ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

オペラ「影のない女」

2024-12-03 17:47:46 | オペラ
10月24日東京文化会館大ホールで、リヒャルト・シュトラウス作曲のオペラ「影のない女」を見た(ペーター・コンヴィチュニー演出、アレホ・ペレス指揮、
オケ:東響)。



 東南の島々に棲む皇帝は、影を持たぬ霊界の王カイコバートの娘と恋に落ち、皇后とした。
皇帝は3日間、狩りに出かけると宮殿を発つ。皇后のもとへ一羽の鷹が舞い降り、「影を宿さぬ皇后のため/皇帝は石と化すさだめ」と
告げる。期限まであと3日。乳母は、人間をだまして影を買い取ることができると皇后に教え、二人は人間の世界へと降りていく。
染物屋バラクとその妻も子供に恵まれていない。乳母は、自分たちが3日間召使いとして仕え、妻の影を買い取る契約を交わすが、
妻の耳には生まれざる子供たちの恨みの声が聞こえ、夫を拒否してひとり眠りにつく。
 妻は若い男との不貞をでっち上げ、乳母と皇后の二人に影を売り払い、母親になることを諦めたと告げる。
温厚なバラクも激怒し、妻を殺すと宣言すると、天から裁きの刀が降り、地が裂け、バラクと妻を飲み込み、家は崩れ去る。
 染物屋夫妻を救うため、裁きの場へと出ることを決意する皇后。そこに石となった皇帝の姿が浮かぶ。
湧き出る「生命の水」を飲めば、影を得られるという試練に、「飲まぬ」と宣言する皇后。
すると皇后の体に影が宿り、皇帝はもとの姿へ。染物屋夫婦は互いの無事を喜び合う(チラシより)。

さて、今回の上演は、上記のあらすじとはほとんど違う!
「問題児」コンヴィチュニーが、またしても波乱を巻き起こした。
この人は2011年に「サロメ」を演出した人で、当時のブログにも書いたように、もう二度とこの人とは関わるまいと思っていたのだが、
めったにやらないオペラなので、やはり見たくなって、おっかなびっくり出かけたのだった。
結果は・・やはり恐れていた通りだった。

舞台は照明で真っ赤。車が一台止まっている。
サングラスの男たちが4~5人いて、一人が銃で撃つと、みんな倒れる。
乳母に男(父王の使者)が話しかける。これが前後関係の説明となる。
若い女が3人、意味ありげに立っている。その内の一人が鷹らしい。
太った男が「皇帝と呼ばれるボス」。そして乳母。
皇后に影ができないと(妊娠しないと)皇帝は石になってしまう。
期限は12か月で、あと3日でその期限が来る。
日本語字幕で皇后のことを「お嬢」というのが面白い。

バラクは妻を金で買ったことになっている!
二人はまったくうまくいっていない。
妻はずっと、お腹に枕を入れている。
バラクがベッドに横になってデッキで音楽(このオペラの音楽)を聴いていると、妻が来て、うるさくて眠れやしない、と言って
ストップボタンを押して去る。
妻が去ると、バラクはまた音楽を聴く。するとまた妻が来て・・
3度めに妻が来ると、今度はデッキごと持ち去ろうとするので、バラク「ちょっと!」
妻「何よ」
ドイツ語で歌っていたのが、突然日本語の会話が始まったのでびっくり。
会場も衝撃を受けて、固唾を飲んで舞台を見守る。
・・・
バラク「自分で洗濯する方がきれいになるからいいよ」
妻「洗濯ってのはね、洗って干して取り込んで、畳んでタンスにしまうまでを言うのよ。
  あなたにそんなことができるかしら」
原作とはすっかりかけ離れているが、この時の二人の会話が可笑しい。

ダブル不倫!
昼間、皇帝がなぜかバラクの家にやって来て妻をレイプ。しかも同じベッドにバラクが寝ている隣で!
妻は叫び声を上げてバラクに助けを求めるが、バラクは寝たまま。
妻「仕事の時間に寝てて・・そんなら私は・・・」
妻は緑の服を羽織り、カバンを持って皇帝と共に出て行く。
皇后がそれを見送り、バラクを起こし、抱きしめて、二人は関係する。
が、皇后は「皇帝は石になる。私の罪のせいで」と言い出し、頭を抱えて苦しむ。
歌いつつ、自ら幕を引く。
~休憩~
乳母はセラピストになっている。
バラクが妻を探しに来ると、「彼女はあなたの死を願いながらあちらに行った」と下手を指す。
バラクはそちらに向かう。
次にバラクの妻が来ると、「バラクはあなたを殺そうとあちらに行った」と上手を指して、そちらに行かせる。
その後、男女が来て・・
皇帝と皇后が来る。・・・乳母は追い出される。
皇后は一人になると、携帯電話で父王カイコバートと話す。
突然、皇后は赤ん坊を出産!二人の女性がそばに来てケアし、赤子を取り上げる。
バラクと車椅子に乗った皇帝(赤薔薇の花束を抱えている)が入って来て、喜ぶ。
だがその時、子供の声が日本語で響き渡る。
 「ぼくはあなたの子供だよ。ぼくを殺して。もういやだ!」
ちなみに字幕の英語は "I am your child. Kill me ・・"なので、性別は不明。
こうはっきりした声で言うので、皇后はその子を皇帝だかバラクだかの膝の上に置く。

バラクは皇帝と二人でテーブルにつき、こちらを向いて酒を飲み、しゃべる。
その間、妻はずっとバラクへの思いを歌い、バラクを褒め続け、バラクへの愛を歌い、「聴いて」と言うが、
バラクはまったく無視して、皇帝とおしゃべり。
ついに妻が「私を早く殺して」と言うと、バラクは彼女をピストルで撃ち殺す。

最後のシーンはレストラン。・・・
不条理性を強調しているようだが、意味不明。
~~~~~~~ ~~~~~~~
暗転して音楽が終わった途端にブーイングの嵐が起こって実に愉快だった。
ブラボーと言ってる人もいたけど。
いつかまた、別の演出のを見たくなった。
やっぱりこの人の演出は嫌だ。
どんなに音楽がよくたって。
この演出家についてはいろいろ言われているが、私に言わせれば、ただ単に、F〇〇〇が好きで聴衆の度肝を抜くのが趣味なんじゃなかろうか。
もちろん原作は男性優位の思想で、その点腹立たしくはあるが、だからってこんな風にしてしまう必要があるだろうか。
シュトラウスの音楽に浸るのに、そのことがそれほど邪魔になるだろうか。
少なくとも私は、2010年に同じ会場でこれを見た時、ラストで気持ち良く涙を流せた。
単純?
別にそう言われてもいい。
あらすじをここまで変えなくても十分楽しめるのは、私のような人間の特権なのかも知れない。







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