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《生命/生物、生活》を、システム的かつ体系的に、分析し総合し統合する。射程域:哲学、美術音楽詩、政治経済社会、秘教

福島原発事故118:原発差し止め判決を出した井戸謙一氏の言葉

2011年05月04日 23時26分43秒 | 生命生物生活哲学
2011年5月4日-12
福島原発事故118:原発差し止め判決を出した井戸謙一氏の言葉

  「石川県にある志賀原発の2号機について、「電力会社の想定を超えた地震によって原発事故が起こり、住民が被ばくする可能性がある」として運転差し止めを命じた」

と、原発訴訟では、唯一の運転差し止め判決を出した、元金沢地裁裁判長の井戸謙一氏への会見談「唯一の原発差し止め判決の裏側」が、TBSの下記に掲載されている。

http://news.tbs.co.jp/20110427/newseye/tbs_newseye4711647.html

 その判決文には、

  「可能性として、外部電源の喪失。非常用電源の喪失。さまざまな故障が同時に。多重防護が有効に機能するとは考えられない」

といったことが、書いてあるらしい。
 検索すると、志賀2号運転差止裁判金沢地裁判決骨子が、原子力情報資料室の下記頁

http://cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=339

に出ていた。抜粋すると、判決主文「被告〔=北陸電力株式会社〕は、志賀原発2号機を運転してはならない」の理由の3は、

  「被告による志賀原発2号機の耐震設計には、i 直下地震の想定が小規模に過ぎる、ii 考慮すべき邑知潟断層帯による地震を考慮していない、iii 原発敷地での地震動を想定する手法である「大崎の方法」に妥当性がない等の問題点があるから、被告の想定を超えた地震動によって本件原発に事故が起こり、原告らが上記被ばくをする具体的可能性があることが認められる。これに対する被告の反証は成功しなかったから、上記の具体的危険があると推認すべきである。」
http://cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=339

 
 地震・耐震設計の不備についての(6)と(8)は、

  「(6)原告らは、地震によって周辺住民が許容限度を超える放射線を被ばくする具体的可能性があることを相当程度立証した。これに対する被告の反証は成功していないから、地震によって周辺住民が許容限度を超える放射線を被ばくする具体的危険があることを推認すべきである。」
http://cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=339

  「(8)原子力発電所で重大事故が発生した場合、その影響は極めて広範囲に及ぶ可能性がある。そして、本件原子炉において地震が原因で最悪の事故が生じたと想定した場合は、原告らのうち最も遠方の熊本県に居住する者についても、許容限度である年間1ミリシーベルトをはるかに超える被ばくの恐れがあるから、全ての原告らにおいて、上記具体的危険が認められる。」
http://cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=339

 
 会見談では、
 
  「Q.判決を出すまでに一番大事にした軸は?
   「生命、身体、生活環境に大変な影響、万が一、原発事故が起こると。一方で電気の供給など公共的な面もある。そのバランスの中で、どこまで司法が関われるか、慎重に考えたいと思った」

  「Q.裁判所自体も、ある種安全神話に乗っかっていた点はある?
   「結果として、司法はほとんどが今までの原子力行政、あるいは電力会社の仕事を追認してきたわけで、そこでいろいろな警告を発していれば、こういう事態はなかったかもしれない。最後の砦であるという自覚をより深刻に持って仕事することが、これからの裁判官に求められるのではないか」(原発の差し止め判決を出した 井戸謙一元裁判長)」
http://news.tbs.co.jp/20110427/newseye/tbs_newseye4711647.html

 蛮勇など振るわず、生命を大切にし、より安心な生活環境を求めよう。自分でできることをやり、仲間と協同し、また、政府や自治体に対して声を挙げよう。


福島原発事故117:原発推進論と核事故と地球温暖化脅威論

2011年05月04日 14時45分46秒 | 生命生物生活哲学
2011年5月4日-2
福島原発事故117:原発推進論と核事故と地球温暖化脅威論

 柴田鉄治(2000.3)『科学事件』(岩波新書)の第4章は、「原子力」と題されている。
 その91頁に、朝日新聞社の調査結果にもとづいた「原発推進に対する世論の推移」の図がある。数値を表にすると、

               原発推進に
  調査時        賛成(%)  反対(%)
  1978年12月      55     23
 [1979年3月28日 スリーマイル島事故]
  1979年06月      50     29
  1979年12月      62     21
  1980年12月      56     25
  1981年12月      55     29
  1984年12月      47     32
 [1986年4月26日 チェルノブイリ事故]
  1986年08月      34     41
  1988年09月      29     46
  1990年09月      27     53 〔←注目〕
  1996年02月      38     44 〔←注目〕
 [1999年9月30日 東海村JCO臨界事故]
  1999年10月      35     42

