ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

なぜアル中に?

2018-10-12 06:23:52 | 病状
 コープで警備員をやっている兄(あん)ちゃんとの話の続きです。メッシ-君・ミツグ君から足を洗い、女子大生の彼女をキッパリ諦めたと言っていた彼ですが、その後どうしているか聞いてみると、・・・。

「甘い物と酒ですわ。どうしてもつい手が出てしまって・・・。」
「ほぉ、甘辛の両刀遣いか。アル中が酒を止めたら皆が皆、やたらに甘い物を欲しがるんだが・・・。そうそう、アル中になるから朝から酒はダメだよ、絶対に!」
「ハイハイ。そう言えばおっチャン、アル中だったとか?」
「完治のない病気だから、今もアル中で変わりない。飲まないでさえいればこんなふうに普通なんだけど、一杯でも飲んだら元の木阿弥さ。」

「どう見てもそうは見えないけど、なぜアル中に? おっチャン、ゴミ拾いにハマっているようだから、やはりハマリやすい性格とか?」
「ハマリやすい? そう、間違いなくそれはあるね。それとね、若いというのは特有の思い上がりや自惚れが強いのよ。私にも変に歪んだ思い込みがあって、自分に出来ないものはないなどと、とかく不遜になりがちでねぇ。
 ところが、思い通りになるほど世の中甘いものじゃない。なかなか思い通りにならないものだから、おもしろくないやらモヤモヤが溜まるやらでねぇ。その憂さを晴らそうと、ついつい酒に縋るようになったんだなぁ、それがオレ。」

「理想と現実の乖離ですか? そんなの誰にでもあることでしょう。もしそのせいだとしたら、誰でもアル中になってしまうじゃないですか?」
「そう、専門家は誰でもアル中になり得ると言うんだけどね。酒はね、飲むのが頻繁であればあるだけ酒に強くなって酔えなくなる。少しばかりの酒では一向に酔えないからと、勢い酒量がドンドン増えてしまうことに・・・。私の場合は、元々酒に強い体質だったことが拍車をかけたんだね。」

「いつ頃からアル中だってわかったんですか?」
「40代半ば。お昼頃になると手が震えてることに気づいたのが決め手だったけど、もうそのときは立派なアル中の一丁上がりでね。・・・その相当前から始まっていたようだねぇ。
 30代末だったかなぁ、成果の割には思い通りに昇進できなくて、なぜ自分だけが不遇なのかと嘆いてはダラダラ飲んでいたからねぇ。今思えば、未熟な世間知らずだっただけのことで、よくもあれだけ “身の丈知らずの身の程知らず” でいられたなぁと思うばかりよ。」
「“身の丈知らずの身の程知らず” ですか?!」
「理想に憧れるのもいいが、足下も見ないで高嶺を望んでばかりじゃ危ないってこと。後40年も経てばわかると思うよ。」
「40年もですか? それじゃ、おっチャンの歳ということじゃないですか。まぁ、心しておきますよ。」
         *   *   *   *   *
 8月に循環器内科を受診したとき、主治医から「なぜ、アル中に?」と同じ質問を受けました。「心に闇があって・・・」と答えたのですが、「心に闇なんて、誰にでもあることだよ」と、にべもなく返されました。

 その時に比べれば、兄(あん)ちゃんへの今回の説明は少しはマシだったでしょうか? 単なる常習の飲酒習慣と、酒に耽溺状態となるアル中との間にある不連続な変化が、未だに深い闇に包まれていてわからないままでいる私です。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ランキングに参加中です。是非、下をクリックして順位アップに応援お願いします!
クリックしますと、その日の順位が表示されます。
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ
    ↓      ↓

老いは懲りない?

2018-10-05 06:49:02 | 病状
 置き忘れの防止には手荷物を一カ所にまとめて置くこと。これは、セカンド・バッグの置き忘れを何度も繰り返し、冷や汗を散々搔いた末に辿り着いた鉄則です。

 この鉄則を十分理解しているつもりでも依然としてポカを繰り返しています。幸いなことに実損被害をこれまで免れていることから今だに懲りていないようなのです。どうやらこれも老いなのでしょうか?

