ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「眠れる美女」

2017-01-15 22:20:23 | オペラ
12月10日東京文化会館大ホールで、川端康成原作、クリス・デフォート作曲のオペラ「眠れる美女」をみた(演出:ギー・カシアス、オケ:
東京藝大シンフォニエッタ)。

東京文化会館開館55周年・日本ベルギー友好150周年記念公演。日本初演。

「すでに男ではなくなった安心できる客」が、薬で眠らされた若い女の温かい体に寄り添い一夜を過ごすことのできる、奇妙ではかない逸楽の館。
友人の紹介でこの館を訪れた江口由夫は、ここで「眠れる美女」と出会うのだが・・・。

現代音楽ゆえハナから腰が引けていたが、途中調性のある部分もあった。バッハ風だったりロマン派風だったり。
客の男と館の女主人とを、それぞれ2人の歌手と2人の俳優とが歌い、演じるという変わった構成。
それに4人の女性合唱、そして上空で1人の女性ダンサーが踊るという欲張りな?演出。

俳優陣は、初老の男・江口を長塚京三、館の女主人を原田美枝子が演じる。

男のセリフに部分的に不愉快な感じがした。
彼は、1人の客が死に、その遺体を、館の人間が、夜陰に乗じて密かに近くの温泉宿に運び出したことを嗅ぎつける。
そこで彼は女主人に向かって、なぜそんなことをする?その旅館とこことどういう関係なのか?としつこく尋ねる。
客の名誉を守るためだという彼女の答えを軽く馬鹿にしたように笑う。
とにかく不愉快な男だ。

歌手は英語で歌う。
舞台上部では女性ダンサーが歌の間ずっと踊ったりアクロバティックな動きを見せたりする。
舞台奥に映像も挿入される。
ラストは1人の若い女の子の死。そしてそれにも関わらず女主人は別の女を勧め、男は呆れて立ちすくむ。

次の日に見た評者の夫のコメントが面白い。
曰く、これはオペラじゃない。俳優はミスキャストで、奥田瑛二と小泉今日子の方がいい。音楽がつまらない。
途中擬古典調になる意味が不明。上でくねくねしてる人の存在も意味不明。歌手と役者とが同一人物を演じるのはいいが、
交互に出てくるならともかく同時に舞台に並んでいるのは理解できない、とのこと。
評者に劣らず歯に衣着せぬ物言いですみません。この人はセミプロの音楽家なので、音楽に関しては要求水準が非常に高い。
だから期待を裏切られた結果の発言なのでしょう。
評者には現代音楽の善し悪しはさっぱり分からないが、役者に関しては同感。
原田美枝子はこの役柄には上品過ぎるし、もっとずっと高貴な役が似合う。長塚京三だって真面目で誠実な慈父のイメージだ。
ひょっとして、奥田瑛二だったら、かえってセリフにさほど不愉快さを感じなかったかも知れない。

設定を読んだだけで分かるように、川端の原作は官能と退廃の極みであり、時に男性目線、女性蔑視という批判にもさらされるが、
これまで多くの人にインスピレーションを与えてきたらしい。13ヶ国語に翻訳され、国内外で何度も映画化されている。

川端はレビューの踊り子を引き抜いて本格的にバレーを習わせたり、作品にも舞踊を描いたものが非常に多いなど、生涯を通じて
舞踊は重要なテーマでありモチーフであったという。
従って、今回ダンスの要素を取り入れたのも、原作者へのオマージュととらえれば、特に違和感はない。
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