ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

井上靖「猟銃」

2011-12-09 00:10:57 | 芝居
10月17日パルコ劇場で、井上靖原作「猟銃」をみた(演出:フランソワ・ジラール)。

原作は書簡体小説。中谷美紀が4役を演じる。ほぼ一人芝居と言っていいだろう。

冒頭、激しい水音と共に幕が開くと、舞台前面天井から滝のように水が落ち続けている。
奥の方に背の高い白人男性の姿が見える。猟銃を持って時々体を動かしている。

枠構造・・「私」が狩猟の雑誌に「猟銃」という詩を載せたところ、或る男から手紙が届き、
3通の手紙を送るから読んでほしい、とあった。それはその男、ハンター三杉穣介の娘
薔子(しょうこ)、妻みどり、愛人彩子(さいこ)からの手紙で、彼の13年にわたる不倫と
3人のそれぞれの思いがそれらの手紙から浮かび上がってくる。
この前段部分で水音が高いので、詩人の言葉が少し聞こえにくい。

これが初舞台だという中谷美紀がいい。素材自体がやりがいのあるものだし、本人が原作に
惚れ込んでいるのがよく分かる。3人の女を声の変化、抑揚のつけ方、しぐさなどで見事に
演じ分ける。ただ最初の薔子はセリフが速過ぎて少し不自然だ。

娘、妻、愛人と手紙が読み進まれるにつれ、事実が明らかとなってゆき、驚かされる仕組みが
よくできていて、この作品を舞台で上演したいという人々の気持ちがよく分かった。愛人彩子の
最後の静かな告白には、まったく意表を突かれた。これはただの不倫話ではない。一筋縄
ではいかない人間の想いに心打たれた。

三杉穣介役はロドリーグ・プロトーという白人男性だが、なぜ白人なのだろう。そもそも
この役が必要だろうか(セリフもないし)。中谷の完全な一人芝居でもいいのでは?
やっぱり観客の想像力(のなさ)が心配なのだろうか。

久しぶりに古い日本語を聞いた。書き言葉なので若い人には分かりづらかったのでは?
コメント
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