「古都逍遥 京都・奈良編」「花の詩」「日常のこと」や花や風景写真

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 「室生龍穴神社」(むろうりゅうけつじんじゃ)

2011年12月11日 11時12分36秒 | 古都逍遥「奈良篇」
 室生寺の東方約1キロメートルほどの山間に、樹齢千年とも言われる杉や檜の巨樹が林立する中に鎮座する「室生龍穴神社」がある。神域には龍穴と呼ばれる洞穴があって、いまでも雨乞いの行事が行われている。「室生山年分度者奏状」に、天応元年(781)には勅使や国司が龍穴神に派遣されて、請雨・止雨の祈祷がなされたとあり、室生寺よりも古い存在であったことがわかる。

 石造りの鳥居の前に立つと神門のような大杉が二本構えており、その奥は日暮れ時のような薄暗で冷気に身が包まれる。鳥居をくぐると目に入るのが「連理杉」いわゆる「夫婦杉」で、二本の根が互いに絡み合い睦み合っており、神木として祀られている。水のない小川の神橋を渡ると大きな狛犬が睨みを利かせ、巨樹が脇をかためたその先に拝殿が見える。拝殿の裏側にさほど広くない空間があって石鳥居とその参道の奥に瑞垣に囲まれた濃い朱塗の本殿がある。その近くにまては行けないが砦を思わせ構えが印象的だ。

 当社の前を流れる室生川は、宇陀川、名張川、木津川となってやがて大阪湾へと至るが、当社はこれらの川の水源に鎮座する祈雨・止雨神として、古来国家的にも崇敬の篤い神社で、祭神は、高?神(たかおかみのかみ)あるいは善女(ぜんにょ)で、天兒屋根命(あめのこやねのみこと)、大山祇命(おおやまづみのみこと)、水波能賣命(みずはのめのみこと)、須佐之男命(すさのおのみこと)、埴山姫命(はにやまひめのみこと)が合祀されている。明治初年の神仏分離までは、室生寺の本地仏の鎮守としてその支配下にあり、その祭祀も主として仏式で行われたという。

 当社の裏手から渓流沿いに約7~800メートルほど登ると岩窟があり、竜王の籠る洞窟として竜穴と呼ばれて古くから請雨祭祀の行われた所である。承平7年(937)に書かれた「室生山年分度者奉状」に、室生寺と当社のことが記されており、『件の竜王を以って伽藍の御法神となせ、旱災ある毎に、竜王の穴地に臨み、甘雨を祈るに、祝言未だ訖らざるに、霖雨いよいよ降り、五穀忽ちに茂る』とある。

 龍穴に到着する前に天岩戸と呼ばれる巨石がある。一枚岩が真っ二つに断ち割られたようで、そしめ縄で結ばれており、伊勢二見の夫婦岩のような神秘的な景観である。吉祥龍穴のある谷には一筋の川が流れており、その上流には招龍瀑と呼ばれる滝が見える。夏でもひんやりとしており下界の猛暑などしばし忘れさせてくれる。

 所在地:奈良県宇陀市室生区室生1297。
 交通:近鉄大阪線室生口大野駅から奈良交通バス血原橋方面行きで20分、竜穴神社前下車すぐ。無料駐車場もある。
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