳からお断り」も

【R65不動産 代表取締役 山本遼さん】
高齢というだけで賃貸物件を借りにくいのが現状です。
65歳以上の方が入居可能な賃貸物件は、全体の約5パーセントしかありません。
不動産会社は、その人を見るのではなく、単純に「年齢」だけで断る。
基準は会社によってバラバラで、極端な例ですが、「40歳からお断り」という会社もあります。
弊社のお客様で、世田谷区にお住まいのお医者様が、持ち家を売却して、息子さんの近くに賃貸を借りようとしたのですが、高齢だからと断られ続け、必死で探して3か月後にようやく決まりました。
息子さんは豊島区で開院しており、「近くに住んで手伝って欲しい」と言われての住み替え。見守りも大丈夫ですし、お金もあります。それでも貸してくれません。
単純に年齢だけで断られる…「65歳以上は断っているのでスミマセン」と機械的に対応されてしまうのです。しかも65歳という年齢に大した理由がある訳ではなく、「65歳=高齢者」だからダメ。不思議ですよね。
「この人は大丈夫でしょう」というような方でも、「社内規定だからダメだ」と言われてしまうのです。

■「高齢者は何が起こるか分からないから貸さない」

高齢者が借りられない理由は、「孤独死」「認知症」「滞納」。
亡くなられるのが怖いから貸したくない。
認知症になって近隣の人に迷惑をかけられたら困るから貸さない。
家賃の滞納の不安があるからと断られる訳です。
「高齢者に貸すと何が起こるか分からないから断っているんです」と言われます。確かにこれは非常に難しいところで、大家さんの立場に立ってみると、「以前、高齢者に貸して問題が起きました」という方も結構いらっしゃるんですよね。現在、およそ430万世帯の高齢者が賃貸物件に住んでいますが、孤独死を防ぐための「見守り」を付けている会社やオーナーさんがどれぐらいあるのでしょうか。見守りの方法も、家の中に監視カメラを付けるとか、高額な見守りサービスを利用するとか、借り手の負担が大きくうまくいかないケースが多いようです。

■家の引き渡し日が迫っているのに、住む所が決まらない…

今、問題なのが「建て替え」です。
バブル期に建った建物が、戸建ても集合住宅も、ちょうど建て替えの時期が来ています。
高齢者で賃貸というと、「ずっと賃貸暮らし」だと思われがちですが、今は持ち家を売却して、賃貸に住みかえる方も多いのです。
しかし、ここが困っている部分でして…。
「家の売却が決まっていて、引き渡し日も決まっているのに、次に住む家が無いんです」という切羽詰まった問い合わせが数多くある
のです。
資産はあっても部屋を借りられない。
年齢だけで判断する状況を変えなければ、いつまでもこの状態は続いてしまいます。

■高齢者の滞納率は単身の社会人より低い 不動産会社の意識改革が必要

不動産賃貸の店舗って、20代30代の若いスタッフの方が多いんですよね。
だから高齢のお客さまが来られた時に、「なんでこの人は70歳で賃貸を借りるのだろう」と分からない。
分からないから「変な人なんじゃないか」「身寄りがなくて大変なんじゃないか」と思ってしまう。
また、普段から大家さんが「高齢者はね…」と言っているのを聞いたりしているので、お客さまの話をあまり聞かずに断ってしまうの
です。
私自身も昔はそうでした。
高齢者の物件探しは時間がかかるからと、断ってしまっていました。
ですがある時、高齢の方の物件探しを担当した時に「その人を見ないで、年齢だけで断っているのはおかしい」と改めて気が付いたの
が、R65の起業のきっかけです。
最近は、不動産会社から「どうやったら高齢者に賃貸を貸せますか」と聞かれる機会が増えてきたので、社員向けのセミナーなどをさ
せて頂いています。
例えば、「家族が近くにいるから見守りは任せられる」とか、「高齢者の滞納率を実際のデータで見ると、単身の社会人より低い」と
いったことを、ひとつひとつ丁寧に説明していくと、不動産会社のスタッフの意識にも変化が出てきて「そうだよな」となってきます。
「高齢者の物件探し、前向きに取り組んでみようかな」という会社が一社でも増えることを目指しています。

