ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

ヒゲジイのPAWSによる悪文見本市(その7)

2016-10-14 07:12:02 | 悪文見本市
 私にとって、このブログは闘病記録のようなものです。回復プロセスを含めた病状の記録と脳のリハビリを目的としています。自分の書いたものはその時々自分の心を映す鏡です。記事の内容もさることながら、書いた文章の不具合がその時々の病状を表していると考えています。この悪文見本市シリーズもその一環として掲載しています。

 アルコールの急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)は、断酒を始めて3~6ヵ月で自覚するようになると言われています。その症状の一つ “思考プロセス障害” には、脳の働きにムラがある、頑なで諄(くど)い思考、因果関係を理解できないなどの症状が知られています。

 今年5月20日付の記事「アルコールPAWSの一つ “思考プロセス障害” の軛(くびき)」では、傷害から脳内で繰り広げられる様々な葛藤と混乱について述べてみました。今回もその具体的な現れと思われる悪文事例をご紹介します。いずれも集中力に欠け、脳がストライキを起す寸前の状態で書いたものと思われます。

 なお、現在掲載中のものはいずれも手直しした後の改訂版です。
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【事例34】
「断酒を始めて3ヵ月以内の患者を対象とした、専門クリニックの初心者教育プログラムの一コマに、アンケート形式の教材を使った講義がありました。アンケートには、ドライドランク(≒急性離脱後症候群:PAWS)に陥った際に想定される心境が、質問項目として30問ほど書かれてあり、現在の心境がそれに “当てはまる” か否かを訊ねるものです。」
         
「専門クリニックの初心者教育プログラムの一コマに、近々起こりうるドライドランク(≒急性離脱後症候群:PAWS)に備えての講義がありました。断酒を始めて3ヵ月以内の患者を対象とし、アンケート形式の教材を使ったものでした。アンケート用紙には、質問項目としてドライドランクに陥った際に想定される心境が30問程度書かれてあり、それらに当てはまる心境の有無を尋ねていました。」
         「身体的底着きの後から精神的底着きも(上)」(2015.10.09投稿)より

 最初の事例は、段落の出だしの一文です。段落の出だしの文は、“見出し” と同様に段落全体を概括する役割を担ってもよい場合があります。ここでは初心者教育プログラムが何をテーマとしたものか、具体的内容が分かるようにズバリ切り込む記述にした方がよさそうです。単に事実を淡々と記述するにとどまり、切り込み不足に気づけないほど意識が散漫だったようです。

 疲れてくると、時制に迷うことがよくあります。事柄同士の因果関係は時制表現に直接反映されます。下線部の時制は過去形の方が適切でシックリきます。


【事例35】
「家族の中で依然として残る疎外感と、『断酒を続けなければならない。再飲酒してはならない』という強迫感、さらには『“恋心” など、絶対に医療スタッフに抱いてはならない!』と自制を強いたことも加わって、強いストレスから性的強迫観念(妄想)が湧き出したのだと思います。性欲を煽るような、・・・雁字搦めの状態に追い込まれ、“憑きモノ” に囚われたという表現がピッタリの状態でした。視野が狭まり、自由闊達な発想や、角度を変えたモノの見方など出来ない状態でした。自分でもよくは分かりませんが、相当な危機と感じていたのでしょう。」
         
「家族の中にいても依然として残る疎外感、『断酒を続けなければならない。再飲酒してはいけない』という強迫感、さらに『医療スタッフに “恋心” など絶対に抱いてはならない』という強い自制も加わり、これらが強いストレスとなって性的妄想を掻き立てたのだと思います。性欲を煽るような、得体の知れない、モヤモヤしたものに雁字搦めにされた状態で、俗に言う “憑きモノ” に囚われたという表現がピッタリの精神状態でした。自分ではあまり意識していなかったのですが、断酒の継続によほど危機感を持っていたのだと思います。」
         「身体的底着きの後から精神的底着きも(下)」(2015.10.16投稿)より

 最初の一文では主語に捩じれが見られます。前半の下線部3つが主語であるべきところですが、後半で主語が性的強迫観念(妄想)に置き換わって捩じれています。

 最後の一文の下線部、「自分でもよくは分かりません」は時制が問題です。書いている時点で理解不能だとも読め、意図が不明で意味も曖昧です。補足すべき言葉を補い、不要と思える文を削って整理してみました。


【事例36】
「長年溜まりに溜まったモヤモヤしたものが弾けて消え、平穏な状態が訪れて、心が落ち着いて来たことが分かったのです。・・・継続断酒を始めて満10ヵ月後のことでした。

