今日の「虎に翼」、轟やよねの努力が実って、20年以上前の合憲判断が変更され、尊属殺人重罰規定は違憲と判断されました。ドラマではハッピーエンドという描かれ方でしたが、どうなんでしょう? よねさんなら「相変わらずクソだな」くらい言うかと期待していましたが……
この違憲判断で最高裁は真っ二つに割れました。桂場さんなど多数派8裁判官は、尊属殺人を重く処罰すること自体は正当とみます。1950年の合憲判断と少し表現は変えましたが、尊属(自分や配偶者の親や祖父母など)に対する尊重報恩は法律上も保護に値するので、重罰も正当だと。じゃなんで違憲かというと、刑罰が死刑か無期懲役に限定されている点で、重罰の程度が過ぎると言います。半分合憲判決ともいえます。
(原判決は美位子さんを懲役3年6月としました。無期懲役じゃないじゃん!と思うよね(笑) 刑法には刑の軽減事由があって、たとえば自首したとか被害者のほうが明らかに悪いなどというときは、無期懲役が懲役3年6月まで軽減されます。でも懲役3年を超えているので執行猶予にはできない。多数派8裁判官はここを重視して重罰が過ぎると)
これに対して、少数派6裁判官は、すっきりと尊属殺人重罰規定自体が違憲とします。これが普通の感覚でしょう。憲法学者のほとんどは少数派6裁判官を支持しています。なおこの期に及んでも合憲という裁判官も1人(・□・;)
つまり桂場さんなどの理屈に従えば、当時普通殺人は懲役3年以上だったので、尊属殺人は懲役5年以上くらいに改正すれば存置可能ということに。尊属殺人を規定する刑法200条が削除されるのは、違憲判決から20年以上経った1995年でした。法務省が尊属が被害者である重罰規定を全部削除しようとしたのに、自民党の一部から、「重罰すぎる」ことだけ改正すればよいという反対があったそうです。
(殺そうと思って殺すのが殺人ですが、ちょっと痛めつけてやろうと思って殴りすぎたら死んじゃったというのが傷害致死罪です(刑法205条) 傷害致死罪の法定刑は当時、懲役2年~15年でしたが、尊属に対する傷害致死は懲役3年~無期懲役でした(同条2項) この程度の差は著しく重罰とは言えないでしょう。最高裁は一貫して合憲と判断しています。1995年の刑法改正ではこれも削除されました)
桂場さん(モデルは石田和外長官)は、この3週間後にも悪事を働いて最高裁を定年退官しますが、その話はまた。公務員のストライキ権を容認した4年前の判決(「虎に翼」では、裁判官はストライキやっちゃいけないように描かれていましたが、実際は違います、脚色でしょう)を覆した全農林判決です。
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