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どこかの山で出会いたい『片足で挑む山嶺』

2024年11月19日 | 読書

8歳で骨肉腫というガンのため左足を失った男性が綴る人生物語。11ヵ月間の入院を終えて始まる片足での生活は大変だったに違いない。だが本人はイジメにも負けず、友達との野球に興じるなど明るく前向きに過ごす。そこには<見られることに慣れなさい>との母親の教えや<やりたいことは自由にやりなさい>という後押し、もちろん本人自身の相当な努力も想像する。社会人となり、様々な競技スポーツを経て鉄人レースとも言われる水泳、自転車、ランニングのトライアスロンにも挑戦。しかし再び、絶望の淵に立たされることに。だが、それをも乗り越えて百名山と出会い、片足で全てを登った人がいないという事実に挑戦意欲が湧く。クラッチという杖を使い、体重を支えながら急坂も岩場も一歩一歩登って下る。すでに登頂を終えたという「大キレット」コースでの槍ヶ岳、自分は尻込みして未踏だ。剱岳の「カニのタテバイ」は前をよじ登る登山靴の裏を見上げながら、「ヨコバイ」も見えない前足の置き場を足先で確かめつつ必死の思いで登った記憶がある。NHKテレビで登山の様子を紹介された鹿島槍ヶ岳から五竜岳への縦走路も難所だ。健常者でも上級者向きで難関といわれる山々、コースを登ってきた。著者は、自分に与えられた“天命”は<五体満足で生きることでなく、「一本足」になって前人未踏を成すこと>。読者にむけて<自分に天命があることに気づいて、充実した人生を>とメッセージを送る。執筆した今年4月時点、百名山の残りは30座で幌尻岳、飯豊山、南アルプスなどの山々をあげている。自分の経験では技術よりも体力が必要だった。ぜひケガなどすることなく、目標を遂げてほしい。またトレーニング登山でどこかの山で会えることも願って。

          



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