帰国してからもう10年余が過ぎた。当時、過熱気味のマスコミと当惑気味の著者の顔をまだ覚えている。だが、あらためて知るのは、子供たちが残されている北朝鮮に戻るのか、両親兄弟のいる日本にとどまって子供を待つのか。重い、苦しいその決断は我々の想像をはるかに超えるものだったことだ。1年7か月の待ち続けた時期、その後も、両親が拉致されたことは知らずに育った子供たちが日本に残るという決断。それが間違っていなかったと思うまでの心の軌跡、そして北朝鮮での24年間が感情と感傷を抑えて綴られている。だから、民衆と拉致を指令し、それを実行した人と区別してみることが、<今後の拉致問題解決や日朝関係にも必要なこと>との言葉には、より重さを感じる。