 東海村JCO臨界事故についての、
  「マス・メディアの大々的な報道にも関わらず、〔略〕事故から一週間が過ぎた一〇月八、九日の両日、朝日新聞社がおこなった世論調査によると、「このような事故がおきると思っていた」人が四三%もあり、「日本の原子力発電は、今後、どうしたらよいと思うか」という問いに対する答も、事故前に思っていた比率と事故後に思った比率がほとんど変わらなかったのである。」(柴田 2000: 89頁)。
 その数字は、JCO臨界事故前と後では、

  原子力発電を       事故前  事故後
  増やすべきだ        10%    8%
  現状程度にとどめるべきだ  50%   50%
  減らすほうがよい      20%   24%
  やめるべきだ        11%   13%

と、標本数や誤差範囲が記されていないが(もっと問題は、どういう訊き方をしたかであるが)、「減らすほうがよい」が4%増えた程度で、あまり変化が無いと言える。
 1986年のチェルノブイリ事故前後で、原発推進についての賛否が逆転したが、柴田『科学事件』は、

  「九〇年代に入ると、また揺れ戻しというか賛否の差はふたたび接近して、伯仲に近い状況となっている。その理由は、原子力発電の実績の積み重ねと地球環境問題の影響だろうと思われる。」(柴田 2000: 91頁)。

と、書いている。「地球環境問題の影響だろう」というところに注目しよう。
 なお、チェルノブイリ事故について、

  「ソ連の秘密主義は、同国内でも深刻な事態を招いた。事故をなるべく軽くみせたいという原発関係者の心理と、それに「パニック」をおこしてはいけない」というもっともらしい理由をつけて、地元住民に正確な情報をまったく知らせなかった。」(柴田 2000: 92頁)。

 父権主義(パターナリズム)という考え方が隠れ蓑になっているかもしれない。

 原子力開発の初期に大きな役割を果たした読売新聞社主の正力松太郎氏と朝日新聞論説委員の田中慎次郎氏のことの記述が101-102頁にある。
 それはさておき、

  「原子力開発に反対の声が出てくるのは、七〇年代に入って公害・環境問題が浮上してきてからなのだ。〔略〕
   安全論議は別として原子力技術に本質的な疑問が提起されたのは、環境問題のひとつとして放射性廃棄物をどうするのか、という問題からだった。」(柴田 2000: 103頁)。

 原発反対派は、「トイレなきマンション」という標語を叫んだわけである。
 
 さて、原発と地球温暖化対策との関わりである。

  「地球環境問題との関係は、主として地球温暖化とのかかわりである。〔略〕
   原発は、〔略〕とても「環境にやさしい」とは言いがたいのだが、この宣伝が予想外の効果をもたらした理由は、「問題があるのは原発だけではない。どのエネルギーにも問題はあるのだ」という相対的な見方が広がったためだろう。」(柴田 2000: 109頁)。

 「相対的な見方」と、この後の記述に出てくる「イエス・バット」の中身を分析することは興味深いが、それらもさておき、日本の国民世論についての柴田氏の大胆な予測は、

  「チェルノブイリのような事故が世界のどこかでもう一度おこれば、間違いなく「反対」のほうへ振れるだろう。逆に、石油危機のようなエネルギー危機がもう一度おこれば、ふたたび賛否は逆転して「賛成」のほうへ振れるのではなかろうか。」(柴田 2000: 109頁)。

である。
 ウランも石油と同様に有限であり、石油に依存するし、非常用電源は東北電力による外部供給に依存しており、今回の(津波ではなく)地震によって鉄塔が倒れたのである(「地震によって」ということを、日本共産党の吉井英勝衆院議員の質問への国会答弁で、東京電力は認めたようである[要連結 link]。なお、吉井英勝『原発抜き・地域再生の温暖化対策へ』の第4章は、「環境・安全優先を基本とする自立したエネルギーへ??温暖化対策、地域経済再生に向けて (1)原発からの段階的撤退、(2)地球温暖化対策には原発ではなく再生可能エネルギー」となっている)。

金森修.原子力の文化政治学 原発の黄昏.井山弘幸・金森修『現代科学論』:227-234.

など(要、列挙)も、さておき、先を急ぐ。

 池田清彦氏は、1990年に、

  「日本の政府-企業共通の文化一元論的な共約事項は、カネもうけ第一主義だからです。日本の行政と企業には、もうけるためには、ウソ、ペテン、ゴマカシ、環境破壊などは知ったことではないという黙契があるのです。」(池田 1998: 260頁)。

と本質的なことを述べている。
 なお、
http://pub.ne.jp/1trinity7/?entry_id=3620986
も見よ。(池田 1998に、地球温暖化(脅威論)と原発とについて述べた箇所があったと思うが、見つからない。)
 

