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山の描写も巧い『山女日記』

2015年07月16日 | 読書

連作小説というのだろうか。少しづつ登場人物を変えて、妙高山、火打山、槍ヶ岳、利尻山、白馬岳、金時山、そしてニュージーランドのトンガリロを登る。だが、山ガールと呼ばれる山好き女性の単純な山日記ではない。山道を辿りながら思いめぐらすのは仕事や結婚、家族、それぞれが抱えている生き方への疑問。夜行バスの中、せんべいをバリバリ、大声で話す<おばさんたちのグループ>とは違う若い女性たちの悩ましき心の中。それでも登る途中の休憩ポイントや山頂から眺める景色、咲き乱れる高山植物、山小屋での食事、山中で沸かすコーヒーの香りなど、包みこんでくれるのが山の力。そして、呼吸を整えた彼女たちは<新しい景色を切り取りに行こうか>と、また乗り越えていくのだ。トンガリロは別として、昔登った山々を想い出すのに十分な山の描写、著者も間違いなく山女なのだろう。