ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

文学座公演「岸田國士傑作短編集」

2011-12-15 22:38:24 | 芝居
11月7日紀伊国屋サザンシアターで、「岸田國士傑作短編集」をみた(文学座公演、演出:西川信廣)。3作品同時上演。

①「明日は天気」
海辺の旅館に避暑に来た夫婦だが、連日の雨で海水浴もならず、暇を持て余している。妻は友人に「毎日泳いで真っ黒に
日焼けしてしまいました」と嘘っぱちのハガキを書いている。人のいい夫は呆れながらも、雨で機嫌の悪い妻をさまざまに
なだめる。
このように妻は見栄っ張りで底の浅いつまらない女だが、夫の方はと言えば、相当なロマンチスト。昼寝しようと横になった
妻に向かって退屈しのぎに話し出す話が傑作。先ほど廊下でバッタリ元カノに会った、とその時の二人の会話を再現して
みせるのだが、これがもうどこまでが事実でどこからが妄想なんだか、実におかしい。なのに妻は・・・。

②「驟雨」
西洋風の応接間。下手に書き物机。青い着物姿の妻が年配の女中にあれこれ指図している。夫が帰宅するが、どうもこの
夫婦は倦怠期らしい。そこへ突然妻の妹が訪ねてくる。彼女は新婚旅行中のはずだったが、早くも夫に愛想が尽き、一人で
戻ってきてしまい、これから実家に帰ると言う。妻はなだめすかしてよりを戻させようとするが、途中から話に加わった夫は、
何やら急に雄弁に語り出す・・・。
ここで夫が義理の弟の弁護のために繰り広げる演説が面白い。日本人と西洋人の表現の違いについてなど、どうやら岸田
國士のなまの意見らしく、興味深い。
妻役の名越志保の声が素晴らしい。いつまでも聴いていたいような張りのある美声。

③「秘密の代償」
高級官吏、生田は妻子と共に休暇で海辺の避暑地の別荘に来ている。本宅から連れてきていた小間使いのてるが、妻に
突然暇をもらいたいと言う。妻は驚き怪しみ、夫か息子がてるに手を出したのではないかと疑い、二人を試そうとするが・・・。
よくできた芝居。二人のうちのどちらがてると「できている」のか、観客には次第に分かってくる仕掛けになっているのが
愉快。しかもそのことが一度もあからさまに語られないところが、劇作家のセンスを感じさせて憎い。
だます側は実にうまいことだましおおせ、だまされる側は最後まで勘違いしたままだ。ただこの奥さん、機転がきいて賢い
のに、最後に真実を見抜けないのは少し変ではないだろうか。
女中はと言えば、可愛い顔して何ともしたたかである。最初妊娠しているのかと思ったが、そういうわけではない。動機は
不明だが、とにかくしたたかだ。
配役が豪華。妻役の塩田朋子、てる役の渋谷はるか、生田役の菅生隆之、息子役の斉藤祐一の4人とも熱演。
ただ、今の若い人に「今度はあんまりシャンじゃない子がいいなあ」なんてセリフ、理解できただろうか。ちと心配。

コメント
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