■「保証会社」「見守りサービス」高齢者に貸すリスクは解消されつつある

どうやって、高齢の方のリスクを解決するのか。「孤独死」「認知症」「滞納」の内、「認知症」以外は解決しつつあります。
まず滞納については保証会社。保証人の代わりになる保証会社が、高齢の方でも使えるようになってきています。
不動産会社にとっては安心材料となるでしょう。
孤独死については、弊社は「簡単で安価な見守りシステム」を提供しています。
電気のスマートメーター(電気計)を利用して、30分ごとの電力の変化を見ることで、見守りが出来るシステムです。
住む人は、特別なことをする必要はありません。
普通に生活するだけでよく、料金も従来のものと比べものにならないほど安価です。「高齢者は賃貸を借りにくい」それだけ見ると大きな問題に思えますが、ひとつひとつ丁寧に見ると、解決策はかなり増えてきています。認知症を除けば、他の問題は解決したと言っても過言ではないと思います。

■いくつになっても好きな場所に住める社会を!

日本は世界で最も高齢化率が高い国です。ご高齢の方が入居可能な賃貸物件を増やすことで、「いくつになっても好きな場所に住める社会」の実現を目指したいと思います。(R65不動産 代表取締役 山本遼さん)
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兵庫借組が底地買い問題で説明会開催

2024年11月22日 | 法律知識
 借地人が高齢になり、相続人が独立し住宅を購入、借地を相続しないケースをよく見かけます。
 底地を買上げると、これらの問題も基本的には解決しますが、現行の借地契約の継続も選択肢の一つです。買上げる場合、実勢価格,公示価格、路線価価格、この価格で売買されていると思います。
 今回、地主から提案されているのは、現在、取引きされている土地の実勢価格を基に借地権割合4割という高い買取り価格になっています。
 組合では、説明会を開き借地人の意見を尊重し、買い上げる場合は固定資産税額算定の基にもなっている路線価価格での取り引きをお勧めしていますが、地主(底地屋)は土地を安く買い、高く売りつけ、路線価価格での売買を拒否しています。(全国借地借家人新聞より)

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住宅研究交流集会へ岸本杉並区長よりメッセージ

2024年11月22日 | 法律知識
 憲法25条は第1項で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と生存権を定めており、住まいがなければ、健康で文化的な最低限度の生活を送ることはできません。住宅は誰もが必要とするもので、公共性が極めて高いにもかかわらず、現代社会では個人による所有が推奨され(私有化)、賃貸については需要と供給の市場原理が適用され(市場化)、不動産は投資の対象となっています(金融化)。これを当たり前としてはいけないと私は思っています。住宅の公共性をにわかに取り戻すことはできませんが、命と暮らしを守る最前線にある自治体にできることはあります。選挙公約では、住まいを失った人や失いかけている人に対して、安定した住まいの確保を最優先とする「ハウジングファースト」の理念にそった支援をおこない、民間賃貸住宅に暮らす低所得者を対象にした家賃補助制度を創設することを掲げました。「住むことは権利だ」という視点に立つと、住宅政策は大きく変わってきます。杉並区は他区と比べて住宅全体に占める公営住宅の数が少なく(23区中19番目)、入居希望者の倍率は5倍です。本来なら公正な価格で安心して住むことができる公営住宅を増やしていかなければいけないのですが、新たな公営住宅の建設が困難な中で、住宅弱者を守る知恵を絞らなくてはなりません。
 本日の集会が、「住むことは権利」という視点にたった住宅政策のあり方を具体的に話し合う大事な場である認識しています。皆さまの経験、知見、政策提案が住まいを取り巻く公共政策の立案に活かされること、今日の活発な議論を期待申し上げ、連帯のご挨拶とさせていただきます。        2022年10月19日 杉並区長 岸本聡子
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住宅研究交流集会へ岸本杉並区長よりメッセージ