 AV動画の叙述以前に私が実践していたことと言えば、・・・」

         
「長年溜まりに溜まったモヤモヤしたものが消えてなくなり、平穏な心理状態になれました。・・・継続断酒を始めて10ヵ月後のことでした。

 この出来事があってからというもの、アルコール依存症の回復は一体何が目安となるのか、回復するまで他にどんな離脱症状を覚悟しておくべきかに関心が向くようになりました。一時は、早くも回復したのかと錯覚したほどだったのです。断酒に囚われてばかりの状態から明らかに闘病意識が変化し始めていました。医師の診察を受ける都度、手を変え品を変え何を目安に回復と診断するのか質問攻めにしたものです。意識の変化と一体のものかもしれませんが、この体験が転機となって、まるで傍から自分自身を客観的に見ているかのように、気持ち(感情)の変化がリアルタイムで自覚できるようになりました。たったこれだけのことで結果的に感情を自制できてしまうのが不思議です。ドライドランクを初めとした急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)をはっきり自覚するようになったのはこの時期からでした。“正気に戻る” とはこんなことかもしれません。

 AV動画の内容を文章化する以前から私が実践していたことを挙げておきます。・・・」

         「身体的底着きの後から精神的底着きも(下)」(2015.10.16投稿)より

 この事例は“憑きモノが落ちた” 体験と、なぜそうなったのかの考察に続く部分です。当時の心境を振り返ってみると、下線部 “心が落ち着いて来た” は調子に乗り過ぎての言い過ぎとなっています。

 さらに問題なのは、その体験後どのような心境の変化が訪れたかについての記述が下線部だけであり、具体的な内容がスッポリ抜け落ちていることです。これだけの重大な出来事があったのですから、その後の心境の変化についてもっと掘下げて述べるべきです。私の関心は明らかに “言語化” の方に移ってしまい、他への注意力が散漫になっていました。普通なら執筆時に違和感を持つべきなのですが、こういうポカがあっても気づけないところが思考プロセス障害なのかもしれません。“脳の働きにムラがある” とされている具体例ではないかと思います。以上から、下記の下線部の段落を追記しました。


【事例37】
「・・・言い換えると、ドライドランクへと急速に移行中(?)だったとも言えます。ドライドランクのため柄にもなく恋心を抱いてしまい、それはならじと自制を強いるストレスを強く受けて、脳内環境のバランスの揺らぎが増幅され、ついには性的強迫観念(妄想)にまで至ったのだと思います。」
         
「・・・言い換えると、ドライドランクへと急速に移行中(?)だったとも言えます。ドライドランクのせいで柄にもなく恋心を抱いてしまい、それはならじと自制を強いたことが却って強いストレスになったものと思われます。そのストレスで脳内環境のバランスの揺らぎが増幅され、ついには性的妄想に至ったのだと思います。」
         「身体的底着きの後から精神的底着きも(下)」(2015.10.16投稿)より

 下線部では、ストレスが自制を強いると読めます。真意は逆で、自制を強いたことがストレスとなったという趣旨ですから、因果関係の認識が混乱しています。記事の後半部分の記述ですから、恐らく脳が疲れ始めてストライキを起こしたのだと思います。疲れて来ると、適切な表現とは程遠いこんなミスにも気づかず平気で見落とすことがあります。“脳の働きにムラがある” ということは、やはり因果関係の認識が混乱することに関係するのだと思います。
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 今回も遅発性の離脱症状・PAWSの思考プロセス障害が原因と思われる悪文例をお示ししました。想起障害がその原因の大元と考えています。文章の不具合など黙って直して置けばいいものを、とお思いの方もおられると思います。大分マシにはなったものの、実際にご覧いただいたように遅発性の離脱症状・PAWSによる障害はまだまだ残っているようです。それでも文章の不具合に違和感を持ち、ある程度適切に手直しできるまで回復していると考えています。ネタ切れをいいことに、それを読者の皆さんに共有してもらおうと敢えて掲載しました。悪しからずご了承ください。

アルコールPAWSの一つ “思考プロセス障害” の軛(くびき)」も是非ご参照ください。
以下をご参考までに添えておきます。
急性離脱後症候群(PAWS)】
 症状は、断酒開始後3~6ヵ月目で最も強くなり、6ヵ月~2年で回復する。
  ○ 思考プロセス障害(脳の働きにムラがある;頑なで諄(くど)い思考、
    因果関係を理解できない)
  ○ 情動障害(情動の揺れ)
  ○ 記憶障害(短期記憶の障害)
  ○ 睡眠障害
  ○ 身体的協働性に問題
  ○ ストレス感受性に変化
                  (アルコール依存症専門クリニック教育資料より)



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