 ついこの間はビニール傘を置き忘れてしまいました。ゴミ拾いコースの道傍に無造作に捨てられていた傘ですが、広げてみたらまだ十分使える新品だったのでシメシメと持ち帰ることにしました。

 そのままゴミ拾いを続けながらしばらく歩いて行くと、歩道下の土手の法面にゴミが散らかっていました。早速それらを始末しようと、ゴミ拾いグッズを土手上の欄干の足下に置き、件の傘は欄干の手すりに掛けて置いて、おもむろに法面を下りたのです。

 お察しのように、作業を終えたら見事に件の傘だけ置き忘れていました。そのことに気づかされたのは20分ぐらい経ってベンチで休憩していたときです。慌てて来た道を戻ったのですが、歩き始めて直ぐに置き忘れた場所の見当が付き無事回収できました。

 忘れ物があるときは、“虫の知らせ” とでも言うのでしょうか、妙に不穏な感覚が湧いてきます。この妙に不穏な感覚は物を忘れた場合に限ってのことで、言葉を忘れて出て来ない場合にはこれとは別の違和感が湧いてきます。この傘のときも同じで妙に不穏な感覚がありましたが、晴れた日でしたしゴミ拾いグッズも揃っていたので気に留めなかったのだと思います。

 同じ日に同じようなことがもう一度ありました。

 海辺にある建造物の隅は吹きだまりになりがちです。建物の仕切の金網がその吹きだまりになっていて、台風で吹き飛ばされた建材(断熱材?)の断片がそこに散らばっていました。

 近くのベンチで休んでいるときそれがどうにも気になり、それらの断片を拾い集めて大型のゴミ袋に詰めて置くことにしました。その作業を終えて件のベンチに戻ったとき、大事なトングがないことに気づかされました。

 トングも念のために建材拾いに持って行ったのですが、出番がなかったので現場の金網に立てかけて置いたのです。このときも気づかされたのは休憩中のことでした。

 何か置き忘れがあった場合、どうやら身体の奥の方でちゃんと覚えているようなのです。そして第六感とでも言うべき妙な違和感によってそれを知らせてくれるようです。

 ただし、この違和感はボンヤリと知らせてくれるのみで、ハッキリ何であるかを思い出せるのは後になって似た状況に置かれたときだけのようです。たとえ老いたとしても、そんな原始的な仕組みが身体には備わっているように思えてなりません。

 せっかく拾った傘にしろ大事なトングにしろ手放したら忘れてしまうのが当たり前、このコマッタ法則こそ何とかして手放すべき対象なのでしょうネ。
         *   *   *   *   *
 もうじき断酒歴5年となるので、大事なことを新たに覚えて記憶する方は大分マシになってきたと思っています。その一方で、記憶を呼び起こす方の置き忘れや物忘れは依然としてひどい状態のままです。

 ところで、痴呆症か否かを診断する際の目安は、物忘れを自覚し具体的で実効的な対策を自分でどう立てているかにあるのだそうです。この診断法を肝に銘じ、違和感だけに頼ることなくどんな具体的で実効的な対策を取るかが今問われているのだと思っています。

 それはそうと、私にとってもう一つ手放すべき対象は長年偏って刷り込まれてきた見方・考え方、すなわち “認知のゆがみ” です。ところが、これも十分わかっていながら、なかなか手放せないままでいます。

 そうではあっても、自分はとかく偏った見方・考え方をしがちなのだ、と自覚しているだけでもかなりの程度自制が効くことが最近わかってきました。“認知のゆがみ” は後天性の属性ですから、こんな自制も本来備わっている原始的な感覚の為せる技かと、勝手な屁理屈を捏ねては悦に入っている私です。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ランキングに参加中です。是非、下をクリックして順位アップに応援お願いします!
クリックしますと、その日の順位が表示されます。
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ
    ↓      ↓

“空白の時間” にも “無力”?

2018-09-28 06:40:00 | 病状
 自助会AAのミーティングでは毎回テーマが立てられて、原則、そのテーマに沿って体験談が語られます。たとえテーマが同じでも、その時々の何かによって想うことが違うことがよくあります。これもAAのミーティングのおもしいところでしょうか。

 先日のテーマは、『アルコールに対し “無力” であること』でした。これもよくあるテーマです。この言葉は、酒に対する自制心が効かなくなって “どうにもならなくなった” 状態を象徴する言葉で、「再び飲酒したら、またボロ雑巾のような無様な姿なるよ」という戒めが込められています。

 その日の私が想ったのは、どういうわけか “空白の時間” でした。再飲酒を防ぐためには、“最初の一杯” を飲まなければいいわけで、“最初の一杯” に誘う最大の危機はやはり “空白の時間” だろうという理屈でした。“空白の時間” による生活リズムの乱れを恐れたわけです。

 お陰様で断酒歴が丸4年と10ヵ月過ぎた私です。今では週単位の生活リズムが確立し、よっぽどのことがない限りその日何をすべきかに迷うことはなくなりました。それでも、思いもしない出来事が起きてその日の予定が立たなくなりでもしたら、せっかくの生活リズムが崩れてしまいそうで心細くなることがよくあります。

