NHKの「“100分de名著”フランクル『夜と霧』」が何となく気になり、録画したがそのままに。そんな時にこの本に出会った。約60年前に原題『一心理学者の強制収容所体験』が『夜と霧』という書名で翻訳出版された。ユダヤ人精神科医・フランクルがナチスドイツの強制収容所での体験をつづったこの本、累計百万部を超える。なぜ、どのように読み継がれてきたのか。極限の深淵のなかでも “人生はあなたに絶望しない”“それでも人生にイエスと言う” などのフランクの言葉。新聞記者の著者は<目に見えない地下水脈のように、フランクルの言葉は戦後日本に広がり、誰かを支えてきた。>そして、<一冊の本を手がかりに、私はフランクルの水脈をたどる旅に出た。>と。確かに、この本は『夜と霧』を手にとった多くの人に与えたもの、つながりを描いているが、同時にフランクル著作の入門書とも言える。ジャンルは異なるが、ナチス占領下の社会や収容所を題材とした映画「ライフ・イズ・ビューティフル」・「この素晴らしき世界」も絶望からの希望をテーマとしていたような気がする。そういえば、東北大震災後によく言われた“生き方の見つめなおし”は何処へ行ってしまったのだろうか。