父の祥月命日のためお墓参りに行った。お墓は都心にあるが、昔は
山を崩してつくったようだが、子供の頃は視界が広かったが、今では
周りは全部ビルだらけだ。墓地は立行寺の代々住職と、檀家総代と同じ
列に並んでいる。でも石段が何段もあり駅の階段とは違って、とても
登りにくい。昔継母が言っていたように、夫も何年か前から「上るのが
とても疲れる」と言うようになった。
墓地には誰一人いなかったが、夫は階段の途中で休んで辺りを見回し
たりしていたが、私は先に登り水を汲みながら「急がないから大丈夫よ」
と声をかけた。階段を昇り切ってから、さらにまた何段かに分けて階段
ある。実家の父は59歳で亡くなったが、それから長年経ったので、私達が
老化するのは当然だ。墓前で手を合わせながら、「夫をもう少し長生き
させて下さいね」とお願いした。お墓参りしてから夫は、すぐに歩くの
はきついようで、夫はまた墓地で座って休んでいた。
やはり体力が衰えたのは歴然としている。
年齢差と、男女の平均寿命の差、さらに健康度などから考え、またこの
3年間で友人達のご主人が3人亡くなったし、ふつうなら夫が先なのは
ごく自然なことだ。でも、3人とも認知症で誤嚥が原因だった。
私はそのめ誤嚥予防のトレーニングを作り、毎朝行っている。
認知症満10年の夫がまだ元気で、ほぼ自立しているのは、私が心理の
プロとして介護をしているためだと思う。妻だからこそできる介護だから
淋しいけれど夫のためには、先に見送られた方がきっと幸せだろうと
お墓の前で真っ青な空を見ながら、しばし考えた日だった。