 最悪だったのは、楽しみにしていた予定のドタキャンで、覿面にうろたえてしまうこと、つい最近証明されました。2ヵ月前の7月上旬に西日本を襲った集中豪雨のときもまさにそれで、4日間は行動の自由が効かなくなって大変往生しました。

 昨年の秋、大腸のポリープ切除で入院したときも同じでした。たった1日の点滴さえも我慢ならず、タバコも吸えないと怒りを爆発させてしまいました。入院時の注意事項をよく読んでいなかったため、想定外の点滴にうろたえてしまっただけの話です。

 と言うようなわけで、生活リズムが確立したことによって、最近は想定外の出来事に却って過剰に反応しがちになっているようです。予定が突然狂いでもしたら、戸惑ったりうろたえたりするのは健常人でも同じことで、何もアルコール依存症者に限ったことではないと思います。ただ、それが少し過剰になりがちなのが依存症気質の所以なのでしょう。

 家で一人、ジリジリ・グズグズ・モヤモヤし始めたら危険信号です。下手をするとそのまま内に籠もってしまいそうで、とても落ち着いてなどいられません。

 そんなときは不安を振り払うために、即、外に出て道のゴミ拾いを始めることにしています。5分もしないうちに “空白の時間” など忘れてしまって作業に没頭できます。

 その外出も叶わない場合は、思い切って一眠りすることを最後の手段にしています。何の気兼ねもなしに何時でも寝れるというのが退職者ならではの特権なのです。

 “下手な考え 休むに如かず” 一眠りした後は何事もなかったかのように事が捗ります。やはり、“果報は寝て待て” なのですネ。


            *   *   *   *   *

「どうしてゴミ拾いを? なかなかできることではないですよ~!」ゴミ拾い中、道で人にこう言われたら、以前は「なぁに、趣味みたいなものですから」と応えていました。が、最近はずばり「趣味ですから」と言い切ることにしています。どんなときでも直ぐに没頭できることを趣味と言うならば、ゴミ拾いは私にとってまさしく趣味なのです。

 それにしても人生って皮肉・諧謔満載なんですね。現役バリバリの頃はあんなに暇な時間を欲しがっていたのに、退職を期に暇を持て余して酒浸りとなり、その挙げ句の果てがアル中末期の体たらく。命からがら酒を断ったら、今度は暇になりそうというだけで怯える始末。これを皮肉と言わずに何と言うのでしょう。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ランキングに参加中です。是非、下をクリックして順位アップに応援お願いします!
クリックしますと、その日の順位が表示されます。
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ
    ↓      ↓

いい歳をしたアル中には・・・・

2018-09-04 06:25:57 | 病状
 台風20号直撃から丸一日経った日、週一回しか巡回しないゴミ拾いコースをいつものように巡りました。ムシムシして蒸し暑く、ゴミもいつもの2~3倍も散らかっていたので、さすがの私もヘトヘトで少し気が立っていました。

 拾い集めた資源ゴミは、コース途中にあるコープに持ち込むことにしています。その日は珍しく、空のペットボトルやアルミ缶・スチール缶やらの資源ゴミが大きめのビニール袋2つに一杯となり、他に燃やせる通常ゴミのゴミ袋もパンパンとなりました。

 それらのゴミ袋を持ってなんとかコープに辿り着き、資源ゴミの方だけも処分できてホッとしたときです。
「いつもいつも、ありがとうございます。こんな暑い日なのに、・・・なかなかできることではないですよ~!」

 声のした方を見ると、2人の高齢の女性が店先の片隅にあるベンチに座っていました。声の主はその内の一人で、コープ近くの公園の東屋でもよく見かける人でした。

 つば広帽子を被っているものの髪はボサボサ、肝臓でも悪いのか顔色は黒ずんで、身体つきも見るからにやせ細っています。話し方に少しくどいところがあって、バカ丁寧な言葉遣いながらどこか呂律の回ってないところも気になっていました。

「いゃー、やろうとさえ思えば誰にでも出来ることなんですがねぇ。(誰も)やろうと思わないだけですよ。」
「私なんか、アル中だからもう無理、無理! それにしても立派ですねぇ、ホントご立派。」
「いゃー、実は私も、こう見えてアル中なんですよ。4年前、どうにか酒を断てたから今こうしてできているんです。」
「アル中? とてもそんなふうには見えないわぁ。私なんか80過ぎたから、・・・もうすぐ死ぬんだし、・・・何時死んでもいいから、・・・毎晩5合は飲んでいますよ。」
「今のまま飲み続けていたら、最後は、それは悲惨な目にあいますよ。私も最後の頃は、ウ○コまみれのボロ雑巾のようになって、危うく死ぬ寸前でした。」
「私、80過ぎたから、・・・もうすぐ死ぬんだし、・・・何時死んでもいいから・・・・。」
彼女はこう繰り返すばかりでした。これ以上どんなに脅かしてみても埒が開かない、そう思ってその場を去りました。

