大和書房 1998年8月発行)ハウツウ本がほとんどですが、数少ないエッセーでした。
※ 褒めてくれる友人はとても大切
私の尊敬する友人に、同人誌を主宰するIさんがいます。
彼女とはある新聞の投書欄がきっかけで、知り合いましたが、何故か波長が合いそれ
以来、ずっと親交が続いています。Iさんは長年幼稚園の先生をしていましたが
大分以前に退職し、同人誌をつくかたわら、短歌などを楽しみ、今は悠々自適に暮ら
しています。私より大分年配のIさんは今では、ホンネで話せる友人の一人で、カウン
セラー的な存在な人と言っても良いほどです。
Iさんはなかなかの名文家で、ある新聞の投書欄の常連です。
私は彼女の主宰する同人誌に、何年か投稿していたことがありました。
その度に「イキイキ弾んで明るい」「まるでバラのように華やか」など、いつもやさ
しく批評してくれました。お調子者の私がすっかり舞い上がったのは言うまでもなく
彼女の言葉があったからこそ、私は今本が書けるようになったのかも知れない、と感謝
しています。会ってからすぐに彼女は「あなたは少女というより、私が教えた幼稚園児
のよう。私の前を歩いていた女の子が、突然振り返ってニコッと笑いかける。あなたは
そんなイメージの人ね」と言われました。自分の幼児性をズバリ指摘されて、内心ギクリ
としたことも忘れません。
Iさんは練馬区に住んでいて、彼女の住むアパートの周りには、大きなキャベツ
畑になっていて、周りには農家が点在しています。そのため新鮮な野菜が手に
入るそうです。お料理好きで上手なIさんは、私が遊びに行く前日から鰹節や昆布
でだしをとり、手間と時間を十分かけたお料理を、御馳走してくれます。
食卓に並んだ真心のこもった手料理は、とてもよそでは味わえない絶品ばかり
ですが、野菜が大好きな私にとって、とても嬉しく何時も最高のおもてなしをして
下さったのだと感謝できました。
ずっと独身を通してきた彼女は、人柄のせいか、友人がとても多く、悩みや
グチ話など、いろいろな人が相談に訪れるようです。「さんざん話してから、明るい
顔をして帰る人を見ると、これも人助けになるかと思うのよね」と、やさしく笑って
います。私にとってIさんは、人生の先輩として、憧れでありまた目標でもあるので
そんな友人がいることを、とても幸せだと思っています。
◆その友人は大分以前に亡くなりました。「愛別離苦」という言葉もありますが
長く生きれば生きるほど、辛い別れを経験しなければなりません。
ホントは一番先に死にたかったのに・・・これが人生なのですね。
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