ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

ヒゲジイのPAWSによる悪文見本市(その8)

2016-11-22 18:54:20 | 悪文見本市
 アルコールの急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)は、断酒を始めて3~6ヵ月で自覚するようになると言われています。その症状の一つ “思考プロセス障害” には、脳の働きにムラがある、頑なで諄(くど)い思考、因果関係を理解できないなどの症状が知られています。

 私の経験からすると、その具体的現れは “遠回りする思考”、“助詞の使い方に混乱”、“修飾語の語順の誤り”、“時制の混乱” などからなり、大概が “慣用的な言葉の使い方(言い回し)を失念すること” と要約できると考えています。

 今回もその具体的な現れと思われる悪文事例をご紹介します。いずれも脳がストライキを起す寸前の状態にあり、集中力に欠け、文案が錯綜する混乱の中で書いたものと思われます。

 なお、現在掲載中のものはいずれも手直しした後の改訂版です。
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【事例38】
「 “大丈夫?” と、“危なかった!” という二つの言葉で、この暴行未遂事件のことが頭を過ぎったのだと思います。『ひょっとして、自分も誰かに恨まれ狙われているのだろうか?』私は自分の身に危害が迫っているものと勝手に思い込み、えもいわれぬ不安に襲われてしまいました。危険を示唆するT氏の言葉に囚われて、危険という先入観(イメージ)から暴行未遂事件へと連想が向ったのでしょう。
 いきなりスリルとサスペンスのただ中に放り込まれたようなものです。帰宅してからも胸がザワつくぐらいに不安が募るだけでした。悪い方へ悪い方へと連想が飛び、挙句の果てひょとしたらT氏の脅しかも(?)とまで疑心暗鬼が膨らんで行きました。そのときふと閃いたのです、その日にあった出来事の事実関係を “ありのまま” に整理してみたらどうだろう・・・と。どうやら暴行未遂事件へのみ気が向かって、あまりにも感情的な “思い込み” に偏り過ぎていると気付いたのです。」

         
「 T氏の言った “大丈夫?” と、“危なかった!” という二つの言葉が、・・・(中略)・・・と勝手に思い込み、えもいわれぬ不安に襲われてしまいました。首尾よくいった意味に受け取ればいいものを、危ないの持つ先入観にのみ囚われて、勝手に暴行未遂事件へと連想を拡げたのだと思います。
 いきなりスリルとサスペンスのただ中に放り込まれたようなものでした。帰宅してからも不安が募り胸がザワつきました。悪い方へ悪い方へと連想が・・・(中略)・・・とまで疑心暗鬼になってしまいました。そのときふと閃いた・・・(中略)・・・と。どうやら暴行未遂事件へのみ気が奪われ、あまりにも偏った “思い込み” から感情的になり過ぎていると気付いたのです。」

        「“思い込み”の逸らし方“ありのままに受け入れる”」(2015.11.20投稿)より

 一読して抱く印象は、随分混乱した頭で書いたものということだと思います。文案が切れ切れに飛び交う中で途惑いながらどうにか書いたものだからです。

 最初の下線部では、 “囚われ” の言葉に文字通り囚われていたことが問題です。これが頑なで諄(くど)い思考に当るでしょうか。ここでは先入観に囚われていることを表現したいわけですから、T氏の言葉の本意と先入観との関係を整理し直しました。

 最後の下線部でも同様に、“思い込み” と “偏り” という言葉に囚われていたことが問題です。両者にはほぼ同義のニュアンスがあるので、“偏り” の方を強調目的に利用し、なぜ感情的になったのかその因果関係を整理し直してみました。

 三番目の下線部では、不安の程度を表現したいのか、それとも不安が昂じた結果を表現したいのかに混乱が見て取れます。不安が昂じた結果、胸のザワツキがあったハズなので、それと分かる表現に改めました。

 これら三つの例は、いずれもその時々の心情を正直に表現しようとしたものの、却って考えがまとまらず、混乱したまま書いてしまったものです。そのため特定の言葉に拘ることになり、因果関係を論理的に記述できなかった例だと考えています。思考プロセス障害の特徴をよく表しています。

 上記以外の下線部では、慣用的な言い回しからみると不自然さが目に付くと思います。これらは想起障害の典型的事例と考えています。連想が「向かう」は「~拡がる」へ、疑心暗鬼が「膨らむ」は「~に陥る」または単に「~になる」へ、気が「向かう」は「~奪われる」へと、それぞれ改めました。案外イメージ的にはピッタリな表現なのですが、的確な言葉が思い付かなかったのです。


【事例39】
「正確に言うと、勝った方が “自分が正義だ” と主張するのも力関係からして尤もだ、と承服できるということです。」
         
「正確に言うと、勝った方が “自分が正義だ” と主張するのも、力関係からして尤もだと承服できるようになったのです。」
              「『人間は平等』は正しいですか?」(2015.11.27投稿)より

 これは時制が混乱した事例です。現在の状態のことか、現在すでに完了している状態(英語の現在完了形)のことか迷っています。どこか違和感を持ちながら放置していました。このような事例は、まだまだあります。

【事例40】
「当時は肝臓を酷使し続けていることもあり、てっきりそれで疲れているのだと長い時間寝ていました。」
         
「当時は肝臓を酷使し続けていたこともあり、てっきりそのせいで疲れているのだと長い時間寝ていました。」
                   「アルコールと“うつ”症状」(2016.2.5投稿)より

 最初の下線部では、時制の混乱がみられます。ここは明らかに過去形にすべきでした。

 次の下線部では、副詞 “てっきり” の使い方が問題です。“てっきり” は、確率的に間違いないことを示す副詞ですが、後の言葉 “それ” にどう係るべきか分からなくなっています。つまり、「~のせい」とすべきことが思い付きませんでした。このように脳が固まると、想起障害のせいで融通がきかなくなることがよくあります。

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急性離脱後症候群(PAWS)】
 症状は、断酒開始後3~6ヵ月目で最も強くなり、6ヵ月~2年で回復する。
  ○ 思考プロセス障害(脳の働きにムラがある、頑なで諄(くど)い思考、
    因果関係を理解できない)
  ○ 情動障害(情動の揺れ)
  ○ 記憶障害(短期記憶の障害)
  ○ 睡眠障害
  ○ 身体的協働性に問題
  ○ ストレス感受性に変化
                  (アルコール依存症専門クリニック教育資料より)


“思い込み”の逸らし方 “ありのままに受け容れる”」(2015.11.20投稿)もご参照ください。


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