自分の思い違いによる道迷いに反省し、
日が暮れないうちに行者還避難小屋まで進むためにスピードアップ。
呼吸が苦しくなり、
なんでこんなことやっているんだろう
という思考が入り出すといい事を思いつく。
「そうだ!うけたもうゲームをしよう!」
山岳修行の中には、道中何かあっても
「うけたもう」と言うのがあるらしい。
私の中にある様々な感情(苦しい、きつい、しんどいなど)を言葉にして口に出し、
一つ吐き出したら、
「うけたもうー」と自分で言い返す。
ずっと続けていると、
滑稽に思えてきて山の中で1人で笑っていた。
道に新品に近いサングラスが落ちていた。
普段山を歩く際にゴミはなるべく拾い、落とし物は踏まれないよう目につく場所に置くようにしている。
「サングラスを拾って持って行きなさい」
どこからか声がしたので、
ザック上部の隙間に割れないように入れた。
宿坊がある山上ヶ岳という場所があり、
由緒ある大峯山寺で本当はのんびりしたいけれど、
すぐに通過し下っていく。
持っていた2リットルの水も尽きかけた頃に小笹ノ宿という無人の山小屋に到着。ここは道の横に水場があり、そこで水を補給できる。(通常は登山道からやや離れた場所に水場がある)
大峯奥駈道が難所と言われるのは、道の険しさや長さもあるが、水分補給の難しさもある。
たっぷり飲んで、次の水場がある行者還避難小屋まで2リットルを汲んだ。
阿弥陀の森を抜け、明王ヶ岳、小普賢岳、大普賢岳と続く奥深い山を16時から18時くらいに通過しようとしていると、
前の山から
「アグォッー、アグォッー、アグォッー」
と低く唸るような初めて聴く声が聞こえてくる。
全身に緊張感が走り、警戒するて
そうすると後ろから鈴の音が聴こえてきた。
誰かやってきたようだ。
心強い!!
私も今までは風や鳥、葉などの自然の音を感じて登山したいためにザックにしまっていた鈴をつけた。
「チリンッチリンッ」と2つの鈴が山に鳴り響き、唸り声は消えていった。
それにしてもこの時間に歩いていて、
私に追いついてくるとは、
相当な方だなと後ろを振り返ると誰もおらず、
鈴の音も消えていた。
夕陽を見ながら、丁重に御礼をした。
18時を過ぎて、残りコースタイム2時間40分。
はたして道が見えているうちに避難小屋に辿り着けるのだろうか。
つづく