 かなりの量の酒を毎日飲んでいても、彼女は家に引き籠もってなどいずに気楽に外を出歩いて楽しんでいます。あんないい歳をした人に、今更断酒を勧めて何になるんでしょうか? 酒が脳から抜け切るまでに何年もかかるでしょうし、そう思うと今のままそっとしておいた方がよいのでは(?)と、つい考えてしまいました。

 そう言えば、初めて専門クリニックを受診した62歳8ヵ月のとき、院長から言われた言葉を思い出しました。
「今の年齢が、断酒して回復できる最後のチャンスです。もう少し遅かったら手遅れでしたよ!」



いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ランキングに参加中です。是非、下をクリックして順位アップに応援お願いします!
クリックしますと、その日の順位が表示されます。
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ
    ↓      ↓

優先順位がわからないときは?

2018-08-31 06:12:00 | 病状
 退職して会社を去ってからもう6年以上も経つのに、今でもたまに見る妙な夢があります。退職の期日が迫っているのに、なかなか出張旅費の精算ができないでいるという夢です。

 なぜか未処理の領収書が手元にあり、それを精算するにはどうしても手書きの旅費精算書を作成しなければならない、というのが夢の場面です。

 頭ではその書類作成が最優先とわかっていながら、別のことにグズグズかまけてばかりで、なかなか手を付けることができないでいます。私自身、なぜそうなっているのかわからずに、唯々ジリジリしているばかりなのです。まさか、インターネットのサイトを覗くのに忙しかったわけでも・・・。まぁざっと、こんなたわいのない夢です。

 退職直前の出張など実際はありませんでしたし、旅費精算書の手書きも遠い昔のことです。現金がらみの現金な(?)話ではあるものの、いまだにこの夢が何を意味しているのかわかっていません。

 夢の中では、会社の業務上のことだったので優先すべき課題は何かを理解できていたのですが、これが退職後の普段の日常生活でならどうでしょう?

 特に出かける用事もなく、かといって別にやるべき家事があるわけでもない、何をやったらいいのか見当もつかずにジリジリ・グズグズ・モヤモヤしているときのことです。そんなときは往々にして優先順位を付けることもすっかり頭から飛んでいるのが普通だと思います。

 実はこれが、アル症者の最大の苦手 “空白の時間” なのです。定年退職後のサラリーマンが陥る第二の人生最大の難関でもあります。優先順位をつけるべき具体的な何かがあればいいのですが、それがたとえあったとしても大抵漠然としていて、一向に埒が開かない心境に陥るのが共通しています。

 そんなとき、最優先でお勧めするのが先ず家を出て、身体を動かして何かをしてみることです。私が通っているアル症の専門クリニックでは、教育プログラム以外にヨガ教室、エアロビクス(?)教室、絵画・絵はがき手紙(?)教室、茶道教室などがあります。これらに共通しているのはいずれも “身体を動かす” ことです。

 結局、私はそれらの教室のどれにも参加しなかったのですが、その代わりに見つけたのが “ゴミ拾い” でした。そのキッカケは、通院のため駅まで片道30分の距離を毎日往復歩いたことと、専門クリニックの周辺を小一時間散歩するようになったこと、つまり軽く身体を動かすことが日課となったことでした。

 身体を動かすことが、始めてみて苦にならず、感覚的に続けられそうと思えたらシメタものです。何とか継続しているうちに没頭できるようになり、様々な “気づき” が得られるようにも必ずなれます。もし、どうしても馴染めないようだったら、止めて他の何かを始めてみればよいだけの話です。

 今では、家にいて “空白の時間” の兆しがしたら即、外に出て“ゴミ拾い” を始めることにしています。5分もすれば没頭でき、まとまらなかった考えも無心となってまとまります。そのうえ優先順位も付けられるようになるから不思議です。

「元気ですねぇ!?」 “ゴミ拾い” 中、道でよくこう声を掛けられるのですが、「なぁに、空元気ですよ!」と応えることにしています。照れ隠し半分、本音半分というところでしょうか!?



いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ランキングに参加中です。是非、下をクリックして順位アップに応援お願いします!
クリックしますと、その日の順位が表示されます。
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ
    ↓      ↓

酒乱も、やはり遺伝?

