一葉一楽

寺社百景

静岡浅間神社 ー 逆転した拝殿

2015-06-15 10:31:54 | 神社
神部神社、大歳御祖神社、浅間神社三社の総称である。嘗ては、今は境内社となっている麓山神社を含めて四社並列に、文久元年(1861)発行の中村高平著「駿河志料」では記載されている。神部神社は崇神天皇の代、大歳御祖神社、麓山神社は応神天皇の代に創建と伝える。浅間神社が富士山本宮浅間大社を、醍醐天皇の延喜元年(901)この地に勧請した時、既に鎮座していたということであろう。
現在の静岡浅間神社は、木原木工允義久を大工棟梁として寛永十八年(1641)に竣工したもの、安永二年(1773)、天明八年(1788)と二度の火災で焼失後、文化元年(1804)から慶応元年(1864)にかけ、配置、構造、規模を踏襲し再建された(重要文化財静岡浅間神社修理委員会編「重要文化財神部神社浅間神社大歳御祖神社修理工事報告書」 1977,1982,1988).


手水舎
   拝殿
 本殿

「駿河志料」によると、「こは神殿は惣社相殿なるに依て、拝殿の方を神造の形ちに作れりとぞ」とあり、富士山本宮浅間大社では本殿をニ層とするが、ここでは拝殿をニ階ニ層としたとある。その棟高は本殿の棟をしのぐ。即ち拝殿二階からは本殿を下に見ることになる。本殿は山腹にあり、拝殿とは隔離されているとはいえ、明らかに拝殿重視の建て方である。

 麓山神社
  八チ戈神社

(注)2015年4月撮影
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笠森寺 ー 岩作り観音

2015-06-05 09:46:17 | 寺院
「諸国名所百景」に二代目歌川広重の安政六年(1859)制作「上総笠森寺岩作り観音」がある。誇張はあるが、砂岩の露頭に上に建つ観音堂が描かれている。



本尊十一面観音像の背面に応永三十三年(1426)の記銘があり、観音堂の建立はこの頃の可能性があるが、現観音堂には、落書も含め多くの墨書が残っており、そこから永禄三年(1560)頃に再建着工し、天正三年(1579)から十八年(1590)に完成したと見られている。




丁度露頭の上に十一面観音が立っているかのように須弥壇を置く。神社であれば、露頭の下に拝殿を建て、見上げる形をとるのであろうが、天台密教寺院である、観音と同一空間で礼拝することを意図したのであろう。束柱で内・外陣を持ちあげ、四方懸造とする。

(注)2015年5月撮影
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