出沢は一組の内田仁さんから始まる。
回覧の回る順番である。昔、あそこに街道があって、あの家が先だとか
門口があっちからだから、この家に先に廻るとか、行きつ戻りつしながら
6組七久保の太田さんが最終40番目になる。
ところが・・・、鮎は上るからという理由で、滝番は反対に6組から
1組に逆廻りをすることになっているから、少しややこしくなる。
(昔の有力者のエゴか、もめた結果なのか今となってはその理由は分からない)
新組長の初仕事は滝番のクジ引きだ。組長会で1組長が当たり番を引いた。
今年の口開けは1組からだ・・。が、1組7戸の内どこからか始まるかが問題だ。
1組でも戸口番によっては、最後になるかも知れない・・。
一緒に戸口番のクジも引いたが、区の総会まで開けるのを待つことにした。
天国と地獄は阿弥陀様の手の内だ。
阿弥陀様が微笑んだのは、前述の〔仁〕さんだった。仁さんから
6組大田さんに廻る。喜んだのも束の間、
他の1組6人はハズレだ。最後にまわる。地獄に落ちまいと
『口開けは客が多いで、バカに飛びゃせんわ』とか
『早けりゃあ飛ぶっていうもんでもないし・・。』とか
中には『あいつはこれで今年の運を使い果たしたな』
などと、穏やかならぬ思いで自分を慰める・・。
因みに、仁くんが1番を引いてくれたお陰で6組3番戸の私も口開けになった。
これは勿論、日頃の行いが良いからだ。