2024年11月22日 | 法律知識
 憲法25条は第1項で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と生存権を定めており、住まいがなければ、健康で文化的な最低限度の生活を送ることはできません。住宅は誰もが必要とするもので、公共性が極めて高いにもかかわらず、現代社会では個人による所有が推奨され(私有化)、賃貸については需要と供給の市場原理が適用され(市場化)、不動産は投資の対象となっています(金融化)。これを当たり前としてはいけないと私は思っています。住宅の公共性をにわかに取り戻すことはできませんが、命と暮らしを守る最前線にある自治体にできることはあります。選挙公約では、住まいを失った人や失いかけている人に対して、安定した住まいの確保を最優先とする「ハウジングファースト」の理念にそった支援をおこない、民間賃貸住宅に暮らす低所得者を対象にした家賃補助制度を創設することを掲げました。「住むことは権利だ」という視点に立つと、住宅政策は大きく変わってきます。杉並区は他区と比べて住宅全体に占める公営住宅の数が少なく(23区中19番目)、入居希望者の倍率は5倍です。本来なら公正な価格で安心して住むことができる公営住宅を増やしていかなければいけないのですが、新たな公営住宅の建設が困難な中で、住宅弱者を守る知恵を絞らなくてはなりません。
 本日の集会が、「住むことは権利」という視点にたった住宅政策のあり方を具体的に話し合う大事な場である認識しています。皆さまの経験、知見、政策提案が住まいを取り巻く公共政策の立案に活かされること、今日の活発な議論を期待申し上げ、連帯のご挨拶とさせていただきます。        2022年10月19日 杉並区長 岸本聡子
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増え続ける市営住宅の空室問題を解決!? ひとり親やDV被害者、外国人など住まいに困っている人に 兵庫県尼崎市「REHUL(リーフル)」への居住支援、生活協同組合が窓口

2024年11月20日 | 居住支援

公営住宅の空室の増加に伴い、全国の自治体で「公営住宅を住まいに困る人たちへの支援(居住支援)に活用したいが、入居募集のし
くみや使用目的の制限により、実情に則した形にできていない」という話を聞きます。そのようななか、兵庫県尼崎市では2022年より
生活協同組合コープこうべが中心となって市営住宅の空室の活用を開始。ひとり親やDV被害者、外国人などの入居がどのような仕組み
によって実現可能となったのか、尼崎市の篠原瑛太(しのはら・えいた)さん、コープこうべの前田裕保(まえだ・ひろやす)さんに
聞きました。

増え続ける市営住宅の空き室問題を解決するために

兵庫県尼崎市が行っている事業「REHUL(リーフル)」とは、市営住宅の建て替え計画によって入居者募集を停止することで増えた空
室を、住まいに困っている人の自立支援や、地域活動団体の活動の拠点として活用しようとする事業。同時に、市営住宅の自治会の活
動支援や市営住宅周辺地域のコミュニティ活性化を狙うものです。
公営住宅は、多くの自治体で人口の減少や高齢化率の上昇などの問題を抱えており、耐震性に課題のある老朽化した公営住宅も多く
なっています。
また自治体側の管理体制が行き届かないことや財政の圧迫も相まって、年々、戸数を減らす傾向にあります。尼崎市の状況も同様で、
2016年に策定した「尼崎市営住宅建替等基本計画」に則って市営住宅の建て替えや廃止を進めてきました。2024年4月(令和6年4月)
時点では、市営住宅管理戸数223棟1万259戸のうち、入居戸数は8078戸。残りの2181戸強は空室(図内では空家と表記)になっていま
す。
増加している空室の多くが建て替え・廃止の対象住宅で、篠原さんは「住人が減り、人の目が行き届かなくなることで、防犯性の低下
も問題になっている」と言います。さらに、入居者が増えないので、自治会活動が停滞し、役員のなり手不足や、入居者同士の交流が
減ったり、共用部の清掃や共益費など、一人当たりの負担が増えたりと、弊害も多く見られるようになってきました。

REHUL(リーフル)を始めるきっかけとなったのは、支援団体の声

なんとかこの問題を解決できないかと生まれたのが、「REHUL」です。
REHUL事業開始前の2021年9月ごろ、尼崎市は自治会活性のための方法を模索していました。
「いくつかの団体に相談する中で、コープこうべさんから『住まいの確保に困っている支援団体がある』という話を聞き、空いている
住戸を貸し出すことが解決につながるのではないかと考えたのがきっかけでした」(尼崎市・篠原さん)
コープ(生活協同組合)というと、スーパーや宅配、共済(保険)事業のイメージが強いですが、その定款でも「公共の福祉を増進す
るとともに、健全なる社会の確立に貢献することを目的とする」とある「社会活動団体」です。地域とのつながりやネットワーク力を
活かして、居住支援をはじめとする社会課題の解決にもあたっています。
空室となっている物件は、1970年代~1980年代に建てられたものが多く、尼崎市は見た目の古さや耐震性の問題を気にしつつも、まず
はコープこうべや他の支援団体に、空室となっている市営住宅を見てもらいました。
「民間の賃貸住宅を探すと、低所得など事情のある人が借りるには家賃が高く、借りられる部屋となると木造で古かったり、床が傾い
ていたりと状態の悪い部屋も多いんです。市営住宅は古いといっても、鉄筋コンクリート造でしっかりしていて十分使えます。私たち
としては、非常にもったいないという思いでした」(コープこうべ・前田さん)

