観測にまつわる問題

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消費税に縛られるな「増税論議」から

2009-08-29 00:08:39 | 政策関連メモ
「あらたにす」の新聞案内人、伊藤元重教授の「消費税に縛られるな「増税論議」」を読みました。伊藤教授の議論はバランスが取れており、腑に落ちるところも多いので、引用して考える叩き台にしようと思います。

>「こうした補助金や、公共料金引き下げをします」という給付に関わる政策は大々的に打ち出されるが、「これだけの負担をお願いしなくてはいけません」という負担の部分はほとんど話題にも出てこない。 選挙のさなかに増税策を出しても票は集まらないからだ。残念ではあるが、それが日本の投票者の民意であるのかもしれない。ただ、選挙が終わればそうはいかない。どこの党が与党になったとしても、負担と給付のバランスの整っていない政策は市場が受け入れないからだ。

結果的にはそうです。しかしながら、伊藤教授も後述しているように増税は避けられない情勢なのであって、選挙の前に増税論議をしないという「民意」の存在は誤解であると思います。増税しなければならないのに、政府にお任せではどうしようもないでしょう。いざ増税となれば、反対運動が起きてしまうわけです。だからこそ社会保障の伸びに対し租税負担率が低いままの日本になってしまったのだと思います。少なくとも方向性ぐらいは話し合って道筋を作らなければなりません。こうしたことが理解出来ない国民ではなく、政治サイドの努力不足であると私は思います。

それでは、今回増税議論が深まらなかった政治サイドの原因は何処にあるのでしょうか。自民党の公約には、財政再建も消費税の増税も堂々書かれています。だから、議論しようと与野党互いに思えば出来たはずなんです。

ここで議論するのは不利だと誰もが認める消費税が自民党の公約に載った経緯を振り返ってみます。第一に与謝野大臣の功績だったと思います。私も議論を見て納得して賛成を表明した方ではあるのですが、与党サイドの反対派は強力で、最終的には押し切りましたが、与謝野大臣がかなり強引に持っていった印象があります。疑問や反対が直ぐに消えたわけではなく、時間が経つにつれ、それなりに落ち着いてきたというのが事実でしょう。第二には麻生首相の功績も当然大きいです。与謝野大臣を選んだのも麻生首相であるし、トップが大臣に指示しなければ、税制改正中期プログラムへの明記はなかったからです。こうして消費税が選挙前に公約に載るという異例の事態になったわけです。

与党サイドの消費税論議は当然野党サイドの反響(反発)を呼びました。これは失敗だと見て、叩きに走ったわけです。信念がないと言えばそうですが、勝つためには当然の戦術とも言え、ある程度理解を示したのは岡田氏ぐらいではなかったかと記憶しています。小沢代表の辞任の時に岡田氏が代表になっていれば、この増税論議は出来ないという問題は決着していた可能性が高いとは言えるでしょう。しかしながら、登場したのは鳩山代表でした。彼の戦術は徹底的な逃げであり、本質的な議論に踏み込むことはほとんどありません。本人は故人献金の時とか堂々したいという意志はあるようなのですが、結局周りの意見に従い、「政権交代」に不利になることは一切言いません(党首討論を重視している私も途中で匙を投げました)。与野党間で議論が盛り上がることが重要だなんて信念はないし、本質論に踏み込んで議論に勝つ自信もないのでしょう。

結局のところ、与党サイドとしては、選挙に不利とされる消費税を良いもの(これ自体は現状正しい)として訴えかけるという戦術しか残っていなかったと思います。少なくとも、今は野党・世論共に消費税に対する拒否感は薄らいではいるようです。何やら、社民だとか野党サイドに美味しいところを掻っ攫おうとする動きすらあるぐらいに。

・・・とまぁ、これまで見てきたように、政治家は喧嘩(有利不利)の構図で政策を見る人が多いんです。権力闘争・選挙がある以上、当然と言えば当然でしょう。しかしながら、それでは一度不利とされた政策は動かないことになってしまいます。チェック機能はいいのですが、財政の問題を無視するわけにもいきません。今回の一連の経緯で教訓を見出すとすれば、①良き政策的信念は人を動かすことが出来る ②ただしその実現の過程においてはパワーゲームを無視することは出来ない(強い方が譲れば現実は動く可能性がある)というところだと思います。②に関連して言えば、事態が動いたのは、権限を持つ政府与党の功績。最終的に決着しなかったのは(現状で増税が正しくないという議論もあるが)、野党が何が何でも勝ちたいから(政権交代論はなかった方が良かった)(使いこなせていない)ということになると思います。

>誰が考えても、最終的には日本は増税を真剣に考えなくてはいけないだろう。増税をしなくても少子高齢化が乗り切れると考えている人は、「政府の活動を最小限にすべき」と強く信じる頑固な新自由主義者か、増税をしなくてもどこからかいくらでも財源が出てくると思っている経済音痴だけだろう。国民のほとんどが、いずれは増税が必要であると覚悟しているはずだ。

聞いていますか、鳩山さん。そして出来れば有権者には再考頂きたい。

>消費税は優れているが、政治的に手垢が付いている感がある。あまり消費税だけにこだわっては増税ができず、日本の財政はますます危機的状況になってしまう。そこで消費税以外にどのような増税の可能性があるか考えてみる必要がある、と考えてみたいのだ。以下、個人所得税、相続目的の消費税、そして炭素税の3つを取り上げてみたい。

あえて言わせて貰います。自公が勝てば、消費税増税は出来るし、理解も得られると。それはともかく、三馬鹿トリオ(政党)は政権を取ったら真面目に考えてくださいね。