2018-08-24 06:51:49 | 病状
 はるか以前、酒の飲めない人 “下戸” は遺伝による体質のせい、と記事にしたことがあります(『あなたは “脳組”? それとも “肝組”?(上)』2015.12.18投稿)。今回は、“酒乱” について述べていた記事『原因は遺伝子? 酒乱になる人とならない人、何が違う』(日経Gooday 2018年7月3日付)を、かいつまんでご紹介します。

 酒の席で最も嫌われるのは “酒乱” ですが、どうやらこの “酒乱” も親から受け継いだ体質が大きく左右しているようなのです。言い換えれば遺伝的要素が強いという意味です。

 改めてここで、アルコール代謝についてお復習いしておきます。アルコールは、主に肝臓で二段階の代謝を経て無害な酢酸に変わります。そして、最終的には二酸化炭素と水になって体外に排泄されます。

 最初の段階ではアルコール脱水素酵素(ADH)の働きで猛毒のアセトアルデヒドに変わり、次の段階ではアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の働きで猛毒のアセトアルデヒドが無害な酢酸に変わります。これがアルコールの主要な代謝経路です。

 ここから本題に戻ります。この代謝経路に関わる2種類の酵素(ADH とALDH )には、それぞれ代謝速度の違う二つのサブタイプが知られていて、それぞれ遺伝子型が少し違います。この遺伝子型が、酒を飲んだときの体質、“酒乱” や “下戸” を決めているのだそうです。

 そのサブタイプを規定している遺伝子型はそれぞれ、ADHではADH1B*1とADH1B*2の二つ、もう一方のALDHではALDH2*1とALDH2*2の二つです。どちらの酵素についても、~*1と表示されている遺伝子型の方が代謝速度の速い活性タイプを表し、~*2と表示されている遺伝子型の方が代謝速度の遅い不活性タイプです。

 私たちの遺伝子は、両親から片方ずつ遺伝子型を受け継いで、両方合わせて1対の遺伝子として機能しています。ADHとALDHのそれぞれについても、代謝速度の速い活性タイプか代謝速度の遅い不活性タイプか、そのどちらかの遺伝子型を親から片方ずつ受け継いでいます。

 ですから私たちは、これらの遺伝子型の3通りの組み合わせ、~*1×~*1、~*1×~*2、~*2×~*2の内のいずれかを持っていることになります。まさしくメンデルの法則通りにです。

 代謝速度の遅い不活性タイプの遺伝子型を持っているヒトはアルコール代謝が遅く、それがADHの遺伝子なら “酒乱” の気があるということになり、ALDHの遺伝子なら(飲むと直ぐ赤くなったり気分が悪くなる)“下戸” の体質ということなのだそうです。
 以上をまとめたのが下の図です。





                    (日経Gooday 2018年7月3日付 から引用)

 “酒乱” になるのは血中アルコール濃度が0.2%を超えることが条件だそうです。その血中アルコール濃度の目安ですが、ひどく酔った状態の酩酊期なら0.15%~、正体をなくすほどひどく酒に酔った状態の泥酔期なら0.30%~、昏睡期なら0.40%~だそうです。これで大体どの程度なのか見当がつくと思います。

 酒の席で人がどの程度酔っているかは、飲むピッチの速さと “目が据わっている” か否かでわかるものです。特に問題となるのが “目が据わっている” 場合です。この状態は、後に記憶が残らない “ブラックアウト” になっていることを意味し、道理も理屈も通用しません。こんな人がいたら即、側を離れた方が身のためです。

 たとえ酒の席で暴れることがなくとも、酒を飲んだら “目が据わる” 人が直系の親族兄弟にいたら要注意です。あなた自身にも “酒乱” の気があるのかもしれません、ご用心!



いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ランキングに参加中です。是非、下をクリックして順位アップに応援お願いします!
クリックしますと、その日の順位が表示されます。
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ
    ↓      ↓

ガサ入れ?

2018-08-10 06:07:21 | 病状
 アルコール依存症の人は、モノへの執着心が強く、なかなかモノが捨てられないことでも共通しています。なかなか捨てられないモノの一つに、私の場合はレジ袋があります。

 買物袋として再利用するばかりでなく、ゴミ袋として欠かせないので捨てずに取って置くのがクセになっています。実は “断捨離” が必要なのは、むしろこの性癖の方ではないかと心得てはいるのですが・・・。

 道に落ちているゴミで、数で圧倒的なのはもちろんタバコの吸い殻です。が、容量的に「ガサ張る」のは菓子類のプラスチック包装や、意外にもこのレジ袋なのです。ミーティングでこのことを話そうとして「ガサ」と口にした瞬間、後が続かなくなったことがありました。言葉が出て来ないのです。

 ウソーっと呆れられると思いますが本当です。まさか、「ガサ入れ」などとは言わなかったと思いますが、「ガサが増して」ぐらいに誤魔化して続けたと思います。さすがに慌ててしまいました。

