法定相続に関する民法900条は4号で、子の相続分について、男女や長幼では区別しないのに、嫡出子か否かで区別して非嫡出子は嫡出子の半分と規定しています(同号ただし書き)。嫡出子は法律上結婚しているカップルの子、非嫡出子は何らかの事情で法律上は結婚していないカップルの子です。
18年前、最高裁は、この区別を合憲と判断しましたが、今回その判断を見直したものです。ここでも何度か書きましたが、生まれによる差別は、法の下の平等の対極にあるもので基本的には許されないものです。あなたは、性別や家柄、人種などによって差別されたら怒るでしょう。今回の違憲判断は、その意味で歓迎すべきものです。
1995年には、相続制度の如何は国会の裁量に委ねられていることから、諸外国でみられたように非嫡出子を全く無視するのではなく、半分の法定相続を認めていることは法律婚の保護と非嫡出子の保護の調整を図ったものという理由で合憲と判断しました。
これはかなり苦しい理屈でしょう。皆さんは、選挙で他の人が2票持っているのに、自分が1票しかなかったら、「ああ投票できて良かった。自分にも配慮してくれたんだ」って思う? 思わないよね。さらに、外国で非嫡出子が蔑ろにされていたのは昔のことで、当時は平等に扱っている国も多かったのです。
この合憲判断は10-5の多数決でした。5裁判官は、憲法学者と同じく違憲という考え方。さらに多数派裁判官のうち4人は、合憲か違憲かと問われれば違憲とは言えないが、その合理性には疑問があるから国会は是正したほうが良いという意見を表明しています。
だから、この決定で9人の裁判官は違憲かはともかく国会に直したほうが良いんじゃないと言ったんですね。しかし国会は区別を取り除かなかった。国会も、さすがに違憲判断をされると法律を改正します。最高裁は、違憲とまでは言えないけど、是正するほうが適切という判決をいくつか出していますが、国会はほとんど直さない。国会議員は、主文(結論)しか読んでないのかい!?と思ってしまいます。
もうひとつ、最高裁がこのとき違憲判断を避けたのは、非嫡出子差別規定の改正論議が盛り上がっていて、違憲としなくても国会が直してくれるという期待があったのでしょう。その期待は裏切られました。やや遅きに失した感はありますが、違憲判断は妥当でしょう。
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