簡単にはいかなかった、自治体と支援団体協働へのハードル

しかし、自治体が特定の支援団体へ公営住宅を本来の目的以外の用途で貸し出すことは、簡単ではありません。
「尼崎市としては公有財産を貸し出す以上、適切な団体を公募で選定し、『目的外使用許可』の手続きをする必要がありました。この
手続きを取ると早くても提供開始まで半年~1年はかかります。コープこうべとはすでに包括連携協定を結んでいたため、公募を行わ
ずにスピーディーに進められると考え、私たちは最初、コープこうべに窓口になってもらい、一括で借りていただくしくみを考えまし
た」(尼崎市・篠原さん)
ところが、コープこうべ側としては、市から一手に借り受け、そこからさらに他の団体へ貸し出すのは「何かトラブルがあったときの
責任が重く、リスクも大きい」と、コープこうべの中でも慎重な意見が大半でした。
そこで尼崎市は、コープこうべだけがリスクを負うのではなく、それぞれの団体の責任の所在を明確にする形を考えました。コープこ
うべを筆頭とする「ネットワークグループに属する団体」については、コープこうべと同等と見なして各団体に市営住宅の使用許可を
出せるようにしたのです。篠原さんたちはこの仕組みを整えるため、各関係部署への調整に最も時間を要したそうです。

市営住宅を、民間の支援団体に賃貸するしくみとは

事業開始当初、目的外使用の承認を受けられた住戸は、建て替えや廃止を控えている約1000戸のうちの350戸ほど。各支援団体が尼崎
市に支払う使用料は、1室につき、なんと月6500円です。この金額で借りられる民間住宅はほぼないに等しいので、支援団体からは
「本当にありがたい」と感謝の声があがりました。
入居希望者の受け付けから部屋の調整などの入居者のコーディネートを行うのは、ネットワークグループに加盟する居住支援法人
(※)等の団体です。
間取りは2DKや3DK、広さは45~60平米程度と幅があり、尼崎市は、実際に入居する人数や立地など、支援団体からの希望を聞きながら
提案をします。そして実際に現地を見て借りたいとなったらREHULネットワークグループの一員として各支援団体から「行政財産の目
的外使用許可」を申請して、市が許可するという流れです。
※居住支援法人:住宅セーフティネット法に基づき、住宅の確保に配慮が必要な人が賃貸住宅にスムーズに入居できるよう、居住支援
を行う法人として各都道府県をはじめとする自治体が指定する団体等
ただ、尼崎市は状態の良い住戸から貸し出しているため、事業開始当初はハウスクリーニングを行うだけですぐに住める住戸が多かっ
たのですが、提供する戸数が増えるにつれ、最近ではある程度のリフォームを必要とする住戸も増えてきているそう。市から支援団体
への賃貸は、現状渡し(物件にある不具合などを修繕せず引き渡すこと)が条件となっているため、リフォーム費用は借り受ける支援
団体の負担です。
「改修費用なども含めて利用者(支援団体を通じて入居する人)からは各団体で設定している家賃と、自治会費や共益費をいただいて
います。しかし、それだけで各支援団体が活動を継続していけるかというと難しいのが現状です。さまざまな助成金を受けながら、運
営費用を捻出しています」(コープこうべ・前田さん)

自然と広がっていった支援団体の輪。団体同士の連携も

REHUL事業の開始当初、参加した支援団体は5団体でしたが、尼崎市からの紹介やコープこうべによる声かけなどで2024年4月時点では
19の支援団体がREHULのネットワークに参加しています。参加団体は、空室活用と自治会支援が目的であることへの理解が必須で、支
援団体のネットワークは今後も広がっていく見込みとのこと。
「『住まいに本当に困っている人をどうにかしたい』という思いを持っている人ばかりが集まってきます。人と人との信頼関係が大事
ですね。それぞれの支援団体とコープこうべ、また支援団体同士も必要に応じて連絡を取り合っていますが、定期的な話し合いを設け
て事例などを共有し、どのような対応をするべきかを話し合いながら協議しています」(前田さん)