 私が想起障害と口を酸っぱく言っているのはこのことです。普通なら、老化による度忘れだと笑い話で済ますところですが、私としてはアルコールの後遺症・PAWSのせいという思いが未だに拭えないでいます。

 ところで先日、久々に専門クリニックを受診しました。そして、懸案となっていた例の件、アルコールが老化促進薬ではないかという疑問を院長の S 先生に聞いてみました。

「まさにその通り! だからここの患者は皆が皆、老けて見えるでしょう?!  生活習慣病は飲酒生活習慣病と言ってもいいぐらいで、酒で老化が進むんです。ヨタヨタ歩きの歩行障害や、アレがアレしての記憶障害も老化とまったく同じだし、酒は老化促進薬だから一気に老化が早まるんですよ!」

 話を元に戻して、ミーティングではこの後、私の持論を述べて何とか話を締めました。「~でなければならない」という考えが曲者で、この考えを手放すよう心懸けているといういつもの持論(?)です。実はこれ、S 先生の受け売りでした。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ランキングに参加中です。是非、下をクリックして順位アップに応援お願いします!
クリックしますと、その日の順位が表示されます。
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ
    ↓      ↓

兆し・兆候 / 予兆・前兆

2018-07-24 06:35:28 | 病状
 NHKの医療情報番組『総合診療医ドクターG』、一般視聴者向けに病名推理という娯楽の側面もあり楽しめる番組です。地上波では放送が不定期なので、これが難点と言えば難点なのですが・・・。

 7月14日放送のテーマは “心筋梗塞”。厳密に言えば、心筋梗塞の関連痛がテーマでした。関連痛とは耳慣れない言葉ですが、その病気に先立って別の部位の痛みとして感じる痛み・症状のことだそうです。

 番組中の再現ビデオでは、発症の大分前から “しつこい肩凝り” に悩まされていたとか、フットサル中に “息切れ” がしてプレーを続けられなかったことなどが関連痛として紹介されていました。

 “しつこい肩凝り” で思い出したのですが、私もかつて不安定狭心症(切迫心筋梗塞)で同じような経験をしています。発症の大分前に “しつこい首筋の懲り” に悩まされ、整体師のところに何回か通ったのですが一向に善くなりませんでした。

「こういう “しつこい首筋の懲り” は、内臓の病気が原因のことが多いんですよ。」整体師からこう言われた言葉が今でも強く心に残っています。

 ところで、番組で印象的だった言葉がもう一つありました。それは “予兆” という言葉です。ドクターGが、関連痛は心筋梗塞の “予兆” だったと、しきりに “予兆” を使っていたのです。

 以前、この “予兆” という言葉が出て来なくて困ったことがありました。怒りの感情を逸らすには、その “兆し” の感覚を察知できさえすればよいという趣旨を記事にしたときのことでした。

 実はこのとき、“徴候” という言葉は出て来たのですが、病気に関係する医学用語と思い込んでいたことから相応しくないと即、却下したことを覚えています。辞書には “兆候” という字もあることに気付きもしませんでしたし、言葉は知ってはいても “予兆”、“前兆” などはすっかり記憶の外だったのです。

 番組をよい機会と思い、“兆し”、“予兆”、“徴候”の類似語について調べてみました。その結果、これらの言葉は共通して何かが起こることを予感させる現象を指す言葉で、強いて挙げれば大きく2つに分けることが出来そうとわかりました。

 兆し・兆候(徴候):
   ①ある出来事が起こりかけていると何となく感じ取れる気配
   ②すでに起こり始めたできごとの一部が現れかかっていること
 予兆・前兆:何か起こる前に先立って起こる別の具体的な現象

 記事を投稿した当時、私が苦し紛れに使った “兆し” は、どうやら “怪我の功名” だったようです。まぁ、ここは一応、メデタシ、メデタシとなりました。

 記憶のネットワークを劣化させずに維持していくには、どうしても生きた会話の場に身を置いて、その場の “気” を受取ることが必要なようです。そして、印象に残った言葉を、新たな気持ちで再び覚えていくしか他に手はない、改めてこう思わされた番組でした。

 なお番組では、“冷や汗” を伴うような異変があったら、事は命に関わる危機的な状況と言っていました。このようなときは即、救急車で病院行きと心得て置くと間違いないと思います。念のため。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ランキングに参加中です。是非、下をクリックして順位アップに応援お願いします!
クリックしますと、その日の順位が表示されます。
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ
    ↓      ↓

健康な心 狂った心

2018-07-13 06:12:21 | 病状
「健康な心って?」改まってこう問われたら戸惑ってしまうのが普通だと思います。これは、幸せとは何かという問いかけと同じむずかしい問題です。

