残雪がまだ多い春の北アルプスを舞台にした山岳サスペンス。今は地元で山関係の仕事をしている元山岳遭難救助隊の主人公が下山中の雪原でひとりの男と出会う。すぐに学生時代の山岳部仲間と分かり、依頼されて白馬岳へ同行することになるが途中で公安警察に追われている身と判明。そのため白馬岳から、さらに先の雪倉岳・朝日岳を越えて栂海新道を経由、日本海をめざすという。鑓温泉から白馬鑓ヶ岳、杓子岳と急斜面の登り下りで2泊目のテント泊。新雪をラッセルしながらたどり着いた無人の頂上宿舎の翌朝、白馬山頂をめざす視界に入ってきた人影は追手ではなく、男の命を狙う別のグループ。大雪渓や白馬山頂直下からの主稜ルートへの誘い込みなど、やっとの思いで撃退。初めは男の持つ拳銃に脅されての登行が、いつしか希望する日本海へ連れて行こうと冬山と化した雪の山稜をひたすら歩む。そして高熱の男を背負いつつ北アルプスを縦走、栂海新道を歩ききり、やっとの思いで海岸線に辿り着いた。しかし正体を明かした男には、波の音も潮の匂いも。山中でもう一人、山岳部仲間の妹の登場は出来過ぎの感じもあるが物語としては面白い。それにしても、春浅き白馬三山はじめとした北アルプスと雪山登山の描写には圧倒された。この暑い夏、読んで少しはクールダウンできるかも。
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