2011年5月1日-2
環境主義、深い生態思想 ディープ・エコロジー、生態系保全
Mario Bunge氏は、環境保護運動については、どういう見解なのであろうか?
「環境主義 environmentalismは、間違って「エコロジスム ecologism〔生態主義〕」とも呼ばれるが、もちろん、環境を保護することを求める運動である。それは、原則として、健全な理論的および経験的な生態学にもとづく。残念ながら、生態学は、環境主義のための科学的基礎を提供するほど十分には進んでいない。その結果、この運動は、様々な分派へと分かれている。種を保護する仲間は(そのうちの一つが考案したのは『マダラフクロウを救え』である)、単一の絶滅危惧種を保護することを求めるが、通常かわいらしい哺乳動物〔獣〕か綺麗な鳥である。単一種を愛顧することは、一つの不均衡を正すかもしれないが、それは数個の新しい不均衡を引き起こすことによってであるかもしれないことを、彼らは理解しない。一つの種に焦点を合わせることは、全体の網組織〔ネットワーク〕 networkが依存している、要石種[かなめいししゅ] keystone species(たとえばウニ〔雲丹〕)の場合にのみ、実用的である。
急進的または『深い生態思想〔ディープ・エコロジー〕 deep ecology』についてであるが、それは、すべての種に等しい価値がある(だれにとって?)とみなし、人類が絶滅してでも、生態圏 ecosphereを救おうと望む。この急進的な運動について言えるせめてものこととは、それが不人気だということである。生態系保全という諸方策だけが、理にかなっていると思われる。それはしかし、人々に席を設けるならばである。ただし、人々への席は多すぎずに。というのは、われわれ人間は、最悪の捕食者であり、生態破壊者 ecocide だからである。」(Bunge, 2008: 165。試訳20110501)。
[B]
Bunge, M. 2008. Political Philosophy: Fact, Fiction, and Vision. x+439pp. Transaction Publishers.
環境主義、深い生態思想 ディープ・エコロジー、生態系保全
Mario Bunge氏は、環境保護運動については、どういう見解なのであろうか?
「環境主義 environmentalismは、間違って「エコロジスム ecologism〔生態主義〕」とも呼ばれるが、もちろん、環境を保護することを求める運動である。それは、原則として、健全な理論的および経験的な生態学にもとづく。残念ながら、生態学は、環境主義のための科学的基礎を提供するほど十分には進んでいない。その結果、この運動は、様々な分派へと分かれている。種を保護する仲間は(そのうちの一つが考案したのは『マダラフクロウを救え』である)、単一の絶滅危惧種を保護することを求めるが、通常かわいらしい哺乳動物〔獣〕か綺麗な鳥である。単一種を愛顧することは、一つの不均衡を正すかもしれないが、それは数個の新しい不均衡を引き起こすことによってであるかもしれないことを、彼らは理解しない。一つの種に焦点を合わせることは、全体の網組織〔ネットワーク〕 networkが依存している、要石種[かなめいししゅ] keystone species(たとえばウニ〔雲丹〕)の場合にのみ、実用的である。
急進的または『深い生態思想〔ディープ・エコロジー〕 deep ecology』についてであるが、それは、すべての種に等しい価値がある(だれにとって?)とみなし、人類が絶滅してでも、生態圏 ecosphereを救おうと望む。この急進的な運動について言えるせめてものこととは、それが不人気だということである。生態系保全という諸方策だけが、理にかなっていると思われる。それはしかし、人々に席を設けるならばである。ただし、人々への席は多すぎずに。というのは、われわれ人間は、最悪の捕食者であり、生態破壊者 ecocide だからである。」(Bunge, 2008: 165。試訳20110501)。
[B]
Bunge, M. 2008. Political Philosophy: Fact, Fiction, and Vision. x+439pp. Transaction Publishers.