 当たり前と思っていたことが実は幸せそのものだった、と失ってみて初めて気づくのと同じように、健康な心も、一度は失って狂気から回復しなければわからないと思うからです。幸い(?)なことに、私はこのどちらも経験しています。

 先日の自助会AAのミーティングでは、この “健康な心” がテーマでした。この類いのテーマの場合、真逆の意味の反意語から取りかかるのがよさそうです。AAの言う “健康な心”  とは sanity (正気、気の確かなこと、分別)のことで、その反意語は狂った心・狂気です。

 かつて私が経験した狂気とは次のようなものでした。逃げ場がなくなるほど精神的に追い詰められたとき、決まって性欲に火が付いて最後は妄想にまで膨れ上がったものです。何とか生き残らねばという本能の悪足掻きだったのでしょうか?

 そんなときは、何とか気を紛らわそうとしての深酒が定番でした。しかもその深酒は1日だけで治まるわけがありません。これが連日続いたら最後、性的衝動でもうどうにもならなくなる寸前まで行きました。アルコールが自制を取り払い、歪んだ性欲(妄想)を増幅させて狂気の域まで狂わせてしまったようです。

 今思えば、衝動に駆られて刑事事件を起こさなかったことが不思議なくらいです。一旦取り憑いた妄想は、自分では異常とわかっていても自力で消すことはできません。

 そんな狂気に対して、では反意語の正気・健康な心とは? 狂気の兆しを察知したときに、自分を含めた周りの状況をありのまま(客観的)に受け止めて冷静な価値判断を下せること、これが今の私の理解です。もちろんこれは、妄想を増幅させるアルコールを断っていることが大前提です。

 価値判断や感情を司っているのは大脳辺縁系にある扁桃体と言われています。この器官は、記憶を司る海馬の直ぐ隣りにあります。このことから、価値判断は記憶のネットワークと密接に繋がっていると考えられています。確かに、良い悪いの価値判断は経験の有無に左右されます。そうであれば、記憶のネットワークを健全に維持しておくことが即ち、健康な心を保つこと、となるのではないでしょうか? これが二番目に得られた私の理解です。

 ところで、つい最近知り合った K 氏と市役所の食堂で昼食中、時事問題が話題となったことがありました。このとき自分でも吃驚したのは、何があったのかは思い出せても、誰が(人名?)、何時(西暦年数?)については記憶が飛んで一向に出て来ないことでした。自分では十分過ぎるぐらい正確に覚えていたつもりでもこのザマだったのです。

 記憶のネットワークに刺激を与えるためには、酒害体験以外の様々な話題の場にも参加することが欠かせないようです。自助会以外の他流試合も記憶力の修練には必要だとつくづく思い知らされました。

         *   *   *   *   *
 このところ狂気に駆られた殺傷事件が立て続けに起こっていますが、その度に聞こえてくるのが「誰でもよかった。むしゃくしゃして」という犯人の決まり文句です。いかにも得体の知れないモヤモヤした衝動に駆られての犯行だったのかがわかります。“気違いに刃物” ですから、正義感からそんな輩に丸腰で立ち向かうなど以ての外です。

 現状では狂気への対策は立てようがないのでは? 不条理とは思いますが、ついついそう思ってしまいます。人の心の中は見えませんが、目は心の窓と言います。精々用心すべきは、目ヂカラのない人、変な目つきの人には決して近づかないこと、これしかないのでは?

 繰り返しになりますが、
一旦取り憑いた妄想は、自分では異常とわかっていても自力で消すことはできません、念のため。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ランキングに参加中です。是非、下をクリックして順位アップに応援お願いします!
クリックしますと、その日の順位が表示されます。
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ
    ↓      ↓

立ち話

2018-06-05 06:12:50 | 病状
 道のゴミ拾いを3年も続けていると、さすがに顔見知りが多くなりました。先週の日曜日、ゴミ拾いコースの道で出会った人もその一人です。私より少し年上の、70歳過ぎと本人は言っていました。今回は、そのときの立ち話を再現してみました。(誰がしゃべったのか記していませんが、内容から容易に察しが付くと思います。)
         *   *   *   *   *
「日曜日もやるっていうのはスゴいですね?! 全くのボランティアですよね?」

「そうです。持病のためもあって、・・・まぁ、実益と趣味とを兼ねてなんですが、趣味というよりもう病気ですね。一日でもこれをやらないと覿面に体調が良くないんですよ。なさけないことですが、これが仕事なら日当5千円でもやらないでしょうね(笑)。」

「体調に良い? 持病って何ですか?」

「糖尿病です。こうやって身体を動かしていれば血糖値の上昇を抑えておけるんで・・・。糖尿病薬も1日1回の1種類だけで済んでいます。ただ単に歩くだけのウォーキングに比べてもゴミ拾いの方がずっと効くんですよ。」

