下山事件、松川事件などとともに戦後の公安事件のひとつと言われている白鳥事件。今から60余年前のことである。内容も忘れてしまったし、さほど興味なかったが、「亡命者」というタイトルと白鳥警部が母校の先輩卒業生と分かり読み始めた。著者が事件のあった北海道のテレビ局の放送記者だけあって、事件の概要、当時の地元・社会状況はじめ関係者の証言・その後の動静など詳しく書かれている。発生直後に共産党の犯行と断定され、関わったとして多くの若者・学生の逮捕や中国へ逃れた者もいた。実行犯とされた男が中国で死亡、真実を知ると言われた最後の一人もその中国で2年前に83歳で亡くなった。当初からの謀略説や唯一の物的証拠にも浮上した疑問など、真相は分からずじまいだ。占領政策、朝鮮戦争、共産党の軍事方針などの時代背景のなかで、多くの若者の翻弄された人生。著者はその<青春の光と長い影法師>を辿ってゆく。