  「森林にしても、原発問題にしても定常システムは全くありません。〔略〕
   (一昔前までは地球は寒冷になるといい、今は温暖になるという。どちらもマユツバだと思ったほうがよい)。〔略〕
   定常システムとして無害化することのできない現象を産み出す科学技術の使用を禁止する方向で、検討をはじめなければならないでしょう。」(池田 1998: 272-273頁)。

 森林伐採をやめれば、二酸化炭素吸収その他の機能がその分保持されるだろう。
 原発をすべて廃棄することが急務である。災害は忘れる前にやってくるかもしれない。明白となった目の前の危機に対処することである。
 エネルギーをより少なく使って生活し、同時にきたるべき(池田氏の言い方では自己循環的な定常システムであるような=不可避的な環境破壊をしない?)エネルギー供給装置を作ることである。

 さしあたっては、(放射能が生じないかもしれない)冷温核融合の原理による発電装置の設計と製作に労力を投入するのが一案であろう。

 そこで、おおかたの人は冷温核融合(冷融合 cold fusion、低温核融合、常温核融合)は嘘だった(要、文献)ことになったと思っているのではないかと思うが、科学 science、非科学 nonscience、「擬似」科学 'pseudo'scienceとの関係、たとえば科学の境界設定問題、あるいは線引き問題をときには絡めつつ、この事例を考えることにする。
 
 手がかりとして、デリー『科学とその働き:科学社会論の問い』で、低温核融合(と超心理学)を事例として取り上げている、「第13章 議論を呼び起こす問題?科学の影の領域?」(193-208頁)を検討しよう。

 
[D]
デリ-,グレゴリ-・N. 1999.(橋本敬造訳,2009.5)科学とその働き:科学社会論の問い.x+349pp.大学教育出版.[B20090620, y2,940]

[I]
池田清彦.1990.4.構造主義科学論の冒険.247pp.毎日新聞社.[y1,300]
池田清彦.1998.6.構造主義科学論の冒険.286pp.講談社[学術文庫1332].[B19991206, y600*]

井山弘幸・金森修.2000.11.現代科学論.272pp.新曜社.[B001204, y2,200]

[K]
金森修.2000.11.原子力の文化政治学 原発の黄昏.井山弘幸・金森修『現代科学論』:227-234.

[S]
柴田鉄治.2000.3.科学事件.ix+194pp.岩波書店.[B000529, y660]

[Y]
吉井英勝.2010.10.原発抜き・地域再生の温暖化対策へ.222pp.新日本出版社.

吉岡斉.2011.2.原発と日本の未来:原子力は温暖化対策の切り札か.63pp.岩波書店[ブックレット802].[OCL]



福島原発事故116:3号機の爆発は核爆発だという分析

2011年05月04日 00時17分40秒 | 生命生物生活哲学
2011年5月4日-1
福島原発事故116:3号機の爆発は核爆発だという分析

 「「3号機の爆発は核爆発」:クリス・バスビー教授インタビュー和訳、米国のエンジニアも核爆発説を支持」というブログがある。
http://onihutari.blog60.fc2.com/blog-entry-45.html

 それによれば、クリス・バスビー(Christopher Busby)氏とアーノルド・ガンダーセン(Arnold Gundersen)氏は、3号機での爆発は核爆発だと分析している。
 リンクされている、YouTubeの「ガンダーセン(Arnie Gundersen)博士 3号機は核爆発だった」(8:06)
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=_1DjDc6FnhM
または、同じ内容の

 「福島第一原発3号機の爆発についての解説 4月26日」(8:16)という題の動画が、
http://www.youtube.com/watch?v=P4KXX24Dv1U
は、わかりやすい。

 アーノルド・ガンダーセン氏(Arnold Gundersen)は、二種類の爆発があり、

  1号機 defragration  音速で伝わる
  3号機 detonation   超音速で伝わる

としている。この仮説はテストできるとしている。

 ウィキペディアから抜き出す。
 _______________________________________
  福島第一原発1号機 2011年3月12日15時36分、建屋で水素爆発。
 _______________________________________
 福島第一原発3号機 2011年3月13日、海水注入後も水位が上がらず。

     2011年3月14日11時1分、3号機の建屋が爆発し、大量の煙が上がった。この煙は灰褐色で、1号機のものと比べるとより高くまで上がり、炎が上がる様子も見られた。

     2011年3月21日15時55分 - 18時頃、3号機の使用済み核燃料の貯蔵プールの上部とみられる場所から黒煙が上がる。
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http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E7%AC%AC%E4%B8%80%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%AE%E7%B5%8C%E7%B7%AF

 確かに、1号機と3号機では、爆発時の様子が違う。黒っぽい煙は、いかにして生じたのか。
 なお、3号機はMOX燃料を使うプルサーマル発電で、では、プルトニウムの割合はいくらなのか。御用学者?はテレビで5%くらいとか(それでたいしたことはないみたいなことを)言っていたような記憶がある。