以前から市営住宅に住む人とREHUL利用者、自治体それぞれにもたらされる効果

これまでREHULで提供された住戸の用途は、女性と子どもを支援する団体がDVにより娘3人と一緒に家を出た女性に部屋を提供したり、
ネグレクト(育児放棄)家庭の支援をしている団体が家に帰れない子どもたちのために放課後に集まれる場所をつくったりとさまざ
ま。
中には、REHUL事業の開始を心待ちにしていた団体が、事業を開始した2022年4月1日からすぐに利用したケースもありました。在日
外国人の支援をしている団体で、ミャンマーからの留学生が卒業後に団体職員として働く予定でしたが、外国人であることを理由に民
間で借りられる部屋が見つからなかったためです。
前から市営住宅に住んでいる人たちには、ネットワークに参加している団体の活動内容や利用する人たちのことを理解してもらうた
め、コープこうべは積極的に清掃活動に参加するなど、自治会への協力も惜しみません。自治会のイベントにも参加するのが利用者の
条件のひとつ。最初こそどのような人が利用するかわからずに戸惑う住人から「自分たちは抽選でやっと入居できたのに」という声も
あったそうですが、日ごろからコミュニケーションを取ることで、良い関係が築けています。
「生協がなぜ住まいの支援をするのか」という意見が内外からあるそうですが、コープこうべの前田さんは、「暮らしをつくっていく
ことが消費を産みます。人口が減って地域が疎遠になっていく中で、生協がこういうスキルを持っていることを広めていきたい」と話
します。
「ゴーストタウンになりかけていた市営住宅で、いまは子どもや若い人たちが『ただいま』と帰ってきて、高齢の住人が『おかえり』
と返す姿が見られます。同じ時間を共有しているからこその挨拶です。この事業がなければ、亡くなっていたかもしれない命もたくさ
んありました。その利用者たちが自治会に新しい風を吹き込み、活性化に役立っていると感じます」(コープこうべ・前田さん)
「コープこうべに間に入っていただくことで、手続きなどもスピーディーに進めることができ、また、自治会の人たちもREHULに対し
てとても協力的で、関係性はとてもうまくいっています。空室活用の視点においては成果しかありません」(尼崎市・篠原さん)
REHULの活動は当面、尼崎市とコープこうべとの包括連携協定の期限である2029年までの10年間と定められているそうです。しかし、
今後、建て替えた後の市営住宅やその自治会をどのように運営できるのかは、まだ決まっていません。
尼崎市の篠原さんは「いまREHUL事業は建て替えや廃止で募集を停止している住宅のみを対象にしていますが、ほかの市営住宅でも高
齢化に悩む自治会の支援が必要になってくるのは間違いありません。建て替えや廃止の予定がない市営住宅も含めて、市内全域に
REHULの取り組みを広げていけるように目指していきたい」と話します。
民間企業や団体などと協働して空いている市営住宅を活用しようとする動きは、近隣の自治体でも検討されているのだそう。さらに尼
崎市の取り組みが先進事例として国の検討会やさまざまなメディアで取り上げられることで、全国にも広まりつつあるようです。今後
の広がりに期待したいですね。

●取材協力
・尼崎市
https://www.city.amagasaki.hyogo.jp/
・コープこうべ
https://www.kobe.coop.or.jp/about/csr/regional_alliances.php
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固定資産税の上昇を理由に 地代大幅値上げ請求相次ぐ