「私も、高脂血症と高血圧が持病なので薬が手放せない状態なんです。高脂血症の方は、病院を変えたときに一度薬を止めてみたんですが、やっぱり悪化しましてね。医者からは、薬を止めたデータがないから一生服用し続けなさい、と念を押されています。それ以来、ずっと続けているんですよ。」
(顔がくすんで見えるのは、どうやら病気のせいと思われました。)

「なるほど! 私も以前は高血圧もあって、高血圧だけでも3種類の薬を飲んでいました。最近は、全部が全部データ頼みの医者ですからね。医者が引き合いに出すデータというのは、何千人か何万人かの患者に薬を使った大規模臨床試験のデータのことで、実は製薬メーカーが主導して集めたものなんです。製薬メーカーって、薬を使ったらこんなに良くなるというものには何十億もの資金を出すのに、止めても問題ないというデータにはびた一文出さないんですよ。・・・こんなふうに医者に言ってみたら、すんなり薬の数を減らしてくれましたがね。」

「そりゃ尤だ! そんなに金がかかるんなら、中止したデータなどわざわざ採らないでしょう。・・・ということは、以前はもっと薬が多かったんですか?」

「以前は私も、高血圧、糖尿病、高脂血症と生活習慣病を3つも抱えていました。その挙げ句、狭心症にも2回なりましてね。そんな状態でしたから、全部合わせて9種類15錠もの薬を飲んでいました。それが酒を断ったら半年もしないうちに、糖尿病以外は全部正常範囲内に戻ったんです。もちろん、糖尿病も軽くなりました。そうそう、血圧がアルコールで高くなるのは有名な話なんですよ。」

「ほぉ、高血圧と高脂血症が・・・?! 酒を断って? しかも半年で?」

「お恥ずかしい話ですが、実は私、酷いアル中だったんです。酒を断って4年半経ちます。」

「どう見てもそうは見えませんね。とても健康そうに見えますよ。それはそうと、そもそもアル中って、どんなふうだったらアル中と決まるんですか? 私も酒が好きな方なんで・・・。」

「先ず、飲み始めたら止まらなくなることですね。この一杯で止めようと決めても止められない、そしてずるずる飲み続けているうちに寝てしまう。アル中って、酒乱型の人よりもこういう寝型の人の方が圧倒的に多いんです。」

「そんな人、酒飲みなら珍しくないですよね? その辺にゴロゴロいますよ。」

「その通りです。そのうち離脱症状と言われる禁断症状が出て来たらアウトです。朝から、というよりも昼近くになると、掌にジットリ汗をかいて手が滑るぐらいになるとか、手が震えて字が書けなくなるとか、・・・昼近くというのはアルコールが身体から抜ける頃合いなんです。こんな離脱症状が出て来たらアル中で決まりです。本人が最初に自覚するアル中の症状ってこんなものです。」

「実は私、今飲んで来たばっかりなんですよ。酒は百薬の長と言われてますよね? そんなことを言い訳に毎日飲んでいるんですが、幸いまだそんな症状はないですし、このところ歳のせいか飲む量もめっきり少なくなりました。今、こうして話を聞いていたら、酒を断つなど劇的に生活習慣を変えないといけないなぁ! 要はそういうことですよね?」

「製薬メーカーに勤務していたから言えることですが、毒でなければ決して薬にはなりません。酒が百薬の長だとしたら、酒は毒の中の毒ということですよ。酒を止めたら薬ナシでいけるかもしれませんよ!」

「ところでゴミ拾い、一日何時間ぐらいやってるんですか?」

「長くて6時間ぐらい、まぁ大体2時間以上はやっています。もちろん、休憩を挟んでの話です。」

「身体に良さそうだから今度、私もやってみようかな」
彼はそう言って、その場を離れていきました。お愛想とは言え、こう言ってもらえるのは嬉しいものです。

「助かります。是非、そうしてください、楽しみにしていますよ。」

         *   *   *   *   *
 一言でアル中を説明するのは難しい、つくづくこう思い知らされました。果たしてこんな立ち話で、アル中という病気が理解してもらえたのか甚だ心許ない気持ちです。

 それよりも感慨ひとしおだったのは記憶力がここまで戻ったことです。断酒してから1年ほどは、たった今聞いた話でも左から右に抜けていく状態でした。だからその当時は、こんなふうに会話を再現することなど至難の業、夢のような話だったのです。



いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ランキングに参加中です。是非、下をクリックして順位アップに応援お願いします!
クリックしますと、その日の順位が表示されます。
にほんブログ村 メンタルヘルスブログ
    ↓      ↓