ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「見知らぬ女の手紙」

2025-01-14 17:36:47 | 芝居
12月25日、紀伊國屋ホールで、シュテファン・ツヴァイク作「見知らぬ女の手紙」を見た(翻案・演出:行定勲)。



抑圧された心に潜む想いは狂気か、それとも純粋な愛なのか?
「恋」という熱病に侵された女の究極のラブストーリーを描くモノローグドラマ

世界的なピアニスト”R”は、演奏旅行で一年の大半は自宅を留守にする。
そんなある日、演奏旅行から戻ると郵便物の束の中に妙に分厚い、
見覚えすらない文字で綴られた手紙が届いていた。
その手紙の差出人はまったく知らない女。
28歳だという女は手紙を書く前日に子供を亡くしたという。
男は脈絡も分からぬまま、その”見知らぬ女”の
12歳からの自分語りを読みはじめる・・・(チラシより)。

篠原涼子の、ほぼ一人芝居。満席。
舞台は狭い。
小さなピアノが一台。中央に小テーブルと椅子一つ。小さな寝椅子。
男の声が響く。
「〇〇〇はピアニスト。外国から帰国し、部屋に戻ると、召使いが留守中に届いた手紙を盆に載せて来る。
一つずつ見てゆくと、その中に、差出人の住所も名前も書いていないものがあった」
男(首藤康之)が登場。すると頭上から便箋がたくさん、フワフワと舞い降りて来る。
また声がする。「それは何十枚もあり、手紙と言うよりは原稿のようだった」
紗幕の向こうから女(篠原涼子)が現れる。
「私の子供は死にました」といきなり語り出す。
「13歳の時、隣に引っ越して来たあなたを見て、すぐに恋に落ちた。
若くて優雅な物腰に。・・・
母が再婚することになり、引っ越すと聞いて私は気絶」・・・
こうして彼女はウイーンからインスブルックに引っ越すが、15歳の時、ウイーンの学校に入る。
毎年、彼の誕生日に白いバラを贈り続けた。
18歳の時、ついに再会。
その後、深い仲になり、3回泊まった。
最後の日、男は北アフリカに行く、と言い出す。
私「残念ね」
その3回のどこかで妊娠し、男児を産む。
その子が3歳の時病死。
「私の子供は死にました」
それからしばらくして、また出会い、夜を共にする。
その時、女は娼婦になっている。
女は、男が自分に気がつくだろうか、あの時の女だと気づいて欲しいと熱望するが、男は気づかない。
男は彼女のマフの中に紙幣を何枚かねじ込む。
女はそれを鏡越しに見て、衝撃を受ける。
急いで部屋を出る時、彼女は召使いのヨハネスとぶつかりそうになる。
「彼はよけながら私の顔を見て、私に気がついた!」

「私は一生あなただけを愛して生きた。でも後悔していない。
今でもあなたを愛しています。
なぜ子供があなたの子供だと言わなかったか。
それは、自分から唯々諾々と体を委ねた私が、あなたをだましていると疑われるのを恐れてのこと。
あなたはきっと私のことをお疑いになるでしょう・・・」
「私の子供は死にました」
~~~~~~~ ~~~~~~~ ~~~~~~~

ベートーヴェンのピアノソナタ「月光」が何度も何度も流れてうんざり!
名曲は、ここぞという時に使ってこそ胸に沁みるのに、使い方がもったいない。
途中、雷が鳴ったりするが、特にストーリーとは関係なかった(笑)。
男は最初の一言以外、口を開かず、じっと立ってたり座ってたり、女の体にまとわりついたり、くねくねと踊ったり・・。
つまりこれはほぼ篠原涼子の一人芝居だった。

はっきり言って、この女は常軌を逸している。
まさに不毛の愛だ。
彼女が敢えて名前を名乗らなかったのは奥ゆかしいとも言えるが、ちょっと不自然でもある。
名乗らないから、男が自分を金で買える娼婦として扱うのは当然なのに、それにショックを受けるのは愚かしい。
恋したことのない人から見たら信じられない話だろう。
時代が古いこともあるが、これほど男にとって都合のいい女もいない。
男が書いた話だから仕方ないのだろうか。
ツヴァイクと言えば、私など、昔「マリー・アントワネット」を読んだことを懐かしく思い出す。
あの人がこんな芝居を書いていたのか。
こんな妄想を抱いていたのか・・。

篠原涼子は何十枚もある手紙を、読みながら歩き回り、読み終えると床に落として、次の手紙を読む。
つまり、これは朗読劇だった。
なるほど!これなら役者は楽だろう。セリフを暗記しなくてもいいのだから。
この戯曲は全部女の手紙という設定なのだから、問題ないし。

彼女をナマで見たのは初めてだが、特に演技がうまいわけではなかった。
ただ、顔立ちも声も個性的で独特の魅力がある。
大きな息子たちがいるとはとても思えないほど可愛らしい。
だから満席なのだろう。

コメント
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