2024年11月13日 | 法律知識
 立川市柴崎町に住む借地人のSさんは、10月に入り、これまで年額11万5131円だった地代を、今年の1月分~12月分まで、年額に19万8990円に改定すると地主が通知してきました。
 Sさんは組合に相談し、以下の文書を地主に提出しました。「地代改定のご案内を受け取りました。主な理由として固定資産税の上昇を上げておりますが、改定額は現行地代の1・7倍超の大幅な値上げであり、何故にこれほどの地代を値上げするのか全く理解できません。固定資産税の上昇が、具体的にいくらなのかも示されず、値上げを判断することはできません。当方が納得できる地代値上げ理由を明らかにされなければ、1・7倍超もの値上げは認められません」。
 今年に入り、各地で同様の大幅な地代値上請求が起きています。立川市錦町の借地人のHさんは、地主が変わり、月額2万4000円だった地代を来月から月額5万円に値上げすると言われました。地主は底地買い(地上げ屋)です。
 地代家賃など賃料は、貸主と借主が協議して決めるもので、貸主が一方的に請求しても値上げ請求は認められません。借地借家法では貸主の請求が納得ができなければ、借主は「相当と考える」金額の賃料を支払い、貸主が受け取らなければ、法務局に賃料を供託することができます。
 貸主は賃料の増額を認めてもらうには、調停の申し立てを行い、調停でも決まらなければ裁判に訴えるしか方法はありません。裁判で値上げを決めるには、かなりハードルが高く、2倍や3倍もの大幅な値上げは値上げをする根拠が必要です。
 貸主が値上げを請求されても、値上げの根拠を求め、根拠のない値上げ請求は、頑張って拒否しましょう。
なお、法務局に賃料を供託するには、貸主の受領拒否が必要です。供託についてのやり方や供託書の書き方など組合にご相談ください。なお、固定資産税を調べるには多摩地域は市の課税課です。(多摩借組ニュースより)
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物価に見合う生活保護基準を 「黙っていたら死んでしまう」 全国32団体が会見

2024年11月13日 | 法律知識

 研究者や弁護士らからなる生活保護問題対策全国会議など全国32団体は12日、厚生労働省内で記者会見を開き、物価高騰を踏まえて2025年度の生活保護基準の大幅な引き上げを要望しました。同基準引き下げ違憲訴訟の岡山、埼玉両県と東京都の原告らが参加し、実態を語りました。

 岡山地裁では10月28日に原告勝利の判決。しかし国は11月8日に控訴しました。会見で、原告の男性(74)は「(勝利判決に)10年間のたたかいが報われたと思ったが、(控訴を受け)たたかい続けたい」と発言。埼玉の原告の男性(58)は「10年間
の裁判で原告が何人も亡くなっている。行政には血の通った、人間味のある判断をしてほしい」と訴え、東京の原告男性(50代)は
「食費、水光熱費の異常な値上がりで追いつめられている」と強調しました。
 東京都内で難病を抱えて生活保護を利用する女性(50代)は、知人の生活保護利用者の高齢女性が熱中症で亡くなったとして、
「私はエアコンが壊れ、扇風機だけでなんとか猛暑を生き延びた。黙っていたら死んでしまう。いま(実態を)言わないといけない」
と会見に参加した思いを語りました。
 要望書では、24年9月の消費者物価指数をもとに、生活保護利用世帯の家計を試算。実質的に購買力を維持するには25年度の生活扶助基準額について、単身世帯で13%、複数世帯で12・6%の引き上げが必要だと結論づけました。
 また、国の生活保護基準の設定方法を改め憲法25条が定める「健康で文化的な生活」を維持し得る保護基準に向けた再検証を求めました。
 岡山の原告弁護団の則武透弁護士は、1960年に東京地裁で生活扶助の低さが憲法25条1項違反だとの判決を勝ち取った「朝日訴訟」を紹介。一審判決後に国が日用品費を47%引き上げたとして「政治判断をすれば今すぐにでも保護基準引き上げは可能だ」と語りました。
 同日会見前に、32団体は厚労省で同省担当者に要望書を手渡しました。
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東借連など東京住宅運動連絡会が東京都住宅政策本部に2025年度東京都予算要求書提出

