ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

ヒゲジイのPAWSによる悪文見本市(その4)

2015-09-25 20:56:42 | 悪文見本市
 断酒開始後3~6ヵ月目に自覚するようになると言う急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)、その一つ“思考プロセス障害”によると思われる悪文事例の続きです。
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【事例17】
 17番目の事例は、事例14~16と同じく断酒を始めて満1年2ヵ月の時期のものです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その14)賭場では大勝、でも貧乏な一人住い・・・」より)

「両薬剤の改善率に差が出たのです。偶然に差が出た可能性の確率が5%未満ということで、偶然では出ないとされる差(有意差)でした。」

        
「両薬剤の改善率に有意差が出たのです。偶然から差の出た可能性が確率5%未満ということで、統計学的にみて偶然では起こり得ない差(有意差)でした。」

 生物統計学に関わる事柄は、正確な記述となるよう細心の注意を払うべき典型例と思います。それだけに一般向けに記述するのは殊のほか難しいものです。このことは生物統計学に疎いメディカル・ライティングなら誰しも経験することです。“有意差”の意味が理解できましたか?臨床開発の仕事は、最終の比較検証試験で“有意差”を持って対照薬に勝てるよう、最も適切な治験薬の用法・用量を一から探求していく仕事です。

【事例18】
 18番目の事例は、断酒を始めて1年3ヵ月後のものです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その16)阪神大震災、地震の当日」より)

「私自身、経験したことのない大災害の現場に今いるという自覚はありましたが、日常とは全く異質で、不思議な世界となってしまった現実を醒めた眼で眺めていました。恐怖感も湧かず、興奮していないことが不思議でした。意表を突かれた出来事に感情が完全に封じ込められていたのかもしれません。茫然自失。この四文字熟語では当時の実感が湧いてきません。」

        
「私自身、経験したことのない大災害の現場に居合わせているという自覚はありましたが、日常とは全く異質で不思議な世界となってしまった現実を、第三者のように醒めた眼で眺めていました。恐怖感も湧かず、興奮もしていないことが不思議でした。意表を突かれた出来事に感情が完全に封じ込められていたのかもしれません。茫然自失。この四文字熟語では当時の実感は再現できません。」

 “居合わせる”という、この場面に恰好の表現がどうしても思い浮かびませんでした。“今ここにいる”であれば、まだしも臨場感に富む表現かもしれませんが、“今いる”だけでは味も素っ気もありません。直截的過ぎます。自分の眼でありながら、他人の眼を通したように非情で冷徹な(?)視線であったことを説明するため“第三者のように”を加えました。原文では“実感”の言葉に引き摺られて、“湧く”と自動的に使ってしまいました。ここは“表現”でも可ですが、“再現”の方がより実感に近いようです。

【事例19】
 19番目の事例は、同じく断酒を始めて1年3ヵ月後のものです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その16)阪神大震災、地震の当日」より)

「室内の被害は、食器棚だけが天井の梁桁に引っ掛かって前方に傾き、食器が床に零れ落ち割れて散乱しただけでした。食器棚は押してもびくともしませんが、前に引いてみたら元に戻りました。」

        
「室内の被害は、食器棚が前方に傾いて天井の梁桁に引っ掛かり、食器が床に零れ落ちて、破片が散乱していただけでした。食器棚は押してもびくともしなかったのに、前に引いてみたら元に戻りました。」

 “室内の被害が食器棚だけだった”こと、これが前半の文で最も伝えたかったことです。そのため元の文では“話しことば”そのままに、最も伝えたい“食器棚だけ”から話を切り出し、その後も順番無視の表現となっています。“書きことば”らしい記述順序に改め、時制についても現在形か過去形かを混乱して使用している点を改めました。“押してもダメなら引いてみる”が本当のことなのだと実感した事件でした。

【事例20】
 20番目の事例は、同じく断酒を始めて1年3ヵ月後のものです。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その17)連続飲酒から脱出・仕事再開!」より)

「震災後、アルコール依存症の患者が増えたと聞きます。私のようにすでに習慣的飲酒で依存症になっていた人が、引き籠り状態のまま誰にも介入されることがなかったため依存症が顕在化しただけだと思います。連続飲酒で引き籠りがちの状態では、その姿を他人から見られるのはとても嫌なものですが、見られたり声を掛けられたりすると少し正気に戻るものなのです。」

        
「震災後、アルコール依存症の患者が増えたと聞きます。習慣的飲酒ですでに依存症になっていた人が、震災発生を契機に引き籠り状態のまま誰にも介入されなかったため、依存症が顕在化しただけのことと思います。連続飲酒で引き籠り状態になると、他人から見られることをとても嫌います。ところが、覗いてもらったり声を掛けてもらったりすると、気にかけてもらえたことで少し正気に戻るものなのです。」

 “書きことば”では修飾語と非修飾語は離さずに近い位置に置くこと(修飾語の係りが遠い場合は読点を打つ)、がルールです。それに、本来補足説明として記述されるべき言葉(改訂文の下線部)が欠けています。諄かったり、端折ったりした表現も所々にみられます。主語(依存症者)が記述されていないため、述語に捩じれが生じてもいます。欠けた言葉を補足し、捩じれも解消させました。読み手はきっと分ってくれるもの、という思い込みがよほど強かったものと思います。

【事例21】
 21番目の事例は、同じく断酒を始めて1年3ヵ月後のものです。想起障害が原因と思われる気の毒(?)な文例2題を続けます。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その17)連続飲酒から脱出・仕事再開!」より)

「食卓の上にサランラップで内側を覆った食器が並べられ・・・」

        
「食卓の上にサランラップでくるんだ食器が並べられ・・・」

 断水で食器を洗えない状況で、工夫された生活の知恵を記述した部分です。“くるむ”という日常生活でよく使う動詞を失念した末に、苦し紛れに事実を描写した事例です。近似の言葉で代用したため翻訳調の表現となっていました。もどかしい限りです。

【事例22】
 上の事例21と同じ引用元です。(「アルコール依存症へ辿った道筋(その17)連続飲酒から脱出・仕事再開!」より)

「食事した場所はオカズを自分で取って食べるシステムの食堂で・・・」

        
「食事した場所はオカズを自分で選ぶセルフ・サービスの食堂で・・・」

 ここでも“セルフ・サービス”という普段当たり前に使う言葉が思い浮かばず、苦し紛れに説明調の表現で代用しています。気取って翻訳調にしているのではありません。上の事例21は、目当ての言葉が単純に浮かんで来ない典型ですが、ここでは目指す言葉の意味が分かっていながら、その言葉が思い出せないもどかしさ満杯の事例です。自分でいうのも変ですが、ここまで来ると痛々しくさえ思えます。

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次回もまだ続きます。


「ボケが始まった?(急性離脱後症候群:PAWS)」も併せてお読みください。
 http://blog.goo.ne.jp/19510204/e/9c6d1fc08d197902061b8e0ee33adb6a


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