2024年11月12日 | 法律知識
 東借連をはじめとする都内の8つの住宅運動団体の共闘組織である東京住宅運動連絡会は、毎年実施している2025年度東京都予算要求書を10月29日の午後、都庁第2庁舎において各団体の代表者5名が参加して東京都住宅政策本部に提出した。都側からは荒木広報担当課長等が対応した。
 要求書は①新規公共賃貸住宅の大量建設等に関する要求、②新型コナカウイルス禍における住居確保・保証等に関する要求、③住宅の公的融資の拡充に関する要求、④木造を含む個人住宅への耐震診断・改修助成制度等の要求、⑤住宅建設の公共工事の分離分割発注の促進等に関する要求、⑥住宅弱者に対する総合的な住宅政策の拡充に関する要求、⑦住宅行政の組織の拡充・強化に関する要求、⑧都営住宅に関する要求、⑨公社住宅に関する要求、⑩公団(UR)住宅に関する要求、⑪住環境整備等に関する要求、⑫住宅にかかわる助成・家賃・更新料等についての要求、⑬住宅行政の基本姿勢に対する要求以上85項目の各団体の要求を提出した。
 各団体から主な予算要求の内容について説明し、東借連の要求について細谷会長が発言した。「東京では土地や住宅価格が高騰し、地代・家賃の値上げ問題が多発し、物価高の中で家賃の支払いに困窮する賃貸住宅居住者が増えている。都営住宅の供給を増やし、家賃補助などの施策を都として検討すべきである。また、地上げ底地買い事件が多発し、借地借家人の住まいの権利が脅かされている。都として地上げ問題に対する規制をしてほしい」と訴えた。
 その後、都知事秘書の廣田担当課長に面談し、小池都知事に予算要求書を手渡し、小池都知事が知事選協で公約に掲げた、子育て支援世帯への家賃負担の軽減等の実現を求めた。最後に都議会各会派を回って申入れを行った。

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納得いかない賃料増額は拒否を

2024年11月07日 | 法律知識
品川区内で事業所を借りているSさん(多摩借組)の元に、大家である管理会社(M社)から更新料の請求とともに賃料月額3千円増の文書が届きました。
Sさんはこれまで3回更新し、そのたびに毎回増額され応じてきましたが、近隣の同じような条件の物件と比べてもことさら安いとは感じなかったため、増額には応じられない旨をメールしました。
しかしM社は「契約時から安いため相場に戻す」の一点張りで増額を迫ってきました。
そこでSさんは「なぜ安く募集したのか。そうしなければ部屋が埋まらなかったのなら、それが相場ではないか」と返したところ、M社からそれについての回答はなく「毎回の増額ではないので便宜を図ってほしい」と返答がありました。
Sさんは「毎回でないなら次回値上げしないことを前提に、今回千円なら応じる」とし、M社は了承しました。
大手不動産会社のWさんは「今はどこも更新のタイミングで値上げを要求しますが、借主の承諾がなければ増額できません。納得できない場合は断ってください」と話します。
Sさんは「困っている方は多いのではないか、ひとりで対応できない場合は相談を」と話しています。
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「建物の住宅ローン残額相当額の支払いと引き換えに改正前民法597条2項但書に基づく土地使用貸借の終了が認められた事案」

2024年11月07日 | 判例紹介
東京地裁令和3年6月24日判決

事案の概要
原告及び被告の父である亡A所有の土地上に、被告が亡Aと建物を共有し、亡Aとの間で土地使用貸借契約を締結していたところ、亡Aの遺言により土地の所有権及び使用貸借契約の貸主の地位を取得した原告が、改正前民法597条2項本文、但書及び民法594条3項により使用貸借が終了したとして、被告に対し、土地の明渡しを求めた事案
判旨
 民法594条3項に基づく主張(被告の用法違反による契約解除)は、信頼関係を破壊する程度のものとは認められないとしつつ、次のように、改正前民法597条2項但書に基づく主張(使用及び収益をするに足りる期間の経過による終了)を認めた。
本件の使用貸借は、被告が亡Aの跡取りになるなどの前提を満たさなくなった事情からすれば、建物の存続を基準とする期間ではなく、被告が土地を明け渡すに相当な期間経過後に終了することが予定されていたというべきであり、被告が負担する本件建物の住宅ローン残額を考慮し、原告が被告に対して680万円(引用者注:住宅ローン残額とほぼ同額)を支払うのと引き換えに、改正前民法597条2項但書に基づく本件使用貸借の終了を認めるのが相当である。
コメント
 使用貸借契約については契約書等の明確な合意がないことがほとんどであり、使用収益の目的や使用収益をするのに足りる期間について争いになることが多い。これらについては、実務上、契約当事者間の個別具体的な事情から認定されていくことになるが、本事例は、建物ローン残額相当額の支払いと引き換えに使用及び収益をするに足りる期間の経過による終了を認めた点に特徴があり、実務上参考になると思われる。なお、改正前民法597条2項但書は、改正後民法598条1項に対応している。
(弁護士 瀬川宏貴)
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